上 下
12 / 55
二人の冒険者

息を殺す森

しおりを挟む
「とかなんとか言って安請け合いをしたけど。 山、真っ暗だな」

  エリンディアナの街の外壁を抜けた先にある小高い山は、標高はそんなに高くはないものの、鬱蒼と生い茂る木々のせいで夜になれば月明かりさえも閉ざし完全なる闇を作り出す。
 
  背の高い木々は、一つ一つが巨人の影法師のようで、手に持ったランタンの明かりだけが心細くクレールとトンディの足元を照らす。
 
「問題ない……山は得意」

  しかし、そんな暗闇の中でもトンディは昼間のように森の奥深くまで進んでいく。

  もとより森とともに生きるラヴィーナ族。しかも暗闇の中で罠を解除できるほどの鋭い感覚を持った彼女にとっては、この程度の暗闇は障害にもなり得ないようだ。

「頼りにしてるよ」
  
  そんなトンディに対し、クレールはそう零すと、トンディは「任せて」と言ってさらに奥へと進んでいく。

  森は奥へ進めば進むほど静けさを増す。

  聞こえるとすれば、湿った土を踏む音と、クレールが踏んだ木の枝が折れるぱきりという音くらい。
 
  お互いの心臓の音すらも聞こえてきそうな静けさに。

  トンディは緊張するように、息を飲んだ。

「……すごい静か。 森が息を殺してる」

「どういうこと?」

「動物も、植物も、森が魔物を恐れて隠れてる……しかもここにいる魔物、それを利用して静寂に溶け込んでる。 強力で……それでいて頭もいい」

「なるほど……そうなると、クエストにも書いてあった通り、魔物がいるのは分かるけど正体は掴めないってことか?」

「……普通の人ならね……だけど、ここまで綺麗に隠れられる魔物は限られてくるから。あとは。 じゃん」

  そういうとトンディは、バッグの中から瓶を取り出しクレールへと見せつける。

  瓶の中には、薄緑色に光る虫のようなものが詰められている。

「これって」

「タンポポの綿毛に、ヒカリダケのエキス塗りつけたやつ。前にクレールがくれた」

「あぁ、トンディが蛍が見たいって言うから代わりに作ったやつか……でもなんで今そんなもの? 確かに光ってるけど、あたりを照らす程じゃ……」

「まぁ見てて」

  そう言うとトンディは瓶から手のひらにタンポポの綿毛を取り出すと。
 
「ふーーー‼︎」

  上空に向かって勢いよく息を吹きかける。
  
  キラキラと蛍のように空を舞うタンポポの綿毛。
 
  その姿はまるで妖精がワルツを踊っているようでもあり、クレールはその様子を言われるがまま見守っていると。

  ……不意に、空を舞っていた光が動きを止める。

  落下したわけではない。 

  まるで空間に固定されたかのように……縫い付けられたかのように不自然に動きを止めた光る綿毛たち。

「あれ? なんで綿毛がとま……────え?」

  不思議な光景にクレールは思わずランタンを上へとかざし……息を呑む。



「やっぱり、アラクネ……」


  淡いランタンの光……それが映し出したのは歪に歪んだ巨大な蜘蛛の顔。

  その頭部に光る無数の赤い瞳が、音もなく値踏みをするようにじぃっとクレールを見つめていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?

サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに―― ※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。

処理中です...