上 下
36 / 55
コールオブホーリーガール

ヤッコが仲間になった

しおりを挟む
「うんうん、それじゃあ頑張ってくれたまえー」

「そっちは気楽でいいよなー」

「まぁまぁ、こっちでも出来るだけサポートはするからさぁ……あ、食べる?」
 
 カラカラと笑いながらワッフルを差し出してくるギルドマスター。
 
 その様子に「ほんとかぁ?」と呟きながらクレールはワッフルを受け取る。

「はむ……一緒に行動するなら、ヤッコのギルドカード発行しないとな……あれ時間かかるんだよなぁ」

「マゾ子がやるから尚更」

「いやいや、そこはちゃんとキリサメから預かっていますってお二人さん‼︎ 聖女ちゃんはいこれ、ギルドカードねー。 大事だから無くさないように」

 そういうとギルドマスターは胸元からカードを取り出すとヤッコへと渡す。

「あらあら、ギルドカードというのは初めて拝見しますが。 金色で随分と派手ですねぇ」

「ちょっ‼︎? あんたそれ、Sランクギルドカードだぞ‼︎? 普通初心者は銅色のDランクからスタートするもんだろ‼︎」

「固いこと気にしない気にしないー。聖女ちゃんの実力もちゃーんと考えた上でわたしてるから安心してって。 いや本当に。 ちみたちもDランククエストしか受けられなくなったら困るだろう? 私なりの気遣いだよ気遣い……わからないかなぁー?」

 偉そうにため息を漏らしながら語るアキ。
 
 しかしトンディは鼻をふんと鳴らすと。

「別に困らない。 困るのはそっちの方なんじゃないの? Sランククエスト押し付けられなくなるからね」

  そう鋭い言葉を投げつけると、一瞬アキは硬直をし。

「さーて、わたしはそろそろ帰らないと。 それじゃ、あとはよろしくねー」

 そそくさとワッフルを机の上に置いた後、回れ右をしてトンディの家をギルドマスターは後にした。

「……逃げた」

「都合が悪くなると逃げんだな」

「随分と、独特なお方でしたね」

「私たちもつい最近知り合ったんだけどね」

「しかし、あの場ではついお酒に流されちゃいましたが、本当にいいのですか? ギルドマスターさんはああ言って脅してきましたが、私からの申し出であればあなた方を咎めることはできませんし、やはりお断りした方が」

「もう別にいい。 一回ひろったら最後まで面倒を見る。一人も二人も似たようなもん」

「ふふっ。そうですか。 そんなに小さな体で、とても心が広いのですねトンちゃんは」

 嬉しそうに笑うと、ヤッコは優しくトンディの頭を撫でると「あら、もふもふ」と声を漏らした。

「んむーーー‼︎ 頭、撫でない‼︎」

 それに対し怒るように地団駄を踏んで抗議をするトンディだが、いつものようにその表情は嬉しそうに緩んでいる。

「あらあら可愛らしい。 お顔がほころんでますよ?」

「子供扱いしない‼︎  私、これでも18歳‼︎」

「え、うそ……私よりも年上‼︎?」

「ふふんっ‼︎ 私、一番お姉さん‼︎」

 ドヤッという音が背後で響きそうなほど自慢げに胸を張るトンディ。

「なんで、嬉しそうなんですか?」

「察してやってくれ」

 そんなトンディの様子に疑問符を浮かべるヤッコに、クレールはそう耳打ちをする。

 と。

 ゴーン……ゴーン。
 
 いつのまにか時間が経っていたのか、街に昼を告げる鐘の音が響き渡る。

「あ、もうこんな時間」

「どうする? 昨日のうちに準備は済ませてあるけど、今日はやめとくか?」

「ううん、ヤッコの力も見ておきたいし、行くつもり」

 クレールとトンディはそういうと、冒険用のバックパックを背負い準備を始める。
 
 その様子に一人ヤッコは首をかしげる。

「えと、あの。 行くとはどちらに? それにその大きなバックは一体何に?」

 大きな荷物を持つトンディに対する素朴な疑問。

 その質問に対しトンディはキョトンとした表情を向け。

「もちろん、冒険」

 そう当たり前のように呟いたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記

スィグトーネ
ファンタジー
 ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。  そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。  まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。  全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。  間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。 ※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています ※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。

拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~

荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。 ========================= <<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>> 参加時325位 → 現在5位! 応援よろしくお願いします!(´▽`) =========================  S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。  ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。  崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。  そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。  今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。  そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。  それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。  ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。  他サイトでも掲載しています。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~

一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。 彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。 全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。 「──イオを勧誘しにきたんだ」 ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。 ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。 そして心機一転。 「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」 今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。 これは、そんな英雄譚。

底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。 同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。 そこでウィルが悩みに悩んだ結果―― 自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。 この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。 【一話1000文字ほどで読めるようにしています】 召喚する話には、タイトルに☆が入っています。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...