後宮にて、あなたを想う

じじ

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68 侍女の解説

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「蔡怜様は本当に…」
「何かしら」
「いえ…先ほどの質問の答えですが、簡単なことです。水月様は彼をよく見ておられたでしょう。そうすると彼の視線がいつもどこを向いているかなど、火を見るより明らかだったと思いますよ」
「そういうものなのね」
「陛下もおいたわしいですね」

からかい半分で 告げた奏輝だったが、蔡怜の意外な反応に驚いた。

「そうね」
「え。」
「だって、側妃二人が入宮前とはいえ同じ男性を思っていたのだし…それに弦陽様は王宮勤よ」
「まあ。確かにそれはそうなんですけど」

皇帝が蔡怜へ向ける眼差しには、思慕の情が宿っている。しかし、当の本人が全く気づく様子がないことに奏輝は苦笑するしかなかった。

「黄貴妃さま、これはなかなか手強いですよ」

ぼそっと呟いた奏輝を不思議そうに見つめながらも蔡怜は続けた。

「あのね、奏輝。お願いがあるのだけれど」
「はい」
「弦陽様とお会いしたいの。可能かしら」
「おそらくそうおっしゃられると思いました。ですが、側妃様方と異なりその件については私も調整のしようがございません。陛下がご依頼なさっている件に関わる問題ですので、弦陽様とお会いすることを陛下がお止めになることはないと思いますが…申し訳ありませんが陛下に直接お聞きいただけますでしょうか。」
「そう…そうよね。では陛下に直接聞いてみるわ。」
「ありがとうございます。明日の夜で調整させていただきます」

一礼して早速、皇帝のもとに行こうとした奏輝を蔡怜は呼び止めた。

「ああ、奏輝。急がなくて大丈夫よ。こちらからは基本的に呼ばないと申し上げたばかりだし、私もたまにはゆっくりしたいから…今度来られた時にでも聞いてみるわ」
「左様でございますか。それでは本日は下がらせて頂いてよろしいでしょうか」
「ええ。お疲れ様」
「失礼いたします」

奏輝が去ったあと、蔡怜はふう、とため息をついた。
今まではあまり深く考えることなく皇帝と会っていたが、自分からは呼ばないと言ってしまった以上、待つしかないことに蔡怜は気づいた。

「いつお会いできるかしら」

一人でぼそっと呟いたその時にこんこんと扉を叩かれ蔡怜は寝台から飛び起きた。

「はい」

それほど遅くない時間といえ、もうすでに奏輝や他の女官達も下がらせている。蔡怜はドキドキしながしながら自ら扉を開けた。

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