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第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました
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「 どうしました!?」
不味いです。 騒ぎを聞きつけた誰かが駆けつけてきました。
私は誤魔化すように曖昧に笑います。
「な、 何でもありませんよ」
「 それは良かった」
この場に現れたのは、 フードをかぶった体格の良い男の人でした。
冒険者は全員、出払っているのではなかったのですか。
いえ、 私も人の事は言えませんけどね。
フードの男性は武器を持っていないように見えます。モンク ということですか。
・・・・・・ どうせならもう少し前に、ガルヴァスを 止めて欲しかったですけど、 文句を言っても仕方がありませんよね。 理不尽な八つ当たりになってしまいます。
「 私は聖女のルナマリア。 こっちは戦士のガルヴァスです。 もしよかったら、臨時のパーティーを組みませんか?」
「それは・・・・・・ 無理な相談でした」
私がそうお願いすると、 フードの男性は首を横に振りました。
そうですよね。 他の仲間がいるかもしれませんし、 戦えない理由があるのかもしれません。 見たところ怪我はしていないようですから、 もしも理由があるとしたら精神的な要因なのでしょう。
無理強いはできませんね。
「 わかりました。 私たちは戦場に向かいますね」
「 待った。ちょっと話を聞いてほしいと思いました」
この状況で、重要な話なのでしょうか。
この場でも十分に、 戦場に支援魔法と回復魔法をかけ続けることはできます。
でも、 心配なのはフランベルジュ公爵一家です。 結界で魔物の攻撃は防いでいますけど、 公爵令嬢は 涙を流して精神的に参ってしまいます。
トラウマにならなければ良いのですけど・・・・・・。
「 手短にお願いしますね」
「 わかりました。 僕の名前はジェラート。 ここまで一人で旅を続けてきました」
辻馬車を利用してきたということですよね。 そうでなければ、 ソロでも魔物を倒せる相当の実力者ということになります。 実際に【神の眼】で調べてみると、 アシュトンに匹敵するほどの 使い手だということが判明しました。
これで勇者ではなく、 魔物討伐に向かわないのはどういうことでしょうか。
人間と 魔物の気配が入り混じったような不思議な感覚がします。
ジェラートは魔族ということでしょうか。ギルティオード公爵を 誑かしてスタンピードを起こし、 フレアリーゼ王国を滅ぼしつもりなのでしょうか。
もしそういうつもりなら、 この場で悠長に 会話する理由がわかりません。
「 自己紹介したいだけではありませんよね。 私は急いでいるんです。 早く本題に入ってください」
「 わかりました。 僕は聖女に会って 聞きたいことがありました」
果たして、何を聞かれるのでしょうか。鼓動が早くなっていきます。
「 人間関係で嫌なことありました?」
「ふえっ?」
私は間抜けな声を漏らしました。
このタイミングで世間話を している暇はありませんよ。
ジェラートは真剣な表情をしています。 からかっているわけではなさそうです。
これは私も真面目に受け答えしなければならない ようですね。
「 そりゃ人付き合えで疲れることはたくさんありますよ」
特にアシュトンパーティーでの 出来事は、 思い出したくもないほどです。
「 では、嫌いな人間を消したいと思いました?」
「 それはありませんよ」
私には勇者を消滅させる力があります。 しかし、実行しようとは思いません。
馬が合わないからといって その人の人生を奪ってしまうなら、 それは独裁者ではないですか。
「 勇者カンストのような人物に対しても、同じようなことが言えました?」
「はい。 もちろんですよ」
「 勇者カンストは最悪な人物だと母上から聞きました。 なのに、どうして認めることができました?」
「 私はカンストのような人物が 大嫌いですけどね。 存在を否定することはできませんよ」
もしも私の神聖 魔法が封じられたら、 最強のカンストでなくても、 暴漢に襲われただけでひとたまりもありません。 勇者の恐ろしい力に目を向けられがちですが、 罪は他の人と全く同じなのです。
個人的な私怨による 復讐は、 さらなる憎しみの連鎖を生み出すだけです。
誰彼関係なく、 罪を犯した者は正式に裁かれなければいけません。
どんな嫌な人物でもこの世界に影響を与えて、 私という存在を作り上げているのです。 誰一人存在を否定できるものは いないのですよ。
堅苦しい話をしすぎましたね。すみません。
「 わかりました。 見限るのは時期尚早だと母上に進言 することにしました」
「 母親ってまさか!?」
「 では、またお会いすることにしました」
ジェラートはそう言って、姿を消してしまいました。
カンストが 好き勝手に世界中で暴れまわっていたので、【 テレポート】は 禁止魔法に指定されていました。 今では その資料さえ一部の王族などしか見ることができません。
ジェラートはその【テレポート】をあっさりと発動させました。 このことから導き出される答えは・・・・・・。
「 今は敵ではないなら放っておけ。 それよりも今は、 マチルダたちが護衛している フランベルジュ公爵一家が一番危険だ。 助けに行くぞ」
ガルヴァスの 言うとおりですね。 今は人命救助が第一です。
ジェラートの正体は気になるところですけど、 今のところ敵対してこないのなら二の次でいいでしょう。
私もジェラートのように【テレポート】が使えたらいいんですけどね。
そんな都合のいい魔法があるわけ・・・・・・。
って。
「ああっ!!」
「 どうかしたのか?」
「 すっかり忘れていましたけど、 今さっき思い出したんですよ」
私は、ガルヴァスの質問に答えました。
【 ホーリーディメンション】
罪を犯した勇者パーティーの場所にのみ瞬間移動できる魔法です。
この魔法を発動することで、 マチルダパーティーの場所にーーつまり、 フランベルジュ 公爵一家の救出にあっという間に向かえるということですよ。
ーーーーーー
察しのいい人はジェラートの正体に気づいたかもしれませんね。
不味いです。 騒ぎを聞きつけた誰かが駆けつけてきました。
私は誤魔化すように曖昧に笑います。
「な、 何でもありませんよ」
「 それは良かった」
この場に現れたのは、 フードをかぶった体格の良い男の人でした。
冒険者は全員、出払っているのではなかったのですか。
いえ、 私も人の事は言えませんけどね。
フードの男性は武器を持っていないように見えます。モンク ということですか。
・・・・・・ どうせならもう少し前に、ガルヴァスを 止めて欲しかったですけど、 文句を言っても仕方がありませんよね。 理不尽な八つ当たりになってしまいます。
「 私は聖女のルナマリア。 こっちは戦士のガルヴァスです。 もしよかったら、臨時のパーティーを組みませんか?」
「それは・・・・・・ 無理な相談でした」
私がそうお願いすると、 フードの男性は首を横に振りました。
そうですよね。 他の仲間がいるかもしれませんし、 戦えない理由があるのかもしれません。 見たところ怪我はしていないようですから、 もしも理由があるとしたら精神的な要因なのでしょう。
無理強いはできませんね。
「 わかりました。 私たちは戦場に向かいますね」
「 待った。ちょっと話を聞いてほしいと思いました」
この状況で、重要な話なのでしょうか。
この場でも十分に、 戦場に支援魔法と回復魔法をかけ続けることはできます。
でも、 心配なのはフランベルジュ公爵一家です。 結界で魔物の攻撃は防いでいますけど、 公爵令嬢は 涙を流して精神的に参ってしまいます。
トラウマにならなければ良いのですけど・・・・・・。
「 手短にお願いしますね」
「 わかりました。 僕の名前はジェラート。 ここまで一人で旅を続けてきました」
辻馬車を利用してきたということですよね。 そうでなければ、 ソロでも魔物を倒せる相当の実力者ということになります。 実際に【神の眼】で調べてみると、 アシュトンに匹敵するほどの 使い手だということが判明しました。
これで勇者ではなく、 魔物討伐に向かわないのはどういうことでしょうか。
人間と 魔物の気配が入り混じったような不思議な感覚がします。
ジェラートは魔族ということでしょうか。ギルティオード公爵を 誑かしてスタンピードを起こし、 フレアリーゼ王国を滅ぼしつもりなのでしょうか。
もしそういうつもりなら、 この場で悠長に 会話する理由がわかりません。
「 自己紹介したいだけではありませんよね。 私は急いでいるんです。 早く本題に入ってください」
「 わかりました。 僕は聖女に会って 聞きたいことがありました」
果たして、何を聞かれるのでしょうか。鼓動が早くなっていきます。
「 人間関係で嫌なことありました?」
「ふえっ?」
私は間抜けな声を漏らしました。
このタイミングで世間話を している暇はありませんよ。
ジェラートは真剣な表情をしています。 からかっているわけではなさそうです。
これは私も真面目に受け答えしなければならない ようですね。
「 そりゃ人付き合えで疲れることはたくさんありますよ」
特にアシュトンパーティーでの 出来事は、 思い出したくもないほどです。
「 では、嫌いな人間を消したいと思いました?」
「 それはありませんよ」
私には勇者を消滅させる力があります。 しかし、実行しようとは思いません。
馬が合わないからといって その人の人生を奪ってしまうなら、 それは独裁者ではないですか。
「 勇者カンストのような人物に対しても、同じようなことが言えました?」
「はい。 もちろんですよ」
「 勇者カンストは最悪な人物だと母上から聞きました。 なのに、どうして認めることができました?」
「 私はカンストのような人物が 大嫌いですけどね。 存在を否定することはできませんよ」
もしも私の神聖 魔法が封じられたら、 最強のカンストでなくても、 暴漢に襲われただけでひとたまりもありません。 勇者の恐ろしい力に目を向けられがちですが、 罪は他の人と全く同じなのです。
個人的な私怨による 復讐は、 さらなる憎しみの連鎖を生み出すだけです。
誰彼関係なく、 罪を犯した者は正式に裁かれなければいけません。
どんな嫌な人物でもこの世界に影響を与えて、 私という存在を作り上げているのです。 誰一人存在を否定できるものは いないのですよ。
堅苦しい話をしすぎましたね。すみません。
「 わかりました。 見限るのは時期尚早だと母上に進言 することにしました」
「 母親ってまさか!?」
「 では、またお会いすることにしました」
ジェラートはそう言って、姿を消してしまいました。
カンストが 好き勝手に世界中で暴れまわっていたので、【 テレポート】は 禁止魔法に指定されていました。 今では その資料さえ一部の王族などしか見ることができません。
ジェラートはその【テレポート】をあっさりと発動させました。 このことから導き出される答えは・・・・・・。
「 今は敵ではないなら放っておけ。 それよりも今は、 マチルダたちが護衛している フランベルジュ公爵一家が一番危険だ。 助けに行くぞ」
ガルヴァスの 言うとおりですね。 今は人命救助が第一です。
ジェラートの正体は気になるところですけど、 今のところ敵対してこないのなら二の次でいいでしょう。
私もジェラートのように【テレポート】が使えたらいいんですけどね。
そんな都合のいい魔法があるわけ・・・・・・。
って。
「ああっ!!」
「 どうかしたのか?」
「 すっかり忘れていましたけど、 今さっき思い出したんですよ」
私は、ガルヴァスの質問に答えました。
【 ホーリーディメンション】
罪を犯した勇者パーティーの場所にのみ瞬間移動できる魔法です。
この魔法を発動することで、 マチルダパーティーの場所にーーつまり、 フランベルジュ 公爵一家の救出にあっという間に向かえるということですよ。
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察しのいい人はジェラートの正体に気づいたかもしれませんね。
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