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第2章 エルフの国のお姫様が 誘拐されたので、 解決することにしました

35(改稿)

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 翌朝。
 私とガルヴァスは、 エリーゼとアルフレッドの二人と 一緒に食堂スペースに向かい、 朝食を取ることにしました。

「 おはようございます。 エリーゼさん、アルフレッドさん。ニア王女が 見つかるといいですね」

 私は挨拶を済ませて、 パンにジャムを塗って口に含みます。 甘いもので気分を上げていきますよ。

「 ルナマリアちゃんは幸せそうに 食事するんだね。 とっても可愛いらしいよ」

 アルフレッドは 私の咀嚼の 様子に注目して、 だらしのない笑顔を浮かべています。
 はっきり言って、気持ち悪いのでやめてくれませんか。

「 人の顔をジロジロ見ないでください」
「 可愛い女の子はいつまでも眺めておきたいものなんだよ。ごめんね」

 ごめんで済むなら、衛兵は いりません。
 ヘビーメイスの素振りをして、わざと手を 滑らせていいですか。
 アシュトンの場合は出来の悪い弟のようでまだ我慢できたのですが、 アルフレッドには今すぐ【 ホーリージャッジメント】を・・・・・・。
 いえ、 まだ早いですね。 相手は勇者だけではありません。 女神の裁きの効果を受け付けない、聖女の エリーゼまで敵に回るのです。
 確実な証拠を突きつけなければいけません。

 とりあえず探りを入れてみましょう。

「ニア王女は、 どこにいると思いますか?」
「 アクア リーフ のどこかには居ると思いますよ。検問を掻い潜れるとは思いませんからね」

 やはり、 エリーゼはそう答えますよね。 予想していました。

「 転移魔法を使えば、外国にも 行けますよね?」
「 魔族がさらって行ったとでも言うのですか?」
「 魔族を【テイム】で支配した何者かが、【 テレポート】の 魔法発動させたのではないでしょうか」
「 魔族の気配は全く感じられませんでしたよ」

 ニア王女が 行方不明になってからすでに3日ですから、 魔法を発動した時に残る魔力は感じられません。 もしも行方不明の当日に、 エリーゼが転移魔法の魔力を感じられなかったとしたら、ラディの アーティファクトの様に 気配遮断の効果を使われたか、 彼女の証言が 偽りだということになります。
 もしも魔族を支配していて、 勇者パーティーとして ニア王女を 救出するというマッチポンプ行為を行うだけならば、 魔族の気配がしたことを否定する必要はありません。
 これは何でしょう。ラディとキャシーを なんとしてでも犯人もしくは共犯者に仕立て上げるのが目的なのでしょうか。

 何のために?

 ニア王女を 誘拐した目的が判然としません。 エリーゼとアルフレッドの動機は何なのでしょうか。
 身代金目的というのは絶対に考えられません。 かといって、マチルダの時のように単純なマッチポンプ行為だとも思えないのです。

「ニア王女の 私物を借りて 魔力の流れを読み取り、 本人がどこにいるのか 探知することにしましょう」

 私がそう提案すると、 エリーゼは首を横に振りました。

「 それはすでに調べました。ニア王女殿下の 魔力を探知できなかったからこそ、ラディの アーティファクトの効果で誘拐したと 予想しているのですよ」

 エリーゼが嘘をついている可能性は高いです。 私が 魔力探知をして、 実際に 確かめないことには信じられません。

「 私も魔力探知してみますよ」
「 お好きにどうぞ」

 エリーゼは私にハンカチを手渡してきました。 きっと、ニア王女の私物なのでしょう。
 けれど偽物かもしれないし、 何らかの細工をしてある可能性もあるから、 素直に 受け取ったハンカチを調べる気にはなりません。

「 いざという時に、それぞれ 魔力感知できるほうがいいでしょう。 私も国王陛下から、ニア王女の私物を 借りたいと思っています」
「では、 王宮に参りましょうか」

 エリーゼは 余裕の表情を崩しません。 昨日までの私だったら焦っていたことでしょう。でも、リゼとエイミアに 勇気をもらえましたから、 平常心でいられます。

「 ついでに、街のやつらに聞き込み調査をしないか?」

 ガルヴァスが 提案してきました。

「 もしも万が一狂言誘拐だとしたら、 そろそろアクアリーフの街が恋しくなる頃だろう」

 狂言誘拐の可能性は低いと思いますよ。ニア王女が【 感知遮断】の スキルもしくは アーティファクトを所持しているか、 魔族を支配していることになってしまいますからね。

 王宮の 隠し通路を利用した、 国外への壮大な家出と言う 可能性は・・・・・・ ごめんなさい。 私では見当もつきません。 今度、リゼに この件について質問してみることにしましょう。

 本当ならゆっくりと観光したかったところですから、 街を回って聞き込み調査をするのも悪くないかもしれませんね。
 エリーゼとアルフレッドは隙がなくて、尻尾を出してくれそうにありませんから、 何かしらの情報は手に入れたいところです。
 お互いに監視をし合っている状態ですけど、 最終的には ニア王女を見つけ出す流れになるはずです。
 問題はスケープゴートに惑わされずに、真犯人を見つけられるかどうかです。

「 デートだね」

 アルフレッドが私にウインクをしてきました。 気分が悪くなるので、 肘鉄砲を返してもいいですか。



 街路樹の緑と 小川の青い流れが、 鮮やかに景色を彩っています。 懐かしい田舎という雰囲気を醸し出していて、 本来ならばゆったりとした時間を楽しめるはずだったのです。
 エルフの子供達が 川で遊んでいるのをちょっと羨ましいと思ってしまいました。

 子供の頃は アシュトン達と・・・・・・いえ、 思い出話をしている場合ではありませんよね。

 
 私たちはお菓子屋さんに寄ることにしました。
 私がどうしても食べたい訳じゃなくてですね。
 食べないとも言ってませんけどね!
 ほら、 あれですよ。 調査に協力してもらう代わりに売り上げに貢献しようということです。

「これ、 とってもおいしいです!」
「 いい食べっぷりだね。 よければこっちの方も試食してみるかい? サービスするよ」
「 ありがとうございます」

 お菓子屋さんのおばさんは気前が良くて、 様々なお菓子をサービスしてくれました。

「 ルナマリア、お前・・・・・・」

 ガルヴァス、 そんな呆れた顔をしないでください。調査は忘れませんよ。
 
「 ここだけの話ですけど、ニア王女が この店にお忍びで来たりしませんか?」
「 あんただけに こっそり 教えるんだけど、ニア王女は 毎日のように デートしてたね。けど、 ここ何日か 見かけていないよ。 王宮の勉強が忙しいのかね?」

 えっ? ニア王女には 恋人が いたのですか。まさか、 駆け落ちによる逃避行ですか!?
 これは本気で、隠し通路による国外逃亡の可能性も、視野に入れておかなければいけなくなりました。

「 デートの相手って、どんな男の人ですか?」
「 フードで顔を隠しているから一見怪しいけど、 必ず『 ありがとうございました』と 会釈をしてから帰って行くんだよ。 案外、 お相手も他国のお忍びの王子さまかもしれないね」
「 それは物語になりそうなほどロマンチックな話ですね」
「 照れたように頬を赤くしながら手をつないだりして・・・・・・ あれは絶対に両思いに違いないね」

 素敵なお話をありがとうございました。
 身分違いの恋というのは 悲劇を生むものですけど、 それはそれで!

 いえ、 世間話をしに来てわけではありませんでした。
 ニア王女が 街中にいないとわかっただけでも良しとしておきましょうか。
 私は何も悪くありませんよ。 むしろ、私ばかりが聞き込みをしてませんでしたか。
 アルフレッドは看板娘を口説いていました。 エリーゼはお菓子を頬張って・・・・・・ それは私のですよ! 返してください。
 
 ガルヴァスは エルフの女の子に声をかけていました。 たれ目で胸の大きな女の子が好みだったのですか。

「ニア王女だと お見受けする」
「 バレちゃったぁ?」

 エルフの女の子の名前はニアと 言うのですね。 王女様と同じ名前じゃないですか。

 って。


 ええぇっ!!?

 何でこのタイミングで、あっさりとニア王女が見つかるのですか!?
 今までの苦労は何だったのですか・・・・・・。
 納得のいく答えを聞かせてくださいね!


「ニア王女様、 探しましたよ。 何者かにさらわれたんじゃないかと心配しました」
「 本当に誘拐されそうになったから、 その前に狂言誘拐で 身を隠しただけだよぉ」

 衝撃の事実でしたーー。




ーーーーーー



 読者の納得のいく展開ではないかもしれないけど、 最後までお楽しみください。
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