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7 甘美な悪夢 ヴァン視点

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昔から見る夢がある。
夢の中の自分はこの国の服装とは異なる服を着ている。髪も目も黒く、今の金髪碧眼とは似ても似つかない。何より、今の自分よりは10歳近くは上に見える。

初めて見たのは…7年くらい前だろうか?そうだ。13になったあの年。アレネと正式に婚約を決めてあの年以来だ。
あの時の俺はまだ傍観者の立ち位置だった。

最初は酷く醜悪な夢だと思った。夢の中の男は、長い黒髪の女性を酷く甚振っていた。
自分より力の弱い女性を、痛めつけ、詰る様子は夢だと分かっていても気持ちのいい物ではなかった。

やめてくれ、怖がっている。怯えているじゃないか。
そう声をかけたいのに俺はあくまで傍観者だった。

それから数年して、夢の見え方が変わった。今度は自分がその男自身になったのだ。

今まで第三者的に見えていた男と女性の構図ががらりと変わった。
自分を怯えた目で見つめてくる女性。笑みを浮かべた口の端は引き攣り、瞳には常に怯えの色が見える。
それは、ひどく嗜虐心を煽る表情だった。

服従させたい。言いなりにしたい。自分が優位だと分からせたい。常に俺を一番に思っていて欲しい。他に目を向けることを許せない。自分の意志で物事を決められないようにしてやる。

それは酷く自分勝手で粘着質で醜悪なその男の恋心だった。

自分の視点があの男の視点に重なったその日、俺は起き抜けに愕然とした。

あの男のような気持ちをアレネに感じることはない。彼女のことは本当にこれ以上ないほど大切に、愛したいと思っている。
そもそも身分からして遥か上にいる彼女と婚約できたこと自体が奇跡なのだ。
アレネに限ってそんなことはあり得ないが、立場的には彼女からあの男のような振る舞いを受けても文句を言うことはできないが、こちらからそのようなことをすればすぐに離縁させられ、身分すら剥奪されるだろう。

それでも、俺はその男の気持ちがよく分かってしまった。
怯えた目で震えながら俺の機嫌を取ろうとする彼女。俺の受け答え一つでその日の彼女の気持ちを操作できる優越感。
怯えながら許しを乞う姿には一種の背徳感すら覚える。
彼女の人生そのものを俺が操っていると思える高揚感。

夢だから。夢で見る女性だから。夢でやっていることだから。
だから誰にも迷惑なんてかけていない。
彼女、ほのかが出てくる夢は続く日もあれば半月以上見ない日もある。

だから、俺の密かな楽しみは誰にも知られることはない。
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