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コールオブホーリーガール
黒幕
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「さて、拷問をした二人から得た情報を整理すると、貴族街に住む蒐集者ダルハザ、という男がアイシャの父親を誘拐した犯人である可能性が高いわけだが」
ぼろぼろになったギルドの中、損傷の少ない会議室にてキリサメは魂の抜けたギルドマスターとの傍でそう情報を整理する。
意識もない状態で情報を吐き出した二人によると、二人を雇ったのは貴族街に住むダルハザという人物であり、骨董品や魔法具の蒐集が趣味な彼は、ウスの異本の捜索を続けているガイアスに目をつけ。二人に誘拐を依頼、その後ウスの異本の情報を吐かないガイアスにしびれを切らし娘のアイシャを狙ったのだという。
「ギルドを襲った理由については、ダルハザのガイアス誘拐がバレそうになったら、関係者を皆殺しにしろと命令されていたから……だそうだ」
「自分勝手」
不機嫌そうに鼻を鳴らすトンディに、クレールは落ち着けとトンディの頭を撫でる。
「貴族というと、それぞれ派閥がありますし……私も何度か耳にする機会があると思うのですが……ダルハザという方には聞き覚えはありませんね」
「まぁ、聖女さまが知らないのも無理はないだろう。 このダルハザという男は貧民街出身でな、莫大な富を得て最近貴族の仲間入りをした男だ」
「なるほど、貴族になるためには貴族の家に生まれるか、国と領主に莫大なお金を上納するかのどちらかしかありませんからね……しかし、戦争でどこも金欠だというのに。よくもまあ貴族になるだけの上納金を納められましたね」
感心するようなヤッコの言葉に、キリサメは「その通り」と頷く。
「聖女さまのいう通り、貧民街から貴族になるというのは異例も異例。このエリンディアナでは領主を、下手をすれば王都の貴族たちですらしのぐ財産を保有しているとの噂もある」
「なるほど、それだけお金をつめればあれだけの手練れを雇えるわけです」
「屋敷はエリンディアナの貴族街の最西端……トンディの分析通り、敷地のすぐそばには林檎の果樹園が隣接している」
「ビンゴ‼︎ そんじゃ早速突入して……」
飛び上がるように指を鳴らすクレール。
しかし、それをキリサメは首を振って静止する。
「まて、金持ちだと言っただろう。 庭の敷地には無数のゴーレム兵士に、ヘルハウンドドッグとどれもこれも凶悪な魔物ばかり。屋敷の中にどれほどの警備がいるかも分からない状況で正面突破は無謀にすぎる」
「じゃあどうするんだよ」
キリサメの言葉にクレールは口を尖らせてそう問いかけると。
「あ、そういえばダルハザって名前で思い出した」
先ほどまで魂が抜けたようになっていたギルドマスターは、何かを閃いたかのように急に声を上げる。
「ようやくお目覚めですかマスター。……それで、閃いたとは?」
「いやね、ダルハザって確か鉄の時代のレガシー集めが趣味みたいでさ。ウスの異本を探してるのもその一貫なんだーって話を思い出して」
「レガシー集めが趣味。なるほど……しかしそれがどうしたのですか?」
「いや、正面から攻めいるのは難しいかもしれないけど、鉄の時代の珍しいものを持って行ったら、案外簡単に招き入れてくれるかもしれないなーって」
ギルドマスターの言葉に、トンディとクレールは互いに顔を見合わせる。
歴史的に価値があり、鉄の時代のもの。
もしダルハザという男が、鉄の時代の遺物という視点でウスの異本を求めているのであるとすれば。
「クレール……」
そっとポーチから、クレールはノートを取り出す。
千年の歴史を超え健在する。
全てとはいえないが、鉄の時代の人間を意思を、言葉を記した遺物。
「これ、使えるかも……」
トンディはそう呟き、クレールも確信に近い何かを感じるのであった。
□
ぼろぼろになったギルドの中、損傷の少ない会議室にてキリサメは魂の抜けたギルドマスターとの傍でそう情報を整理する。
意識もない状態で情報を吐き出した二人によると、二人を雇ったのは貴族街に住むダルハザという人物であり、骨董品や魔法具の蒐集が趣味な彼は、ウスの異本の捜索を続けているガイアスに目をつけ。二人に誘拐を依頼、その後ウスの異本の情報を吐かないガイアスにしびれを切らし娘のアイシャを狙ったのだという。
「ギルドを襲った理由については、ダルハザのガイアス誘拐がバレそうになったら、関係者を皆殺しにしろと命令されていたから……だそうだ」
「自分勝手」
不機嫌そうに鼻を鳴らすトンディに、クレールは落ち着けとトンディの頭を撫でる。
「貴族というと、それぞれ派閥がありますし……私も何度か耳にする機会があると思うのですが……ダルハザという方には聞き覚えはありませんね」
「まぁ、聖女さまが知らないのも無理はないだろう。 このダルハザという男は貧民街出身でな、莫大な富を得て最近貴族の仲間入りをした男だ」
「なるほど、貴族になるためには貴族の家に生まれるか、国と領主に莫大なお金を上納するかのどちらかしかありませんからね……しかし、戦争でどこも金欠だというのに。よくもまあ貴族になるだけの上納金を納められましたね」
感心するようなヤッコの言葉に、キリサメは「その通り」と頷く。
「聖女さまのいう通り、貧民街から貴族になるというのは異例も異例。このエリンディアナでは領主を、下手をすれば王都の貴族たちですらしのぐ財産を保有しているとの噂もある」
「なるほど、それだけお金をつめればあれだけの手練れを雇えるわけです」
「屋敷はエリンディアナの貴族街の最西端……トンディの分析通り、敷地のすぐそばには林檎の果樹園が隣接している」
「ビンゴ‼︎ そんじゃ早速突入して……」
飛び上がるように指を鳴らすクレール。
しかし、それをキリサメは首を振って静止する。
「まて、金持ちだと言っただろう。 庭の敷地には無数のゴーレム兵士に、ヘルハウンドドッグとどれもこれも凶悪な魔物ばかり。屋敷の中にどれほどの警備がいるかも分からない状況で正面突破は無謀にすぎる」
「じゃあどうするんだよ」
キリサメの言葉にクレールは口を尖らせてそう問いかけると。
「あ、そういえばダルハザって名前で思い出した」
先ほどまで魂が抜けたようになっていたギルドマスターは、何かを閃いたかのように急に声を上げる。
「ようやくお目覚めですかマスター。……それで、閃いたとは?」
「いやね、ダルハザって確か鉄の時代のレガシー集めが趣味みたいでさ。ウスの異本を探してるのもその一貫なんだーって話を思い出して」
「レガシー集めが趣味。なるほど……しかしそれがどうしたのですか?」
「いや、正面から攻めいるのは難しいかもしれないけど、鉄の時代の珍しいものを持って行ったら、案外簡単に招き入れてくれるかもしれないなーって」
ギルドマスターの言葉に、トンディとクレールは互いに顔を見合わせる。
歴史的に価値があり、鉄の時代のもの。
もしダルハザという男が、鉄の時代の遺物という視点でウスの異本を求めているのであるとすれば。
「クレール……」
そっとポーチから、クレールはノートを取り出す。
千年の歴史を超え健在する。
全てとはいえないが、鉄の時代の人間を意思を、言葉を記した遺物。
「これ、使えるかも……」
トンディはそう呟き、クレールも確信に近い何かを感じるのであった。
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