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二人の冒険者
ギルドマスターの策謀
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「いやー、すごい威力だったねぇ」
魔王の討伐終了後、後片付けから逃げ出したアキは一足先にエリンディアナに向けて歩いていく。
半ば騙す形で魔王討伐に無理やりトンディとクレールを参加させた彼女であったが、期待以上の戦果に満足したようにワッフルを口に含む。
「しかし、よかったのですかマスター? 我々が証人になれば、我がギルドに勇者認定がなされる冒険者が現れることになるというのに……みすみす手柄を勇者に渡すような真似をして」
現在、この世界に存在する勇者は魔王コキュートスを打ち倒したグレイグただ一人。
田舎町ゆえに軽んじられてきたエリンディアナとて魔王討伐を……しかもたった二人で成し遂げたパーティーがいるとなれば世界からの注目も資金援助も破格の数字になることは間違いない。
だがアキはそれをせずに勇者たちが出してきた自分たちが魔王を討伐したという報告をだまって受け取ったのだ。
「いいのいいのー、今ここであの二人の存在を公表したら、勇者ちゃんたちが何してくるかわからないしねぇ。 それに、今公表なんてしたら二人は王都にとられてそれこそ詰みってやつさ。 今回は魔王討伐に一枚噛んでもらって次に繋げることが重要なのさ」
「……繋がっているのは首の皮一枚ですけれどね……ところで、こんなもの持ち帰ってどうするつもりですか? マスター」
「だって、あれが見つかっちゃったら勇者ちゃんの報告と大分食い違いが出てきちゃうだろ? なにせ彼らが鉄屑と切り捨てたはずの銃弾が突き刺さってるんだから」
やれやれと胃が痛そうな表情をするキリサメは、ふと背後に視線を向ける。
「ひ、ひええぇ、重い、重いですぅ‼︎」
背後にて荷台を引きながら、スイカほどの大きさの球体を運ぶマゾ子の姿。
その球体は鉱物のようなものでできており、突き刺さるようにオリハルコン製の銃弾が突き刺さっている。
「頑張れー、ミドリコー‼︎ あと20キロだー‼︎」
「ぴゃあああぁ‼︎ き、キリちゃん遠い、遠すぎるよおぉ‼︎ 手伝ってよー‼︎」
悲鳴をあげて助けを求めるマゾ子であるが、二人は当然無視をして会話を続ける。
「魔王の心臓……機能停止をしているようですが……まさかあれを撃ち抜いて停止させるとは」
「うん、しかも1キロメートルも離れた場所だ……どんな大魔法であってもこいつには傷一つつけることはできないっていうのに、バッチリめり込んでるもんね。 どれだけのスピードで撃ち抜いたんだか想像もできないよ」
「ええ、膨大な魔力は撃ち抜かれた時の爆発によって消えてしまっています。 何に使う予定なのですか?」
「んー、そうさねぇ。 漬物石につかったらいい感じかも」
「マスター?」
「冗談だって……こいつはうちのジョーカーになるんだよ。今のうちに勇者様にはたっぷり美味しい思いをしてもらおうじゃないさ」
ふと楽しげに魔王の心臓を見やるアキ。
その笑顔は悪いことを考えているのが丸わかりなほど悪辣に歪んでおり。
キリサメは理解をしたというように続けて表情を緩める。
「なるほど、敵に塩を送るという言葉がありますが……」
「あぁ、私の塩は劇薬入り、というわけさ」
◇
魔王の討伐終了後、後片付けから逃げ出したアキは一足先にエリンディアナに向けて歩いていく。
半ば騙す形で魔王討伐に無理やりトンディとクレールを参加させた彼女であったが、期待以上の戦果に満足したようにワッフルを口に含む。
「しかし、よかったのですかマスター? 我々が証人になれば、我がギルドに勇者認定がなされる冒険者が現れることになるというのに……みすみす手柄を勇者に渡すような真似をして」
現在、この世界に存在する勇者は魔王コキュートスを打ち倒したグレイグただ一人。
田舎町ゆえに軽んじられてきたエリンディアナとて魔王討伐を……しかもたった二人で成し遂げたパーティーがいるとなれば世界からの注目も資金援助も破格の数字になることは間違いない。
だがアキはそれをせずに勇者たちが出してきた自分たちが魔王を討伐したという報告をだまって受け取ったのだ。
「いいのいいのー、今ここであの二人の存在を公表したら、勇者ちゃんたちが何してくるかわからないしねぇ。 それに、今公表なんてしたら二人は王都にとられてそれこそ詰みってやつさ。 今回は魔王討伐に一枚噛んでもらって次に繋げることが重要なのさ」
「……繋がっているのは首の皮一枚ですけれどね……ところで、こんなもの持ち帰ってどうするつもりですか? マスター」
「だって、あれが見つかっちゃったら勇者ちゃんの報告と大分食い違いが出てきちゃうだろ? なにせ彼らが鉄屑と切り捨てたはずの銃弾が突き刺さってるんだから」
やれやれと胃が痛そうな表情をするキリサメは、ふと背後に視線を向ける。
「ひ、ひええぇ、重い、重いですぅ‼︎」
背後にて荷台を引きながら、スイカほどの大きさの球体を運ぶマゾ子の姿。
その球体は鉱物のようなものでできており、突き刺さるようにオリハルコン製の銃弾が突き刺さっている。
「頑張れー、ミドリコー‼︎ あと20キロだー‼︎」
「ぴゃあああぁ‼︎ き、キリちゃん遠い、遠すぎるよおぉ‼︎ 手伝ってよー‼︎」
悲鳴をあげて助けを求めるマゾ子であるが、二人は当然無視をして会話を続ける。
「魔王の心臓……機能停止をしているようですが……まさかあれを撃ち抜いて停止させるとは」
「うん、しかも1キロメートルも離れた場所だ……どんな大魔法であってもこいつには傷一つつけることはできないっていうのに、バッチリめり込んでるもんね。 どれだけのスピードで撃ち抜いたんだか想像もできないよ」
「ええ、膨大な魔力は撃ち抜かれた時の爆発によって消えてしまっています。 何に使う予定なのですか?」
「んー、そうさねぇ。 漬物石につかったらいい感じかも」
「マスター?」
「冗談だって……こいつはうちのジョーカーになるんだよ。今のうちに勇者様にはたっぷり美味しい思いをしてもらおうじゃないさ」
ふと楽しげに魔王の心臓を見やるアキ。
その笑顔は悪いことを考えているのが丸わかりなほど悪辣に歪んでおり。
キリサメは理解をしたというように続けて表情を緩める。
「なるほど、敵に塩を送るという言葉がありますが……」
「あぁ、私の塩は劇薬入り、というわけさ」
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