後宮にて、あなたを想う

じじ

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33 蔡怜と黄昭2

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「黄島へ伝わる過程でどうやら尾ひれがついてしまっている様です。運営などと…ほんの少し領民冬支度を手伝ったに過ぎません。」

両親が多忙、の件はさらっと流して答えた蔡怜だが、内心では頭を抱えた。

これはうちの両親が領地領民を顧みない馬鹿な貴族だって周りにばれてるんだろうな。事実その通りだけど、皇后の座にいるのはそんな両親から生まれた娘だと思われるのは、さすがにいたたまれない。

「では、そういうことにしておきましょう。ただ蔡怜様に関しまして、他の貴族から話に上がった際に必ず言われる二つ名がございました。お聞きになりたいですか。」

にこりと微笑みながらも、目にはからかうような色が見える黄昭に、嫌な予感を感じながら蔡怜は、恐る恐る尋ねた。

「なんでございましょう。」
「蔡家の憂いの美姫」

嫌だ。

「そのように嫌そうになさらずとも」
「黄昭様なら」
「その二つ名は確かに辛いところでございますね」

ほら、やっぱり嫌だろが大体、さっき「そういうことにしおく」とか言った口で直後にこんなこと言うのは反則だろ。

がっくりと頭を落とした蔡怜を見て、ふふふと、黄昭は声を上げて笑った。

「皇后陛下であらせられるのに蔡怜様は、なんだかとても可愛らしくて…どうぞお許しくださいね。ところで話を本題に戻しますが、管修媛かんしゅうえん様とは、昨日少しお話させていただいたのですが、信頼に足る方かと。陳家へどのような物を納めていたのかお聞きになるのも一つかもしれません。」
「そうですね」
「まもなく管修媛様も来られるかと思います。お見えになりましたら、蔡怜様がご存知のことを我々に教えていただける、と思ってよろしいでしょうか。」
「はい。陛下からもお許しをいただきましたので。」

蔡怜の返答に、にこりと微笑んで黄昭は優雅な動作でお茶を飲んだ。

「管修媛様、ご入室なさいます。」
奏姫そうきがそう告げるとともに、管修媛李嬌りきょうが現れた。興味深げに二人を眺めた後、思い出したように慌てて頭を下げる様子に、蔡怜は思わず笑みをこぼした。

「ようこそおいでくださいました、管修媛様」
「皇后陛下、本日はお招きいただき誠にありがとうございます。黄貴妃様、皇后陛下との謁見にお力添えいただき誠にありがとうございます。」

半ば呼びつけられた形にも関わらず、蔡怜と黄昭を立てる形で挨拶をする李嬌に、蔡怜は申し訳なさを覚えた。

「こちらこそ。後宮での暮らしがまだ不慣れなところ、お呼び立てしてごめんなさいね。」
「あら、蔡怜様。管修媛様には随分とお優しいお言葉ですね。私には挨拶の後、いきなり黄島の様子をお聞きなさるほど仕事熱心でいらしたのに。」

どうやら先ほどのやりとりで完全に友人に認定されてしまったようだ。冗談めかした口調で黄昭が茶々を入れてくるのを見て、蔡怜は隠しもせずため息を吐いた。

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