後宮にて、あなたを想う

じじ

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157 悲しい朝

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夜中に何度も悪夢を見ては起きるということを繰り返したせいで、まともに寝られないまま黄怜は翌朝を迎えた。それでも一晩経ったことで幾分気持ちが落ち着いている。
昨夜、半ばやつあたりのように奏輝に話した内容を思い出すと自分の身勝手さに居た堪れなくなる。せめてしっかり謝ろうと思った瞬間、奏輝が入ってきた。

「おはようございます、黄怜様。お加減いかがでしょうか」
「ありがとう。だいぶ落ち着いたわ…昨日はごめんなさい」

殊勝な様子で頭を下げる黄怜に奏輝は気遣うように微かな笑みを浮かべた。

「私のことは気になさらないで下さい。黄怜様のお心が少しでも軽くなっておられるとよろしいのですが…」
「昨日は…どうかしていたわ」
「無理もございません。それだけのことが合ったのですから」
「…」

奏輝の言葉に悲しげな笑みを浮かべた黄怜の気持ちを切り替えるように、奏輝は話題を変えた。

「そうでした。後ほど陛下がこちらにいらっしゃるそうです」

瞬間曇った表情を見せた黄怜に奏輝は伺うように続けた。

「お体の具合が優れないようでしたら、訪をお控えいただくようにお伝えいたしましょうか」
「いいえ。大丈夫よ」
「承知しました。それでは」

せめてゆっく来ていただくようにお伝えします、と奏輝が続けようとするのと、宦官が皇帝の訪を告げるのは同時だった。
部屋の入り口を射殺さんばかりの視線で睨みつける奏輝に、黄怜はようやく心から笑みを浮かべることができた。

「大丈夫よ。ありがとう」

小声でそう奏輝に告げる。

皇帝はいつも通りの様子で黄怜のそばにやってきた。

「具合はどうだ」
「特に不調はございません…昨日も今日も」
「そうか…」
「昨日の私の態度が無礼なものであったのであれば…お詫びいたします。両親の死など取るに足らないこと…そう思っておりましたが、予想に反して色々と考えさせられてしまいました」
「そう…だろうな。あなたは優しいから」

皇帝が穏やかな口調で同意すると黄怜は小さく首を横に振った。

「私は優しくなどございません。今も憎悪の気持ちに押しつぶされそうなのです」

苦しげに答えた黄怜に皇帝は一度目を閉じると決意したように黄怜に告げた。

「私を恨むのは当然だ。あなたの両親の命を利用して蔡家を不当に貶めた…だがそのおかげで助かったのも事実だ。あなたの英断には心から感謝する」

そこで一度言葉を切ると、若干のためらいを見せたあと、苦しげに口を開いた。

「このようなこと言える立場ではないが…私から望んであなたを手放すことなど到底できない。
だが、あなたが両親を奪った私とともにあるのが辛いのであれば…あなたが生きやすい道を選ばせてやることはできる」


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