上 下
21 / 84
第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました

14

しおりを挟む
 門番の人、ちゃんと仕事してください! 受付の人も 何で案内しちゃうんですか!?
 私が招待したのはエイミアだけですよ。

 ・・・・・・ まだ私は世間一般では勇者パーティーの一員という位置付けですから、「 仲間に会いに来た」と 言われれば素通しなのですか。 そうですか・・・・・・。
 誰も悪くありません。 恨んではいけません。 恨んではいけませんが、 どうしても悪感情が湧き上がってきてしまいます。

「 二人って仲が良かったんだな。 喧嘩するほどってやつか?」

 アシュトンが呑気な発言をしていました。 少しばかりヘビーメイスの素振りが必要でしょうか。

 ・・・・・・。

 こほん。

 聖女の私がヘビーメイスを振り回せるわけがないじゃないですか。 ちょっとした冗談ですよ。

 エイミアは、ちっと 舌打ちします。

「 昨日はどん底まで落ち込んでいたはずなのに、 もう立ち直ったの?」
「 いつまでもくよくよしてても何にもならないからな。 俺たちはこれからも 魔物の脅威から人々を守るだけだ」
「 アシュトンの言うとおりだな」

 シルフィーユは、アシュトンの意見に 賛同していました。

 勇者らしくて立派な 志なのですけどね。 やり方がまずいと言うか、何と言いますか。 馬鹿に世界破壊級の魔法を与えたら、世界 終焉は 必至ですよね。

 アシュトンは勇者の 資格がなくても、 S ランクの冒険者までは成長することでしょう。 どちらにしても 何かやらかしてしまうのならば、 勇者として管理した方がまだマシなのです。

 それに最終手段として、 本人の 努力したことまで奪い去ってしまうのは 忍びないですからね。

「エイミア、 今日も冒険に出かけるぞ。 今日はうまくいく気がするんだ」
「 アシュトンが 言うように、 冒険日和だ」
「 絶対気のせいよ!?」

 アシュトンと愉快な仲間たちとのやり取りは、傍目から見たら 賑やかしとして楽しめますね。
 ・・・・・・ 昨日までその中に 私もいたことは、 記憶から抹消してしまいましょう。

 アシュトン は昨日死にかけたというのに、 楽観的に考えていますね。 これも私が過保護に面倒を見ていた 弊害なのでしょう。 でも、どうしても助けずにはいられないのですよ。 昨日も【神の眼】で状況を確認していました。
 仕方がありませんね。 さすがに死んでしまったら寝覚めが悪いですし、 町の人たちを守るために釘を刺しておきますか。

「 魔物が活性化していて、町の近辺の被害が拡大しています。 しばらくは周辺警護に勤めた方がいいですよ」
「? よくわからん」
「 この町の近くまで 凶悪なモンスターが迫ってくるから、 そのモンスターたちを倒したほうがいいということですよ」

 子供でもわかるような説明の仕方を心がけたつもりです。 果たして、アシュトンは理解してくれたのでしょうか。

「ああ。 魔物退治は俺に任せとけ!」
「 右に同じだ」
「イヤーッ!? これ絶対、スタンピードに巻き込まれるフラグでしょう!!?」

 エイミアは、 断末魔のような叫び声をあげていました。 もしも彼女の 予想通りだとしても、私はこれ以上止められませんよ。

「エイミア、 ファイトです」
「 勇者パーティーの強制力なんてあんまりよ! ルナマリア、こんなに頭を下げているんだから、さっさと助けなさいよ」

 上から目線で 命令するように言われても、 救いの手を差し伸べ様とは思えませんよ。

「ほら、 宮廷魔術師を 名乗るために活躍するチャンスじゃないですか」
「 それもそうね。・・・・・・ なんて思えるか!!」

 大変聡明な宮廷魔術師は、ノリツッコミもお上手ですね。





 アシュトン達3人を見送った後で、リゼが なぜかヘビーメイスを取り出しました。

「 護身用にこれを渡しておくのじゃ」
「 いらないって言ったじゃないですか!?」
「 安心するがよい。 収納魔法をかけておいたから、 普段は手ぶらで歩けるからの」
「 でも、緊急事態の時は使わなきゃいけないですよね?」
「 それはそうじゃろ」
「 スタンピードの時に目撃されてしまいますよ!?」
「 人の命とお主のくだらない 恥じらい、 どっちが大事なのじゃ?」
「わ、 分かりましたよ・・・・・・」

 私は泣く泣くヘビーメイスを受け取ります。




 
 気を取り直して、出かけることにしましょう。 こうなったら楽しみ尽くしますよ。
 まずはギルドカードで、ガルヴァスに 連絡します。

「 今から出かけます。リゼの護衛があるので、 どこで待ち合わせしますか?」
「 悪いがこっちに来てくれるか? その・・・・・・」

 マチルダと鉢合わせしたくないからですね。 私はちゃんと空気が読めますよ。

「 分かりました。すぐに向かいますね」
「 悪いな。俺がいるのは・・・・・・」

 ガルヴァスは、 結構離れた場所に泊まっていました。
  アシュトンの気まぐれ宿替えのおかげで、 道はわかります。





「これ、 とってもおいしいです!」
「 そうじゃろ。ここのパンケーキは絶品なのじゃ」

 ガルヴァス、 ごめんなさい。 私とリゼは、甘味処に寄り道しています。
 だってガルヴァスは、おそらく甘いものが苦手ですよね。 だから、付き合わせるのも悪いと思っただけですよ。 本当ですよ?

 他には洋服屋さんとか、宝石店を 回りました。 
 香水を売っているお店もあるようですね。 マチルダがつけている香りと同じ匂いが漂ってきました。
 ガルヴァス、 本当にごめんなさい。 後で荷物持ち決定ですよね。

 何でしょう。 突然、妙な違和感に襲われました。 なんだか頭がクラクラします。

 ちょうどその時。

「 緊急クエスト! スタンピードが発生しました。 冒険者の皆さんは直ちに討伐に向かってください!!」

 冒険者ギルドからの放送ーー オーラナの念話が 周辺に響き渡りました。




しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

虹の向こうへ

もりえつりんご
ファンタジー
空の神が創り守る、三種の人間が住まう世界にて。 智慧の種族と呼ばれる心魔の少年・透火(トウカ)は、幼い頃に第一王子・芝蘭(シラン)に助けられ、その恩返しをするべく、従者として働く日々を送っていた。 しかしそれも、透火が種族を代表するヒト「基音」となり、世界と種族の繁栄を維持する「空の神」候補であると判明するまでのこと。 かつて、種族戦争に敗れ、衰退を辿る珠魔の代表・占音(センネ)と、第四の種族「銀の守護者」のハーク。 二人は、穢れていくこの世界を救うべく、相反する目的の元、透火と芝蘭に接触する。 芝蘭のために「基音」の立場すら利用する透火と、透火との時間を守るために「基音」や「空の神」誕生に消極的な芝蘭は、王位継承や種族関係の変化と共に、すれ違っていく。 それぞれの願いと思いを抱えて、透火、芝蘭、占音、ハークの四人は、衝突し、理解し、共有し、拒絶を繰り返して、一つの世界を紡いでいく。 そう、これは、誰かと生きる意味を考えるハイファンタジー。 ーーーーーーーーー  これは、絶望と希望に翻弄されながらも、「自分」とは何かを知っていく少年と、少年の周囲にいる思慮深い人々との関係の変化、そして、世界と個人との結びつきを描いたメリーバッドエンドな物語です。   ※文体は硬派、修飾が多いです。  物語自体はRPGのような世界観・設定で作られています。​ ※第1部全3章までを順次公開しています。 ※第2部は2019年5月現在、第1章第4話以降を執筆中です。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

鬼切りの刀に憑かれた逢神は鬼姫と一緒にいる

ぽとりひょん
ファンタジー
逢神も血筋は鬼切の刀に憑りつかれている、たけるも例外ではなかったが鬼姫鈴鹿が一緒にいることになる。 たけると鈴鹿は今日も鬼を切り続ける。

蟲籠の島 夢幻の海 〜これは、白銀の血族が滅ぶまでの物語〜

二階堂まりい
ファンタジー
 メソポタミア辺りのオリエント神話がモチーフの、ダークな異能バトルものローファンタジーです。以下あらすじ  超能力を持つ男子高校生、鎮神は独自の信仰を持つ二ツ河島へ連れて来られて自身のの父方が二ツ河島の信仰を統べる一族であったことを知らされる。そして鎮神は、異母姉(兄?)にあたる両性具有の美形、宇津僚真祈に結婚を迫られて島に拘束される。  同時期に、島と関わりがある赤い瞳の青年、赤松深夜美は、二ツ河島の信仰に興味を持ったと言って宇津僚家のハウスキーパーとして住み込みで働き始める。しかし彼も能力を秘めており、暗躍を始める。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

追放からはじまるもふもふスローライフ

小津カヲル
恋愛
旧題:冒険者パーティーを追放されたので、植物園でもふもふ養ってます 園芸店の店員をしていた植村花純は、ある日なぜか異世界にトリップ。助けてくれたのは、優しくカッコいいリヒトたち冒険者パーティー。彼らと旅をしながら魔法習得を試みたものの、結局一つの魔法しか習得できず、役立たず認定を受けてパーティーから追放されてしまう。 そんなとき、ちょっと強引に勧誘してきたのは植物園の主と名乗る男性レヴィ。彼に連れられていった植物園で、自分の特性をいかして働くことにするのだが、大事に育てている花畑を魔物に荒らされてしまう。けれども花を食べた魔物に驚くべき変化が現れて…… 花咲かじいさんならぬ、花咲か乙女(?)的主人公が、もふもふ&憧れのスローライフを守る物語。 書籍化予定につき、本編引き下げさせていただきました(2020.9.25)

Fragment-memory of future-Ⅱ

黒乃
ファンタジー
小説内容の無断転載・無断使用・自作発言厳禁 Repost is prohibited. 무단 전하 금지 禁止擅自转载 W主人公で繰り広げられる冒険譚のような、一昔前のRPGを彷彿させるようなストーリーになります。 バトル要素あり。BL要素あります。苦手な方はご注意を。 今作は前作『Fragment-memory of future-』の二部作目になります。 カクヨム・ノベルアップ+でも投稿しています Copyright 2019 黒乃 ****** 主人公のレイが女神の巫女として覚醒してから2年の月日が経った。 主人公のエイリークが仲間を取り戻してから2年の月日が経った。 平和かと思われていた世界。 しかし裏では確実に不穏な影が蠢いていた。 彼らに訪れる新たな脅威とは──? ──それは過去から未来へ紡ぐ物語

処理中です...