後宮にて、あなたを想う

じじ

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105 黄貴妃の望み

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「私の願いを叶えて下さるなら、蔡怜様を皇后位に据え置けるよう、私も尽力いたしましょう。」

なにかしらの考えがありそうな物言いに皇帝は先を促した。

「それで、あなたの願いはなんだ」
「一つ目は黄家の真国貴族位からの離脱です」
「なに」

驚いた皇帝は思わず目を剥く。貴族位からの離脱はそのまま、真国からの独立を示す。

「あら、当然のお願いだと思いますが。もとより黄島には真国の属国である旨みがありませんのもの。」
「だが、他国より攻め入られた際に我が国の援助は必要なはずだ」

皇帝が問うと、黄貴妃は不可解な笑みを浮かべた。

「はい。黄島には他国を相手できるほどの軍事力はございません」
「それなら属国として真国に守られている方がよかろう」

ごく当たり前のことを皇帝が言った瞬間、黄貴妃はくっと喉の奥で小さく笑った。

「いいえ。属国である必要はございません。もちろん、独立すればお守りいただけないのは仕方がないことかと思いますが…黄島が他国に占領されて真国に問題がないのでしたら。」
「…っ」
「海より攻め入ってくる国にとって、黄島を手に入れることができれば真国本土へ攻め入るのは随分容易くなりますね。」

他の国が黄島に攻め入ってくれば守らざる得ないだろう、と言う黄貴妃の脅しに、皇帝はさすがに呆れるとともに賞賛せざるを得なかった。

「なるほど、真国側が黄島で敵国を食い止めたいのだから守らざる得ないだろう、と?」

敢えて口に出して尋ねると、当然のように頷く。

「こちらに軍事にかかる金銭的負担を強いるつもりはないだろうな」

嫌な予感がした皇帝が恐る恐る確かめると、黄貴妃はわざとらしく驚いたようなら表情をした。

「まあ!黄島に攻め入ってくる国があれば真国が本当の狙いでしょう。防波堤として場所をお貸しするのに、さらに金銭負担まで黄島に強いるのですか?むしろこちらが迷惑料をいただきたいくらいです」

悠然と言い放った黄貴妃に皇帝は笑うしかなかった。

「分かった。それこそ私の一存では決められぬが…機を見て独立を認めるよう周りに働きかけることにする」
「ふふ。ありがとうございます。」
「それだけか」
「いいえ。」
「なんだ」
「私を黄島の王に据えてください」
「なんだと!」

驚いた皇帝を見て、黄貴妃はにやりと笑った。

「本当は蔡怜様に謎が解けた際のお礼として口添えしていただこうと思っていましたが少々事情が変わってまいりましたので…いかがですか?」
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