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第4章 勇者候補に 女神の裁きを与えることにしました

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 ロニが 攻撃のモーションに入った瞬間に、私は ナイフを投擲して 少しでも攻撃のタイミングがずれるようにしました。 わずかにでも攻撃のスピードが遅れればいいのです。 クロードは 盾を使って、ロニの猛攻を防ぎ続けます。

「ちっ! お姉さん、いくつナイフを持っているのさ!?」

 リゼがくれた マジックバックを利用して、 かなりの数のナイフの取り出しが可能なのです。 敵には教えてあげることはありませんけどね。

 ロニは 苛立って、冷静さをかけています。 それにより攻撃が単調になり、 攻撃のタイミングを読みやすくなっています。 クロードはロニの 剣撃を冷静に見極めて、 盾を使って捌き続けました。

「【 サンダーソード】!!」

 ロニは 雷属性の攻撃を繰り出しました。 雷属性の攻撃は盾で防いでも、 ダメージを受けてしまいます。 クロードはバックステップをして、 回避を試みました。

「 無駄だよ!」

 どうやら、【 サンダーソード】は 遠距離攻撃も可能なようです。 避けたはずの クロード に向かって、 巨大な稲光が届きました。 このままでは、 ヘタをすれば彼は死んでしまうかもしれません。
 私は唇を噛み締めました。私が神聖魔法を 封じられていなければ、【 プロテクション】で ガードすることが 可能でした。今の私は 力任せの攻撃に対して、 あまりにも無力です。
 クロード も 器用貧乏というだけで、威力の高い攻撃の前では どうすることもできないはずです。なのに彼はどっしりと構えて、【 サンダーソード】を 受け止めることにしたようです。
 果たして、勝算はあるのでしょうか。

「【 セイクリッドアクアシールド】!!」

 クロードは 聖なる水の結界を張って、ロニの 雷の攻撃を防ぎました。 雷属性の攻撃は軽減できても完全にダメージを 打ち消すことはできないはずですが、 クロードは完全ガードしてみせました。

「 なんなんだよお前は!? 弱いくせに!!」
「 確かに僕は弱いよ」

 クロードの魔力は決して高くはありません。 魔力の差を覆すためには 魔法の属性の 相性で 相殺するしかありません。しかし、 水属性はむしろ雷属性に弱かったはずです。 全くもって、訳が分かりませんよ。

「 だったら、どうして僕の攻撃を防ぐことができるのさ!?」

 ロニの【 サンダーソード】は、私の神聖魔法による 防御魔法でも 完全に防ぎきることは不可能です。 なのに、わずかな魔力が 込められているだけの防御魔法で完全に 打ち消されてしまっては、 動揺するのも無理はないことでしょう。

「 理由は僕にも分からない。 だけど、 属性の意味がより鮮明に 理解できるようになったんだ」
「 なら、無属性の最大攻撃を 発動させればいいだけのことだよ! 僕の 生命エネルギーを 剣に込めて、【 ライフスティール】【 ブレイブバースト】!!!」

 ロニは 体力の半分を手に注ぎ込んで、勇者の最大奥義の 発動条件を満たして、 クロード に向かって バスタードソード 振りかぶりました。 本来は 皮膚の厚い魔物などを相手にして発動する奥義なので、 生身の人間がまともに食らったら ひとたまりもありません。それなのに、 クロード は 盾を捨てて、 ロングソード両手で構えました。 無謀にもロニの奥義を 迎え撃つ様です。

「【 ブラストゲージ】【 ブレイブバースト】!!!」

 【 ブラストゲージ】は ある程度の時間戦っていたらたまっていく特殊エネルギーで、 条件を無視して必殺技を使えるようになります。 クロードが ライフが半分以下にならなくても【 ブレイブバースト】を 発動することができるのはそのためです。

「 今までは小細工を駆使して 防ぐことができたようだけど、 同じ攻撃ならば圧倒的に僕の方が有利だよ!」
「 たとえそうだとしても、 僕が引くわけにはならないよ! 守るべきものがあるんだ!!」

 ロニと クロードの剣がぶつかり合い、 激しいエネルギーのぶつかり合いによって、嵐のような 衝撃波が生み出されました。
 私はまともに立っていられなくて、 地面に伏せて 吹き飛ばされないように 必死になってこらえます。

「 僕の勝ちだ」

 そう言って 立っていたのはロニで、 クロード は 地面に倒れていました。ロニは そんなクロードのお腹に 思い切り蹴りを入れました。

「げほっ!」
「 クロードは【 ブレイブバースト】を 一日一回しか発動することができなくて、 しかも 発動した後は一日中動けなくなってしまうんだったね。 情けないにもほどがあるよ」
「 クロード君は 勇敢に戦いました。 情けな くなんてありません!」

 私はロニの セリフに反論しました。 クロードは 実力差を知りながらも、 最善の手を尽くして 頑張ってくれました。 その努力をあざ笑うなど許せることではありませんよ!
 ロニも かなりのダメージを負っています。 そのせいなのか、私の神聖魔法が 発動できるようになりました。感覚的に そうだとわかります。
 私は女神の裁きをためらってしまいました。 そのせいで次々と仲間たちが傷ついてしまいました。
 ロニに更正の余地は なさそうです。ならば、遠慮はいりませんよね。

「 お姉さん、僕を勇者として選定してよ。 そしたら、 僕の仲間として命を助けてあげるよ」

 ロニは 素敵な勘違いをしていて、 私にとんでもない要求をしてきました。
 今まで頭に血が上っていたけど、 彼の言葉ですっかり冷めてしまって、 逆に冷静になれました。
 神聖魔法を 使えなくても、聖女としての 役割を果たすことはできたのですよね。

「 いいですよ。 あなたのことを勇者にして差し上げます」
「 そうこなくっちゃね」

 ロニは、 まるで無邪気な子供のように笑っています。 見た目ほどの性格だったのならば、どれだけよかったことか。しかし、 彼には女神の裁きを与えなければいけません。
 私はロニを勇者としました。 これにより、 彼に勇者としての制限も加わり、 正式に女神の裁きを与えることが可能になるのです。

「 この愚かなる罪人に女神の裁きを! 【 ホーリージャッジメント】!!」

 私はロニを対象として、 女神の裁きの最終処置を 発動させることにしました。



ーーーーーー



 補足説明すると、 混じりけのない水は電気を通しません。 それにより、 水属性の魔法で雷属性の魔法 防ぐことができたのです。

 
 次回はいよいよ、 ルナマリアの本気の 女神の裁きが発動されますよ。

 
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