後宮にて、あなたを想う

じじ

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84 薬膳茶会の準備

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貴妃と話した翌日、奏輝は薬膳茶会の準備に他の女官達と共に追われていた。

茶会に使用する部屋を、春を感じさせる花や、美しい色あいで染め上げた布などで飾りつけていく。

薬膳茶会は大層な名前がついているが、平たく言ってしまえば、皇后が他の側妃達を一斉に招待する茶会にすぎない。しかし側妃同士の正式な顔合わせの場と言う側面もあるため、趣向を凝らしたものとなることが多い。

蔡怜はだいぶ簡素なかたちで開催することにしたが、それでも桃色や黄色、若竹色など春を感じさせる色に染め上げられた布が天井から幾重にも吊るされ、菜の花や桜などがあちらこちらに置かれている花器から溢れんばかりに活けられている。

「まあ、綺麗ね」

部屋の様子を見にきた蔡怜がつぶやくと、女官達は嬉しそうに微笑んだ。奏輝がすっと側によってきて尋ねた。

「お気に召しましたか」

気に入らないはずがない、と分かっていながら聞いている様子に蔡怜は思わず笑いを禁じ得なかった。

「ええ、とても素敵だわ。みんな本当にありがとう。あとは当日を待つのみね」
「料理もですが、当日お出しする菓子もさまざま用意しております。ご安心ください」

奏輝にそう言われ、蔡怜はにっこり微笑んだ。
自室に戻り、ぼんやりしていると部屋のしつらえを終えた奏輝が戻ってきた。

「蔡怜様。当日はどのような格好をなさいますか」
「そうね。春だし薄桃でお願い。あ、それとね。慣例では皇后と同じ色合いの服装は禁忌だと思うのだけれど、今回に関しては好きな色で皆様に出席して欲しいの」
「それはどういう…」
「あの部屋の様子はきっと女官達を通じて側妃様達の耳に入るわ。そうすればきっと皆様似たような色の服を着たくなると思うの。あの部屋に濃い色は似合わないから。でも上位の妃から順に色を決めてしまえば、位の低い妃は不本意な色で出席せざるを得ないでしょう。今回はそう言うのを無しにしたいの」
「そう言うことですね。承知しました。皆様にお伝えしておきます」
「ありがとう。あなたのお陰でなんとかなりそうだわ」

蔡怜が改めて礼を述べると奏輝は微笑みながら答えた。

「蔡怜様のお役に立てて嬉しいです。当日楽しみでございますね」
「ええ、とても。でも、ほとんど初めてお会いするような方も多いから緊張してしまいそうだわ。」

冗談めかして言うと、奏輝はにこにこしながら言った。

「大丈夫でございますよ。蔡怜様なら自然にされていても。下手に気負わない方がよろしいかと」
「ありがとう」

その晩、蔡怜は珍しくどきどきして、なかなか寝付けなかった。

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