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二人の冒険者

ならば断る

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「ぎ、ギルドマスター?」

  そんなまさかとクレールはこぼしかけるが、よく見れば確かにギルドマスターを証明する証。マスターバッジがーーー花形のバッジはどう見てもワッペンにしかみえないがーーーキラリと胸に光っている。
 
  突然現れたギルドマスターにクレールとトンディは混乱するように互いの顔を見合わせ。

  アキは一人その反応を楽しむようにカラカラと笑う。

「はははー、やっぱりこの反応だ。 みんな私のことを見ると同じ反応するんだけど、なんでかな?」

「それは、マスターの外見に問題があるのかと。 子供にしかみえませんよ、それ」

「まじかー。 若く見られてラッキーだな私」

「いや、もう少し年齢相応に見えたほうがよろしいかと。 仕事にいつも支障をきたしてるじゃないですか。 せめてそのダボダボの服をやめてください」

「これがいいんだよこれがー。 わかってないなーキリサメは」

「あんたのせいでこちとら三十路に見られるんだよ‼︎? この前なんて、出張先のイケメンレンジャーに「子連れでギルドの仕事なんて大変ですね」なんて言われて、あんたの方が五つも年上なのに、この差はなんなんですか‼︎」

  きぃきぃと騒ぎ立てるキリサメに、カラカラと笑いながら受け流すギルドマスター。
 
「やかましい……」

  そんな二人のやりとりに、寝起きであることもあいまってかトンディは隠すことなく不機嫌そうにそうこぼす。

「あー……ええとそれで、漫才やってるところ悪いんだけど、ギルドマスターがなんでうちの家に」

「あぁそうそう、ちょっとこの前のお礼にね。 うちのマゾ子がやらかした失態の尻拭いしてくれたでしょ」

「お礼なら報酬もらった。 他に何かあるんじゃないの?」

  じとっとした瞳でマスターを睨むトンディ。

   珍しく警戒心をむき出しにするその姿勢に、ぺちんとアキは自らのデコを叩く。

「あちゃー鋭いねぇ。 はむ、せっかくお土産食べながらゆっくり話しをしようと思ってたんだけど」

「マスター、そのお土産を摘まないでください」

「いっぱいあるから気にしない気にしない。それに、お菓子食べながらゆっくりって雰囲気じゃなさそうだしねぇ。 さて、まぁうさ耳ちゃんの言う通り実はギルド本部から頼みがあってさぁ、ひとつ依頼を受けて欲しいんだよねぇ? 冒険者だったら悪い話じゃないと思うよー?」

「依頼? 私たちに?」

「うんうん‼︎ じゃ、キリサメ後の説明は任せた‼︎」

「そこまで言って私が後説明するんですね、まぁいいですけれど。 こほん、今回お前たちに依頼をしたいのはある魔物の討伐補助だ。重要な任務なためギルドマスター自ら直接依頼に来た」

「討伐補助?」

「あぁ、交易路に魔物が出たことは聞いているか?」

「うん、道が塞がっちゃったって言うのは聞いてる」

「その魔物が厄介なやつでな、並みの冒険者では太刀打ちできない強敵のために、各ギルドから冒険者をギルドマスターが推薦して魔物の討伐に協力するように要請があった。急な申し出だが、色々と協議をした結果我々は先日のアラクネ討伐の功績を評価して二人をエリンディアナ最優の冒険者として討伐依頼に推薦しようと思う。映えある本部からの依頼だし悪い話じゃない、受けてくれるな?」

  にこりと笑みを向けるキリサメの笑顔。その笑顔は形式的なものであり、断られるという考えが寸分たりとも存在していない。

「なるほど……支部長推薦ということは、今後私たちの冒険者活動にも有益になる。 そういうこと?」

「もちろん、そういうことさ。 悪い話じゃないだろう?」

  にやりと笑うキリサメ……その言葉にトンディは「なるほど」と呟くと。


「ならば断る」


「……へ?」

  トンディの言葉にキリサメはぽかんとした表情で間の抜けた声を漏らした。
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