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第2章 エルフの国のお姫様が 誘拐されたので、 解決することにしました
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大勢で顔を合わせて食事をするのは楽しいものですね。
私が作ったシチューは好評でした。 子供達はおかわりまでしてくれましたよ。 お母さんたちから聞いていた、子供達が嫌いな野菜もこっそり入れておきました。 案外わからないものなんですね。
シチューは乾燥野菜やチーズなど、保存食を使えるから、 アウトドアでは 便利なメニューなんですよ。
でも作るのに少しだけ時間がかかるから、強行軍には向かないですけどね。
リゼからもらった収納バッグには 甘いお菓子や新鮮な果物しか入れてないから、 生野菜や生肉は用意してなかったんです。
肉に関しては毎日、新鮮な 狩ったばかりの魔物の肉が振舞われていましたからね。
もちろん、バランスの良い食事を心がけておりますよ。 本当ですよ?
デザートは フルーツタルトにしました。 程よい甘酸っぱさが口いっぱいに広がって、 幸せを噛み締めています。
「 生きててよかったです!」
「 そんな台詞は 10年早い」
「 お菓子のシアワセの味を語るのに、歳は関係ありませんよ」
私がそう力説すると、ガルヴァスは なぜか遠い目をしました。
「まあ、 幸せで何よりだな」
「はい、 とっても幸せです」
嬉しさのあまり 笑顔で満ち溢れますよ。
甘いものが苦手だなんて、ガルヴァスは 人生を大損してますよね。
「 ところで・・・・・・」
私は お腹が満たされた後に、ガルヴァスに 聞いてみることにしました。
「ガルヴァスは、 いつのまに【バーサーク】のスキルをコントロールできるようになったのですか?」
「 ルナマリアが 【サニティ】をかけてくれた後だな。 今では自分の意思で、完全に動けるようになったぞ」
私のおかげですか。 そんなに褒めないでください。照れますね。 お礼はとびっきり美味しいお菓子でいいですよ。
「 固有種なのか、 巨大なトロールが冒険者一行を苦しめて♪」
バードの女の子が 歌っています。 子供達は キラキラとした瞳で聞き入っていました。 大人達も皆耳を傾けます。
素敵な音色ですね。【旋律】により、 癒しの効果があるようです。
ところが。
なぜか別の歌声が聴こえてきました。
「 黒髪の男は最悪さ♪ 今から約1000年前のこと、 魔法文明時代の王様を殺してしまったのさ♪」
これはまさか! 本来は勇者の子孫しか知らない、 真実の 物語の冒頭ではありませんか。
黒髪の男とはカンストのことです。
カンストは自らを勇者と名乗り、 勇者のお約束という名目で、 悪逆非道の数々を 繰り広げていました。
困った民衆は 当時の 魔法王に 助けを求めます。
魔法王とは 魔法を極めた 者の 総称で、 大魔法国家 プロヴィデンスを治める 国王陛下でした。
魔法王は、 直ちに カンスト を捕らえるべく 軍勢を率いて立ち向かいます。 カンストは圧倒的に 強大な力を誇っていて、 人類が一丸となっても歯が立ちませんでした。
激戦の最中、魔法王は カンストの 遊び半分の悪戯で 命を落としてしまいます。
なんと理不尽なことでしょう。 世界中の 人間すべてが 復讐の炎を 燃え上がらせていました。
理由はわかりませんが、 カンスト は勇者だから強いのです。 それならば 人間側にも 勇者を誕生させればいいのでしょうか。
安易な考えです。 しかし、他に方法がありません。 人々は藁にもすがる思いで、 女神アレクシスに真の勇者の 存在を望みました。
果たして、願いが聞き入れてもらえたのでしょうか。 七人の勇者が誕生して カンストを追い詰め、聖女の 一人がカンストを地獄へと追いやりました。
ところが 、この世界の理から外れた存在の カンストは、 いつこの世界に戻ってくるか分からないのです。
本当は勇者とは、 カンストが復活した場合に対抗するための存在なのです。
元勇者のカンストが人類の敵とあっては外聞が悪いから、 その部分は 記録から消されることになりました。
考えても見てください。 勇者が人類に牙を剥く存在と認識されたら、 迫害を受けて最悪の場合殺されるかもしれません。
だから魔王は未だに存在して、 それに対抗する手段として勇者が存在しているという言い訳が必要だったのです。
勇者は、カンストの二の舞にならないように徹底的に管理されています。
でも、道具扱いしかされなかったら反発するのは当たり前ですよね。
前にも言いましたけど、勇者システムはすでに破綻しているのです。
・・・・・・あれ? 勇者の末裔でもない私が、どうしてこの真実を知っているのでしょうか。
そんなことをぼんやりと考えていると、ガルヴァスの 体が傾いて、 私を押し倒してきました。
また暴走したんですか!? 【バーサーク】のスキルをコントロールできるようになったって言ってましたよね!?
まさか、 マチルダが私を恨んで、【 魅了】スキルが強制的に発動しているのでしょうか。
やめてください! 子供達が見て・・・・・・ませんね。 皆さんすやすや夢の中のようです。
疲れが溜まっていましたからね、 なんて理由のはずがありませんよ!
魔力の流れは 感知しなかったから、 敵対する 何者かが【 スリープクラウド】を 発動したわけではないようです。
このタイミングで私以外の全員が寝てしまうのは不自然だから、 何らかの効果によるものだと思うのですが・・・・・・。
今更メシマズ設定はありえませんよ!
食事の中に 眠り薬のような類は入っていません。 断言しますよ。
怪しいのはひとつだけですよね。 謎のバードが真実の歌にのせて、【ララバイ】の 旋律を奏でたのです。
私が作ったシチューは好評でした。 子供達はおかわりまでしてくれましたよ。 お母さんたちから聞いていた、子供達が嫌いな野菜もこっそり入れておきました。 案外わからないものなんですね。
シチューは乾燥野菜やチーズなど、保存食を使えるから、 アウトドアでは 便利なメニューなんですよ。
でも作るのに少しだけ時間がかかるから、強行軍には向かないですけどね。
リゼからもらった収納バッグには 甘いお菓子や新鮮な果物しか入れてないから、 生野菜や生肉は用意してなかったんです。
肉に関しては毎日、新鮮な 狩ったばかりの魔物の肉が振舞われていましたからね。
もちろん、バランスの良い食事を心がけておりますよ。 本当ですよ?
デザートは フルーツタルトにしました。 程よい甘酸っぱさが口いっぱいに広がって、 幸せを噛み締めています。
「 生きててよかったです!」
「 そんな台詞は 10年早い」
「 お菓子のシアワセの味を語るのに、歳は関係ありませんよ」
私がそう力説すると、ガルヴァスは なぜか遠い目をしました。
「まあ、 幸せで何よりだな」
「はい、 とっても幸せです」
嬉しさのあまり 笑顔で満ち溢れますよ。
甘いものが苦手だなんて、ガルヴァスは 人生を大損してますよね。
「 ところで・・・・・・」
私は お腹が満たされた後に、ガルヴァスに 聞いてみることにしました。
「ガルヴァスは、 いつのまに【バーサーク】のスキルをコントロールできるようになったのですか?」
「 ルナマリアが 【サニティ】をかけてくれた後だな。 今では自分の意思で、完全に動けるようになったぞ」
私のおかげですか。 そんなに褒めないでください。照れますね。 お礼はとびっきり美味しいお菓子でいいですよ。
「 固有種なのか、 巨大なトロールが冒険者一行を苦しめて♪」
バードの女の子が 歌っています。 子供達は キラキラとした瞳で聞き入っていました。 大人達も皆耳を傾けます。
素敵な音色ですね。【旋律】により、 癒しの効果があるようです。
ところが。
なぜか別の歌声が聴こえてきました。
「 黒髪の男は最悪さ♪ 今から約1000年前のこと、 魔法文明時代の王様を殺してしまったのさ♪」
これはまさか! 本来は勇者の子孫しか知らない、 真実の 物語の冒頭ではありませんか。
黒髪の男とはカンストのことです。
カンストは自らを勇者と名乗り、 勇者のお約束という名目で、 悪逆非道の数々を 繰り広げていました。
困った民衆は 当時の 魔法王に 助けを求めます。
魔法王とは 魔法を極めた 者の 総称で、 大魔法国家 プロヴィデンスを治める 国王陛下でした。
魔法王は、 直ちに カンスト を捕らえるべく 軍勢を率いて立ち向かいます。 カンストは圧倒的に 強大な力を誇っていて、 人類が一丸となっても歯が立ちませんでした。
激戦の最中、魔法王は カンストの 遊び半分の悪戯で 命を落としてしまいます。
なんと理不尽なことでしょう。 世界中の 人間すべてが 復讐の炎を 燃え上がらせていました。
理由はわかりませんが、 カンスト は勇者だから強いのです。 それならば 人間側にも 勇者を誕生させればいいのでしょうか。
安易な考えです。 しかし、他に方法がありません。 人々は藁にもすがる思いで、 女神アレクシスに真の勇者の 存在を望みました。
果たして、願いが聞き入れてもらえたのでしょうか。 七人の勇者が誕生して カンストを追い詰め、聖女の 一人がカンストを地獄へと追いやりました。
ところが 、この世界の理から外れた存在の カンストは、 いつこの世界に戻ってくるか分からないのです。
本当は勇者とは、 カンストが復活した場合に対抗するための存在なのです。
元勇者のカンストが人類の敵とあっては外聞が悪いから、 その部分は 記録から消されることになりました。
考えても見てください。 勇者が人類に牙を剥く存在と認識されたら、 迫害を受けて最悪の場合殺されるかもしれません。
だから魔王は未だに存在して、 それに対抗する手段として勇者が存在しているという言い訳が必要だったのです。
勇者は、カンストの二の舞にならないように徹底的に管理されています。
でも、道具扱いしかされなかったら反発するのは当たり前ですよね。
前にも言いましたけど、勇者システムはすでに破綻しているのです。
・・・・・・あれ? 勇者の末裔でもない私が、どうしてこの真実を知っているのでしょうか。
そんなことをぼんやりと考えていると、ガルヴァスの 体が傾いて、 私を押し倒してきました。
また暴走したんですか!? 【バーサーク】のスキルをコントロールできるようになったって言ってましたよね!?
まさか、 マチルダが私を恨んで、【 魅了】スキルが強制的に発動しているのでしょうか。
やめてください! 子供達が見て・・・・・・ませんね。 皆さんすやすや夢の中のようです。
疲れが溜まっていましたからね、 なんて理由のはずがありませんよ!
魔力の流れは 感知しなかったから、 敵対する 何者かが【 スリープクラウド】を 発動したわけではないようです。
このタイミングで私以外の全員が寝てしまうのは不自然だから、 何らかの効果によるものだと思うのですが・・・・・・。
今更メシマズ設定はありえませんよ!
食事の中に 眠り薬のような類は入っていません。 断言しますよ。
怪しいのはひとつだけですよね。 謎のバードが真実の歌にのせて、【ララバイ】の 旋律を奏でたのです。
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