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「え」
あまりの衝撃に一瞬言葉をなくす。
「ベスってベス?」
「姉さんのメイドの」
「うそ」
「本当」
「いつから?」
「初恋なんだ」
頬を赤らめながら答える姿にアリアナは、驚いたまま質問を続けた。
「ベスは知ってるの?」
「いいや、多分気づいてないと思う。もちろん僕が好意的だとは思ってるだろうけれど、弟が慕っているくらいにしか思われてないと思う」
「不憫ね…」
思わず同情したアリアナにユージンは肩を落としながら答えた。
「頼むから不憫とか言わないで…」
「あ、ごめんね。つい」
「…」
本気で落ち込んでいる弟を見ながらアリアナはかける言葉に迷う。
「でも、ベスね。なるほど。さすがユージン面食いね」
冗談半分で揶揄った結果、余計落ち込まれたアリアナは契約書にサインすると、早々に弟にお引き取り願ったのだった。
その日の晩、ベスが入れてくれたお茶を飲みながらアリアナは好奇心に負けて、ベスに尋ねてみることにした。
「ねえ、ベス」
「はい」
「クレメント様の件なんだけれど」
「はい」
「もし、あなたが他に好いてる方がいるなら無理することないのよ?」
ベスはじっと探るような目でアリアナをしばし見つめた後、ふっと相好を崩した。
「お嬢様以上な大切な方などおりませんよ」
「あの、ありがとう。でも男性で…」
「ふふ、おりませんわ。それに私が労働奉仕者出身だと分かって声をかけてくる強者などおりませんよ」
「でも、それはベスのお父上が借財のかたに…」
「ええ。私を売ったからです。ですが、私が労働奉仕者であった事実も変わりません。幸い旦那様のおかげで自由民としての地位を得ましたが…背中に彫られたナンバリングは消すことができませんので」
労働奉仕者は全てが入れ墨によるナンバリングで管理されている。基本的に買った主人が奴隷階級から自由民へ引き上げることをしないからだ。
「そう…ね」
「あら、お嬢様。そんな悲しそうな顔をしないでください。ゾーイ家の方に買って頂けて本当に感謝しているのです。旦那様も奥様も、アリアナ様もユージン様も、私を人間として扱って下さったのですから。」
「…」
「私の背中に数字は残っておりますが、労働奉仕者一覧からはこの数字は消えております。旦那様が私を買った翌日に役所に連れて行って下さったのです。目の前で自分の数字の欄に線が引かれるのを見た時、ようやく自由を得た気がしました。」
「でも…」
「労働奉仕者という制度を厭われている旦那様が私を買ってくださったのは一緒におられたお嬢様が、ボロを着せられ下働きさせられていた私を見て、ひどく心を痛められたからだと知っています。だからお嬢様には本当に感謝していますし、敬愛しています。」
あまりの衝撃に一瞬言葉をなくす。
「ベスってベス?」
「姉さんのメイドの」
「うそ」
「本当」
「いつから?」
「初恋なんだ」
頬を赤らめながら答える姿にアリアナは、驚いたまま質問を続けた。
「ベスは知ってるの?」
「いいや、多分気づいてないと思う。もちろん僕が好意的だとは思ってるだろうけれど、弟が慕っているくらいにしか思われてないと思う」
「不憫ね…」
思わず同情したアリアナにユージンは肩を落としながら答えた。
「頼むから不憫とか言わないで…」
「あ、ごめんね。つい」
「…」
本気で落ち込んでいる弟を見ながらアリアナはかける言葉に迷う。
「でも、ベスね。なるほど。さすがユージン面食いね」
冗談半分で揶揄った結果、余計落ち込まれたアリアナは契約書にサインすると、早々に弟にお引き取り願ったのだった。
その日の晩、ベスが入れてくれたお茶を飲みながらアリアナは好奇心に負けて、ベスに尋ねてみることにした。
「ねえ、ベス」
「はい」
「クレメント様の件なんだけれど」
「はい」
「もし、あなたが他に好いてる方がいるなら無理することないのよ?」
ベスはじっと探るような目でアリアナをしばし見つめた後、ふっと相好を崩した。
「お嬢様以上な大切な方などおりませんよ」
「あの、ありがとう。でも男性で…」
「ふふ、おりませんわ。それに私が労働奉仕者出身だと分かって声をかけてくる強者などおりませんよ」
「でも、それはベスのお父上が借財のかたに…」
「ええ。私を売ったからです。ですが、私が労働奉仕者であった事実も変わりません。幸い旦那様のおかげで自由民としての地位を得ましたが…背中に彫られたナンバリングは消すことができませんので」
労働奉仕者は全てが入れ墨によるナンバリングで管理されている。基本的に買った主人が奴隷階級から自由民へ引き上げることをしないからだ。
「そう…ね」
「あら、お嬢様。そんな悲しそうな顔をしないでください。ゾーイ家の方に買って頂けて本当に感謝しているのです。旦那様も奥様も、アリアナ様もユージン様も、私を人間として扱って下さったのですから。」
「…」
「私の背中に数字は残っておりますが、労働奉仕者一覧からはこの数字は消えております。旦那様が私を買った翌日に役所に連れて行って下さったのです。目の前で自分の数字の欄に線が引かれるのを見た時、ようやく自由を得た気がしました。」
「でも…」
「労働奉仕者という制度を厭われている旦那様が私を買ってくださったのは一緒におられたお嬢様が、ボロを着せられ下働きさせられていた私を見て、ひどく心を痛められたからだと知っています。だからお嬢様には本当に感謝していますし、敬愛しています。」
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