上 下
13 / 13

12 終焉

しおりを挟む
ヴァンと結婚して3年が経った。
あれからヴァンはげっそりとやつれて、今や私の顔を見るだけで、瞳に恐怖の色が宿る。
ざまあみろ。

3年はほのかが結婚して自殺した年だ。
ヴァンは毎朝、私の顔を見ると挨拶してすぐ謝罪をする。前世の私と同じだ。
私はその日、ヴァンを呼び止めた。常日頃と違う流れにヴァンがぴくりと震える。

「ねぇ、ヴァン」
「はい…なんでしょう」
「それで、分かったの?」
「えっと…」
「本当トロイわね」
「申し訳ありません」
「なんでこんな関係になったか、分からないのか、って聞いてるのよ」
「…」
「ほら、言いなさいよ」
「それは…俺が昔言った夢…ほのかという女性…その方がアレネと関係あるのか、と。でも、あれは夢です。」

呆れた男だ。そこまで分かっていてまだ夢だと思い込んでいる。

「夢ではないわ!ほのかは私の前世よ、幸樹さん」

ぎょっとした顔でこちらを見つめるヴァンに私は暗い笑みを浮かべる。

「どうだった?この3年間」
「なぜ…確かに、あれは現実じゃないかと思った。でも、今の俺にも君にも関係ない」
「あの馬車で事故にあった日、全て思い出したのよ。ほのかの恨みは私のあなたへの想いを塗り替えるには充分だったわ。」
「だが、俺は幸樹じゃない!」

悲痛な声で訴えたヴァンに優しく語りかける。

「ええ。でもあなたはほのかに比べればはるかにマシだったでしょう?」
「…」
「幸樹さんくらい私があなたを追い詰めていたのなら、あなたはほのか同様、今頃自殺していたでしょうから。」
「…」

そして低い声で告げる。

「良かったじゃない。あなたは少なくともなぜこんな目に遭うのか、理由があった。」

はっとした顔でヴァンは私の顔を見つめた。

「理由もなく痛めつけられたほのかとは比べ物にならないでしょう?
今日は前世の私が死んだ日。だからあなたともお別れよ。実家に帰りなさい。そして二度と私の前に姿を見せないで。」

さようなら、私のかつて愛した人。そして前世の私の…。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】どうも。練習台の女です

オリハルコン陸
恋愛
ある貴族家の子息達の、夜伽相手として買われた女の子の日常。 R15ですがコメディーです。シチュエーション的にはR15ですが、エロエロしい描写はありません。 ちょっとズレてるマイペースな女の子が、それなりに自分の状況を楽しみます。 相手はちょっとおかしな変態達です。 ※恋0から、ようやく恋愛ものっぽくなります。 完結しました。 ありがとうございました!

完結 悪女の幼馴染の別れは公爵令息の溺愛の始まり~気弱令嬢で八方美人の悪女の幼馴染辞めました!~

シェルビビ
恋愛
簡単なあらすじ 都合よく利用する幼馴染と距離を取ったら、彼女にアプローチしていた公爵令息が迫ってくる。ずっと探していた祖母の恩人は私の家族で、私の事を好きだと迫ってくる。 「あなたのために言っているの」  親友のキリエが自分のために言っているのだと信じて30歳で死んだアリア・マリーゴールド。  元々は裕福な子爵家で生まれ育ったのに、悪女のキリエから逃げるために今は平民になってしまった。やることなすこと口に出されて都合のいいように使われていた。キリエから逃れるために平民になり自由に過ごしていた時に様々な人と出会い価値観が変わった。  生まれ変わったら好きに生きたいキリエに関わらないと後悔して死んだのに13歳まで時間が巻き戻っていた。  13歳の自分の状況を確認する。  超放任主義で仕事にしか興味のない両親  呼ばれないお茶会  最後まで心配してくれたメイド  華奢で気弱な親友キリエ・アンチェスターは私をサウンドバックにしている。時間が逆行しても何も変わってない。  いつだってそうだった。都合のいい人間に上から指示するのはキリエの得意技だった。  弱気な彼女は外面が良く誰かを虐めていないと気が済まない性格なのだ。  過去の私は気弱で断れない彼女が相談という名の命令をして何度も言われた通りに動いていた。その度に言われたくもない悪口を言われた。何かあると悪者になったのは私。時間が巻き戻ったことをきっかけに自分の人生を歩むことに決めた。今度は気弱な彼女を守らない。自分の事は自分でやって。もうあなたに頼られたって何もしない。  着たくない物は絶対に着ない。  欲しい物は買い、食べたい物は食べる。  人の悪口を言わず、自分のせいにされたら否定しよう。  ひとりぼっちには慣れている。一人で生きていくために色々準備をしていた。  人生が楽しくなってきた時に公爵家から婚約届の提出済み書類が届いた。公爵家に向かったところ 「ずっと探していた人は君だった」  と言われてしまう。キリエの影武者がバレてしまったが仕方がない、ありのまま受け入れることにした。  1回目の人生で気が付かなかったことを知るたびに、彼女は今を生きていく。  お気に入り登録よろしければお願いします。  タイトルは仮です。コロコロ変えてすいません  サイコパスの幼馴染が出てきます。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

そんなあなたには愛想が尽きました

ララ
恋愛
愛する人は私を裏切り、別の女性を体を重ねました。 そんなあなたには愛想が尽きました。

卒業パーティーで婚約破棄する奴って本当にいるんだ

砂月ちゃん
恋愛
王国立の学園の卒業パーティー。これまた場末の場末、奥まった階段… なんかすっごい隅っこで繰り広げられる、ショボい婚約破棄劇。 なろうにも掲載中です。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

浮気してくださってありがとう、元婚約者様

あゆみノワ★9/3『完全別居〜』発売
恋愛
 おかげ様でHOTランキング入りしました! ありがとうございます。  感想などいただけたらとても励みになります。よろしくお願いしますっ。  ◇◆◇  貴族たちが楽しげに踊り語らうある夜会。そこに偶然に居合わせたとある不幸な令嬢と子息の頭上には、どんよりとした暗雲が広がっていた。  それもそのはず。だって今まさにふたりの眼前では、双方の婚約者が浮気相手とイチャついている真っ最中だったのだから――。  そんな絶望的な状況の中、ふたりの出した決断は。    浮気者の婚約者に悩む、とある男女の出会いのお話です。  さくっと気軽にお読みいただければ幸いです。 ※他のサイトでも掲載いたします。

処理中です...