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本編【第二章】
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「カレン殿を死なせなければ、あなたをこれほど追い詰めることがなかった…そう思ってしまうんだ。」
「違うのです!」
私は言わずにはいられなかった。これほど自分を責めるフォーゼム様に自分の心のうちを明かすことなく、さも自分だけが辛い立場のようには振る舞えない。
「そうではなくて…私が許せないのは…カレンが死んだ理由を聞いて初めて…心からカレンを愛していると…殺した相手が憎いと私が思ったことなのです。」
カレンが私と関係ない理由で殺されたら?
私はきっとこれほど強く犯人を憎まなかった。
カレンがシュナイダーのことを告げて、殺されずにすんでいたら?
私はきっとこれほど深くカレンへの感謝も愛情も湧かなかった。
それが分かるから、そんな自分が醜くて許せないのだ。
「だから私にはフォーゼム様がシュナイダー様の兄君であると言う理由だけで責める資格などありはしません。もとよりそのような気もありませんが…こんな醜い私でも変わらずに妻にと望んで頂けますか」
「…あなたが私を望んでくれるのであれば」
妻にと請われる言葉がこれほど悲しく響くとは、そう思わずにはいられなかった。
一月後。
シュナイダーとファボ子爵の息子の死刑がひっそりと行われたと教えられた。
さんざん喚いていた二人とも最期は観念して祈りと謝罪の言葉を口にしたらしい。
冷たい口調でその様子を告げるフォーゼム様こそ、心の奥底で悲しみが揺蕩っているようだった。
その日の晩、再びフォーゼム様が青い顔をして私の部屋を訪ねてきた。
常にない顔色に私は何か良くないことが起きたのだと分かる。
「こんな時間にすまない。あなたのご実家が…燃えた、と。火急の使者がやってきて…」
冗談でこんなことを言う人でないことくらい分かっている。私はゆっくり頷いた。
「分かりました。」
「すぐに使いのものに様子を見てくるように知らせる。」
私のために最善を尽くそうとしてくれているフォーゼム様に、しかし私はゆっくり被りをふった。
「必要ありません。フォーゼム様は一度お休みになって。顔色が…それに明朝には状況も分かりましょう」
「そんな悠長な…いくら縁を切ったといえども、あなたのご両親の安否がかかっている…」
「ええ。分かっております。ですがその上で明日で良いと申し上げているのです。」
涙が頬を伝うのが分かる。そう今更どれほど急いたところで結果が変わらない。であれば夜中の危険な時間帯に人を遣るべきではない。
「両親は共に業火の中でしょうから。」
「違うのです!」
私は言わずにはいられなかった。これほど自分を責めるフォーゼム様に自分の心のうちを明かすことなく、さも自分だけが辛い立場のようには振る舞えない。
「そうではなくて…私が許せないのは…カレンが死んだ理由を聞いて初めて…心からカレンを愛していると…殺した相手が憎いと私が思ったことなのです。」
カレンが私と関係ない理由で殺されたら?
私はきっとこれほど強く犯人を憎まなかった。
カレンがシュナイダーのことを告げて、殺されずにすんでいたら?
私はきっとこれほど深くカレンへの感謝も愛情も湧かなかった。
それが分かるから、そんな自分が醜くて許せないのだ。
「だから私にはフォーゼム様がシュナイダー様の兄君であると言う理由だけで責める資格などありはしません。もとよりそのような気もありませんが…こんな醜い私でも変わらずに妻にと望んで頂けますか」
「…あなたが私を望んでくれるのであれば」
妻にと請われる言葉がこれほど悲しく響くとは、そう思わずにはいられなかった。
一月後。
シュナイダーとファボ子爵の息子の死刑がひっそりと行われたと教えられた。
さんざん喚いていた二人とも最期は観念して祈りと謝罪の言葉を口にしたらしい。
冷たい口調でその様子を告げるフォーゼム様こそ、心の奥底で悲しみが揺蕩っているようだった。
その日の晩、再びフォーゼム様が青い顔をして私の部屋を訪ねてきた。
常にない顔色に私は何か良くないことが起きたのだと分かる。
「こんな時間にすまない。あなたのご実家が…燃えた、と。火急の使者がやってきて…」
冗談でこんなことを言う人でないことくらい分かっている。私はゆっくり頷いた。
「分かりました。」
「すぐに使いのものに様子を見てくるように知らせる。」
私のために最善を尽くそうとしてくれているフォーゼム様に、しかし私はゆっくり被りをふった。
「必要ありません。フォーゼム様は一度お休みになって。顔色が…それに明朝には状況も分かりましょう」
「そんな悠長な…いくら縁を切ったといえども、あなたのご両親の安否がかかっている…」
「ええ。分かっております。ですがその上で明日で良いと申し上げているのです。」
涙が頬を伝うのが分かる。そう今更どれほど急いたところで結果が変わらない。であれば夜中の危険な時間帯に人を遣るべきではない。
「両親は共に業火の中でしょうから。」
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