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第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました

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「 ルナマリアよ、 何をツンツンしているのじゃ?」
「 ご自分の胸に聞いてください!」

 リゼは 私の希望を潰してくれました。
 気高くて麗しいマチルダは、 あっという間に 魔物討伐を果たすこと でしょう。 そして、次の国へと旅立ってしまうはずです。

 リゼは、 眉根をピクリと動かしました。

「ほう? 貧乳で悪かったの!」

 今はそんな話ししてなかったんですよね。 私の方が頭に来ているのですよ。 どうして、怒っているんですか。
 リゼは口角を歪めて、悪魔のような印象を与えてきます。どうして、そんなに恐ろしい笑顔を浮かべることができるんですか!?

 十歳くらいの男の子と女の子に 見られていますよ。ほら、 お子様2人が近づいてきたじゃないですか。 自重しましょうね。
 
 

「 勇者のお姉ちゃん、 絵本を読んで」
「 昨日約束したでしょ」

 男の子はキラキラと目を輝かせ、 女の子は期待に胸を膨らませているようです。

「 でも、肝心の絵本はどこにあるの?」
「あっ、 持ってくるの忘れた・・・・・・」

 マチルダも絵本は持っていないようです。 男の子と女の子は今にも泣きそうになってしまいました。

「 では、この絵本を貸してやろう」

 図ったようなタイミングで、リゼが 一冊の絵本を取り出しました。
 
 リゼは 空間魔法の使い手なのでしょうか。

 マチルダはリゼから絵本を受け取り、 ページをめくって男の子と女の子に朗読してあげます。





 ある国のお姫様が、毎日のように町に遊びに出かけていました。 お姫様は町の子供達と 楽しく遊び、 美味しいお菓子をパクパクモグモグ。 幸せいっぱい。 お姫様はいつもニコニコしていました。
 お姫様は 町の子供達にバイバイすると、 決まってどこかの建物の裏に向かいます。



 お姫様は、 お菓子を捨てていました 。お姫様は 悪い子なのでしょうか。

 お姫様が立ち去った後は、 むしゃむしゃごっくん。 子豚たちが お菓子を食べ始めたではありませんか。
 そうです。お姫様は子豚たちのためにご飯を あげていたのです。
 
 子豚達は今日もすくすく元気です。 お姫様はそんな子豚たちを優しい笑顔で見守っていました。

 一匹の 子豚が女神様にお願いをしました。

「 女神様、僕を人間にしてください。 僕は人間になって、お姫様の役に立ちたいのです」
「 じゃあお前、俺様の暇つぶしの実験台なw」

  黒髪の男が現れて 、子豚を人間の姿に変えました。 けれどその姿は 人間どころか、 まるで魔物のようでした。
 子豚は黒髪の男を恨みました。 恨みに取り憑かれて、ますます醜い姿になってしまいます。

「 絶対に許さない!」

 子豚はーー 醜い豚の化け物と呼ばれるようになったオークは、 黒髪の男と戦いました。 しかし、あっさりと殺されてしまいます。

「 俺様に挑むなら、 せめて魔王になってからにしろよ。 それでも返り討ちだけどなw」

 オークの死を 知ったお姫様は、 黒髪の男を見つけて力の限り 精一杯の仕返しをしました。

「 この愚かなる罪人に女神の裁きを! 【 ホーリージャッジメント】!!」

 黒髪の男は力を失って地獄に落ちました。
 お姫様の心には虚しさだけが残ります。オークは 二度と戻ってこないからです。
 ポタポタと流れ落ちる涙。
 その時。
 女神の奇跡が起きました。 お姫様のお腹の中に、 赤ちゃんができました。 その生まれてくる赤ちゃんこそがオークの 生まれ変わりだったのです。 ふたりは仲良く暮らしましたとさ。





「 めでたしめでたし」

 マチルダが話を終えると、 男の子と女の子は感動して泣いていました。
 私も目頭が熱くなってきます。

「 大変有意義な時間であったが、そろそろ食事をせねばの」

 リゼは 頃合いを見て食事に誘ってきました。

「 デザートのザッハトルテが絶品らしいぞ。 存分に味わうがよい」

 私は甘いものに目がないんですよ。 いつもの私なら、 嬉しさのあまり舞い上がってしまいます。 でもアシュトンを増長させた 私への罰として、 甘味処を我慢することにしたんですよ。

「ん? 嬉しくないのかの?」
「・・・・・・いえ、 喜んで頂きますよ」

 私の決意は5秒で消え去りました。
 他人の 面倒を全面的に見れるはずがないし、 むしろ今まで苦労したぶん 自分にご褒美をあげてもバチは当たりませんよね。てへっ。
 





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