後宮にて、あなたを想う

じじ

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22 侍医女官の話⑤

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「湖月様と水月様は、とてもよく似たご姉妹で、伶俐な美貌が表すかのように冷たいご性格でした。私がご出産の際にお手伝いさせていただくことになりましたのは、お二人ともそれまでの侍医女官達と折り合いが悪かったからです。もともと担当しておりました侍医女官達は、湖月様と水月様にさまざまなご注意点を度々お伝えしていたようで、それを疎まれていたそうです…皇后様、侍医女官にとって最大の屈辱がお分かりになりますでしょうか。
それは、ご出産の介助を拒否されることでございます。
湖月様も水月様も侍医女官達の忠告を無視されたり、ときにはきついお言葉を言われたりすることもあったそうですが、侍医女官達は、それでも御子と側妃様方が安全にご出産に臨めるようにと、心を砕いておりました。

湖月様に陣痛が始まった時でございます。それまで、湖月様付きであった侍医女官におっしゃったのです。あなたは出て行きなさい、と。」

なかなか性格の悪い女人だな、と蔡怜は思う。担当の侍医女官を代えてもらうにしても、出産直前でそれを言うとは。

「担当の侍医女官は、絶句しておりましたが、ご命令には従うしかございません。恭しく一礼をして、その場を後にしたようでございます。その後は、居室の外で泣きながら、湖月様の安産を祈っていたそうです。
入れ替わるように、私が呼ばれました。」
「あなたが呼ばれたのはなぜなのかしら。たまたまだったの?」
「いえ、湖月様から直々にご指名いただきました。前皇后様がご懐妊中に私のことを良いようにおっしゃってくださっていたようです。部屋に入った際に、あなたは口うるさく言わないって聞いたわよ、と言われましたので…前皇后様は、我々がご注意するまでもなくお体を気遣っておられたので、こちらから申し上げることがなかっただけなのですが。」
「そう。湖月様は出産に至るまでは問題なかったの?」
「はい。担当であった侍医女官から引き継ぐ際も、特に問題ない旨は聞いておりました。しかし、お生まれになった御子は前皇后様の時同様、お首に臍の緒が巻き付いた状態でお亡くなりになられていたのでございます。
私も侍医も一瞬言葉を無くしましたが、湖月様にお伝えしないわけにはございません。できるだけ落ち着いて、御子がお亡くなりになっている旨をお伝えしました。」
「そう。湖月様はなんと」
「はい。私達が申し上げたことが飲み込めないようでした。そして、あとは前皇后様の時と同様でございます。お止めする間もなく、かんざしで喉をお突きになって自害されたのです。」
「まあ。でもなぜ、かんざしがお側に?前皇后様がかんざしで自害されたからには、あなた達も注意をしてたわよね。」
「もちろんでございます。ただ、こちらからは危険となりそうなものについては、お側に置かれないようにお伝えする以上のことはできませんでした。まさか、ご身体検査を行うわけにもまいりませんので…。」

それはそうか。普通は侍医女官の言うことを聞くだろうしな。しかし、忠告されたにも関わらずかんざしを持って出産に望むとは…なかなかいい根性してるな。
蔡怜は、妙に関心したのだった。
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