後宮にて、あなたを想う

じじ

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118 律佳

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馬車が止まり、弦陽の屋敷に着いたことを知らされる。

「皇后様、到着致しました。」

馬車から降りると、弦陽とその傍らに美しい女人が立って黄怜の訪れを出迎えてくれた。
黄怜は奏輝を伴って二人の前に歩いて行き挨拶する。

「弦陽様、本日はお招き頂きありがとうございます。そちらの美しい方が律佳様でしょうか」
「皇后陛下、ようこそおいでくださいました。ええ、こちらが妻の律佳でございます。」
「お初お目にかかります、皇后陛下。主人から陛下が私にお尋ねになりたいことがあると伺っております。どうぞお入りくださいませ」


二人に案内され、通された客間で一通りの挨拶を終えると弦陽は意外にも早々に席を立ち上がろうとする。

「それでは、皇后陛下。私は一旦失礼させて頂きます。」

てっきり妻につきっきりだろうと予想していた黄怜は不思議そうに弦陽を見つめる。その視線を受けて、照れたように笑いながら弦陽は答えた。

「申し訳ございません。皇帝陛下がお相手とはいえ、別の男性に嫁いでいた時の妻の話はあまり…」

そこまで言われて黄怜は自分の鈍さに気づいた。
自分だって同じ理由で律佳に会うのを躊躇ったのに、弦陽に関しては思いが至らなかったことに恥ずかしさが込み上げてくる。

「あ…申し訳ございません」

項垂れて頭を下げた黄怜に微笑んで答えたのは律佳だった。

「気になさらないでくださいませ。」
「え」
「主人の今の言葉は私のためなのです。彼の前で陛下のことや他の妃方のことなど後宮の話をしにくいだろうと思ってのことです。それに女性だけでしかしたくない話もございます」

暗に出産のことを言われて、黄怜は頷いた。

「お気遣いありがとうございます」
「いえ…申し訳ございません。それでは失礼します」

妻への恋情に隠した気遣いを見抜かれた弦陽は、今度こそ顔を赤らめて退席の言葉を述べた。
夫が部屋を出ていくのを見届けて、律佳はゆっくり口を開いた。

「それで、皇后陛下がお聞きになりたいお話とはいったいどのようなことでしょうか」

いきなりの核心を突く質問に黄怜の方が狼狽する。

「あ、そのことなのですが…」

出産や死産の話をほとんど初対面の女性にいきなりぶつける不躾さを黄怜とて理解していないわけではない。
なんとかあたりさわりのないところから話し始めようとした矢先、律佳が口を開いた。

「陛下から先の妃方の死産の理由を明らかにするように、とでもお願いされましたか?」
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