散華へのモラトリアム

一華

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第二章

その月から賜る願いと褒美 6

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確信しながら、瑞華は疑わし気な眼差しを向けてしまう。
 
「本当にうちの会社の為に、あなたが協力してくれるんですか?」
「もう決まったことだしね」
「鷹羽さんが一年掛けてなし得なかった会社立て直しが、出来るっていうんですね?」
「アンタがやるよか上手くいくんじゃない?」

軽く言われて、悔しい気持ちになる。
そもそも瑞華では、会社立て直しの案すら受け入れてもらえないのだ。
可能性は段違いに風人の方があるだろう。

「私に懸想しているって設定も構わないっていうんですね?」
「いいんじゃない?実際、そういうことにしておけば、話もスムーズでしょ。俺としても兄貴が婚約発表したら、俺を相手としてシフトする輩も多いだろうと面倒に思っていたのは事実だし」
別にあしらえないわけじゃないけど、と軽く笑いながら 

「その方が楽しそうじゃん?腐っても鯛だし」 

と付け足され、カチンと来た。 

言外に、花宮のように旧家の娘が相手であれば落ちぶれてても無視は出来ない。 
そのことで慌て悔しがる家々と――また、その対応をする、瑞華が面白い、と言われてる気がした。 

考えすぎかもしれないが、おおよそは合っているはずだ。
視線に殺気が籠るのを感じながら、ぐっと手を握りしめた。 

「そうですか、風人さん。じゃあ明日までに両親には話をつけますので、都合の良い時を教えて下さい。早速会社にご案内します」 

言い放てば、にこりと流す様に笑われた。 

「デートの誘いなら、もっと可愛くおねだりして欲しいもんだけど」 
と携帯を差し出される。 

「誰が、デートなんか・・・!なんですか?その携帯」 

聞けば、わざとらしくため息をつかれる。 

「だからさ、話を理解してる?俺らが演じる関係なら、携帯番号とアドレスぐらい知り合っとかなきゃ変でしょ。 
どんだけウブなの?それとも演じてるの?ほら貸してやるから、さっさと入力して」 

くっ・・・! 
言い方が、言い方が・・・!! 


むき、となりながら携帯を奪い取り、怒りに震える指で番号とアドレスを打ち込み始めた。 
そうして、馴れない他人の携帯を必死に扱ってる最中に 


間違いなく、トドメの一言が来た。 


「ところで、今日大学休んでたみたいけど、二日酔い? というかそれが口実で、俺に会いたくなかったんでしょ?」 

ニッコリと、満面の笑みに、指が止まり、顔が引きった。 


九条風人…!

本当に、本当に本当に、憎らしい…!!
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