後宮にて、あなたを想う

じじ

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132 嗚咽

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「どのような意味だ」

片眉をあげて不審そうに尋ねた皇帝に、州芳は淡々と答える。

「前皇后様と御子様がお亡くなりになられた際に私は死を覚悟しました。誓ってお二方には誠心誠意お尽くしいたしましたが、お命を救えなかった事実には違いございません。申し開きをするまでもなく処刑されたとしても仕方ないと思いました。しかし陛下は冷静に前皇后様と御子様が亡くなられた時の様子をお聞きになられました。」
「そうだったな」
「私達を責めることは何も仰らずに…私たちの言葉が信頼に足ると思ってくださったように感じました。」
「…」
「ずっとお聞きしたかったのですが、なぜそこまで信頼して下さったのでしょうか」
「そなたが感じた通り、二人のことを信頼していたからだ。もともと侍医とは付き合いが深い。彼はもし自身に落ち度があれば、例え首を斬られようともありのままを伝えただろう。職務に忠実な彼が信を置くそなたも同様に信頼できる人間だと思った。それに…後宮を訪れた時によく柳栄がそなたのことを話していたのだ。」
「…」
「侍医女官が頼りになるから助かっている、と。柳栄はしっかりした女人だったが、初めて子を身籠るのはやはり不安が大きかったようだ。そなたが甲斐甲斐しく世話をしてくれるのをとても頼もしく思っていた。州芳がお産の時も付いてくれているから安心して陛下は執務にお励みください、と笑顔で言っていた。」
「…っ」

堪えきれなくなった州芳が下を向いた。ぽたぽたと涙が床を濡らすのに気づいた黄怜はそっと近づくと州芳の肩を抱き寄せた。

「大丈夫かしら?」

嗚咽混じりに頷く州芳の肩をしばらく抱いたままの黄怜が皇帝を見上げると、彼は傷ましさすら感じさせる視線で州芳を見つめていた。
しかしその瞳には同時に強い意志が宿っている。引く気はないことを悟り、黄怜は柔らかな声音で州芳に告げた。

「続きを話せるかしら」
「はい」

そして、皇帝に向き直るとまっすぐ皇帝を見つめたまま、再び話し始めた。

「陛下が私達を信頼してくださっていると分かり…私はそのお気持ちを利用することにしたのです。敬愛する皇后様をお救いできなかったことで計らずとも陛下の私達への評価を知り…実行することにしたのです。陳家のご姉妹への復讐を」
「ああ。」
「陛下は私が思った通り状況だけご確認されると、特にそれ以上のことは仰いませんでした。御子方を殺めた理由は、柳栄様と同じ状況を作るためだけにございます。亡くなられた御子方を前に悲観してご自害されるという筋書きにする必要がありましたから」

先ほどまでと打って変わって淡々と話す州芳に皇帝は尋ねた。

「それは、本当にそなたが一人で考えたことか」




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