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第一章 4月
お姉さまが欲しかったもの ★3★
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「でも、元陸上部部長の緋村楓さんって、常葉学園の大学部にはいないんでしょう?」
「誰か他に会いたい人がいるとか」
考えられる可能性を上げると、幸ははっとしたように言った。
「まさか、柚鈴ちゃんのお姉さん?」
え?
あ、そういや、大学部には志奈さんがいるんだった。
そこまで考えていなかった。幸に言われて、その可能性があり得るのか考えてみる。
それからプルプルと首を横に振った。
「緋村楓さんは、生徒会と因縁があるって言ってたし、志奈さんじゃないんじゃないかな」
では誰なのか、と問われても答えることは出来ないのだけど。
幸と顔を見合わせて2人で困惑している間に、電車はとうとう常葉学園の近くの駅に到着する。
二人の様子を見ていると、やはり電車を降りていく。それを確認してから慌てて、だが気付かれないように電車を降りた。
常葉学園は最寄りの駅から徒歩5分程の所にある。
柚鈴も実際大学の前まで行くのは初めてだ。
外装は高等部と似ているが、門は高等部よりも高く作られていて、敷居の高さを感じてしまう。
遥先輩は薫を連れて、迷うことなく制服のまま進んでいく。
「だ、大丈夫かな?制服のままで」
「遥先輩も進んで行ったし大丈夫じゃないかな?」
二人とも戸惑いながら、校門までは勢いで入ったものの、やっぱり立ち止まってしまう。
同じ常葉学園とは言え、迷いなく進んで行くには躊躇いがあった。
だが、そのうち先を進んでいく二人の姿が消えてしまう。仕方なく進むことにした。
慌てて追ったものの消えた二人の姿を発見することは出来ず、それ以上の道がわからなくなってしまった。
「どうしよう」
どこへ向かえば良いのか、全く見当が付かずきょろきょろと見回していると、幸が唸ってから提案してくる。
「柚鈴ちゃん、志奈さんに連絡してみるというのはどうだろう」
「え?」
「行き先の心当たりくらいは聞けるかも知れないよ」
いや、心当たりなんてないでしょう?
こんなことで頼れるほどの間柄でもないし。
あ、いや。志奈さんは確かに喜びそうだけど。
戸惑いつつ中々うんと言えない柚鈴の気持ちは幸には説明のしようもなかった。
自分でもよく分からないけど、お願いなんて出来ないと思ってしまうのだ。
それでも促されて一応は携帯を取り出したものの、そのまま固まってしまう。
こんな勢いで電話してしまっていいのだろうか?迷惑だと思われないだろうか。
そもそも、なんて言って電話したものか、さっぱり分からない。
電話番号を検索せずに悩んでいると。
「なあに?柚鈴ちゃん、どこに電話するの?もし私にだったら電話しなくても話せるわよ」
「ふぇ!?」
すぐ後ろからご機嫌な声が響く。のびやかで柔らかい優しく聞こえる声。
突然のことに驚いて振り向くと、そこには我が義理の姉の志奈さんがにっこりと笑っていた。
「こ、こんな所で何してるんですか?」
「あら柚鈴ちゃん。この状況だったらそれは私のセリフじゃないかしら?」
聞き返されて確かにと思う。
ここは志奈さんの通っている大学なのだから、志奈さんがいるのはごく自然な話だ。
しかし、タイミングが良すぎないだろうか?
「誰か他に会いたい人がいるとか」
考えられる可能性を上げると、幸ははっとしたように言った。
「まさか、柚鈴ちゃんのお姉さん?」
え?
あ、そういや、大学部には志奈さんがいるんだった。
そこまで考えていなかった。幸に言われて、その可能性があり得るのか考えてみる。
それからプルプルと首を横に振った。
「緋村楓さんは、生徒会と因縁があるって言ってたし、志奈さんじゃないんじゃないかな」
では誰なのか、と問われても答えることは出来ないのだけど。
幸と顔を見合わせて2人で困惑している間に、電車はとうとう常葉学園の近くの駅に到着する。
二人の様子を見ていると、やはり電車を降りていく。それを確認してから慌てて、だが気付かれないように電車を降りた。
常葉学園は最寄りの駅から徒歩5分程の所にある。
柚鈴も実際大学の前まで行くのは初めてだ。
外装は高等部と似ているが、門は高等部よりも高く作られていて、敷居の高さを感じてしまう。
遥先輩は薫を連れて、迷うことなく制服のまま進んでいく。
「だ、大丈夫かな?制服のままで」
「遥先輩も進んで行ったし大丈夫じゃないかな?」
二人とも戸惑いながら、校門までは勢いで入ったものの、やっぱり立ち止まってしまう。
同じ常葉学園とは言え、迷いなく進んで行くには躊躇いがあった。
だが、そのうち先を進んでいく二人の姿が消えてしまう。仕方なく進むことにした。
慌てて追ったものの消えた二人の姿を発見することは出来ず、それ以上の道がわからなくなってしまった。
「どうしよう」
どこへ向かえば良いのか、全く見当が付かずきょろきょろと見回していると、幸が唸ってから提案してくる。
「柚鈴ちゃん、志奈さんに連絡してみるというのはどうだろう」
「え?」
「行き先の心当たりくらいは聞けるかも知れないよ」
いや、心当たりなんてないでしょう?
こんなことで頼れるほどの間柄でもないし。
あ、いや。志奈さんは確かに喜びそうだけど。
戸惑いつつ中々うんと言えない柚鈴の気持ちは幸には説明のしようもなかった。
自分でもよく分からないけど、お願いなんて出来ないと思ってしまうのだ。
それでも促されて一応は携帯を取り出したものの、そのまま固まってしまう。
こんな勢いで電話してしまっていいのだろうか?迷惑だと思われないだろうか。
そもそも、なんて言って電話したものか、さっぱり分からない。
電話番号を検索せずに悩んでいると。
「なあに?柚鈴ちゃん、どこに電話するの?もし私にだったら電話しなくても話せるわよ」
「ふぇ!?」
すぐ後ろからご機嫌な声が響く。のびやかで柔らかい優しく聞こえる声。
突然のことに驚いて振り向くと、そこには我が義理の姉の志奈さんがにっこりと笑っていた。
「こ、こんな所で何してるんですか?」
「あら柚鈴ちゃん。この状況だったらそれは私のセリフじゃないかしら?」
聞き返されて確かにと思う。
ここは志奈さんの通っている大学なのだから、志奈さんがいるのはごく自然な話だ。
しかし、タイミングが良すぎないだろうか?
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