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和解
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「え?サイモン⁉︎」
「おぉ、お若いの……無事で何よりじゃよ」
「え? どうしてサイモンがここに?」
「私が呼んだのよ。あれだけ不自然にボレアスの尋問をメルトラと代わったんだもの。何かしてくるとは思ってたからね」
「セレナが? どうして?」
「決まってるでしょ……仲間だからよ」
「???????」
突然のサイモンの登場に、ただでさえ困惑をしているのに、セレナはまるでサイモンとは旧知の仲かのように振る舞っており、あまつさえ仲間とまで言い出した。
確かに、お祭りの準備で王様の手伝いはしていたけれども……そんな深い関係にはなっていないはずなのに……。
「……その反応、サイモン、貴方もしかして。フリークに話してないの?」
「いやぁ、まぁ。あんなことがあった手前気まずくてのぉ」
「気まずい? 気まずいってどういうこと?」
話が飲み込めずに、僕は混乱しながらもサイモンにそう問いかけると。
サイモンはバツが悪そうに頭を掻くと。
そっと指にはめた指輪を外す。
と。
「久しぶり……じゃのぉフリーク」
そこには、僕を救ってくれた神父(サイモン)の姿は消え失せ、代わりに僕を追放した仲間(ミノス)が立っていた。
「ど、どういうこと?」
「よく旅籠に行くために使ってた、顔を変える指輪じゃよ。銀の風をやめた時に、餞別でボレアスにもらったものじゃ」
「もしかして……じゃあ、あの時、僕を助けてくれたのって」
「あぁ……セレナのためとはいえ、お前さんを深く傷つけた罪滅ぼしがしたくてな。ただ、真実を話すわけにはいかなかったんで、こうして顔を変えてお前さんに接触をしたんじゃ……」
「呆れた、偽名も顔を変えたのも……仕事のためと言っておいてただ気まずかっただけだったのね? 本当……なんで私の周りにはこんな不器用な人間しかいないのかしら」
「……それに関してはセレナにだけは言われたくないんじゃが」
「…………………………………………そうね」
セレナの肯定は、とてもとても小さかった。
「そっか……僕が落ち込んで自暴自棄にならないように、ちゃんと見守ってくれていたんだね」
「理由があったとはいえ、お前さんを一方的に傷つけたのは事実じゃ。だからせめて、お前さんの新しい人生を陰ながら支えてやる……それがワシなりの贖罪のつもりだったんじゃが……バレちゃったならしょうがないのぉ……」
バツが悪そうにサイモンはそう言うと、僕に向かって頭を下げた。
「み、ミノス?」
「くだらない嘘でお前さんを傷つけたな……すまなかった。あの夜、お前さんを追放した時の言葉に、真実はひとつもない。お前さんは大切な仲間で、かけがえのない友人じゃ……今更許してくれとは言わん……じゃが、この偽りない気持ちがワシの本心じゃと言うことは信じてほしい」
その言葉に、僕は救われたような気がした。
追放をされた理由をセレナに聞いた時、セレナは他のみんなは自分に口裏を合わせてくれただけだと言っていた。
もちろん僕はその言葉を信じている。
けど、心のどこか奥、ほんの少しだけれども、それがセレナのついた優しい嘘だったらという考えが捨てきれずにいた。
だから、ミノスの言葉を聞いて、本心を聞いて……僕は許すとか許さないとかじゃなく。
ただただ胸の奥の氷が溶けたように、安心をした。
大切な友達は、僕のために悩んでくれていた……落ち込んでいる僕を励ましてくれていた。
そのことがただただ嬉しくて、気がつけば僕は涙がこぼれていた。
「……そっか、よかった……僕、ずっとみんなと友達だったんだね」
「……あぁ。本当にすまなかった……ワシは、ワシは……」
「うん……大丈夫。ずっと見守っててくれてありがとう。新しい人生を、僕に生きることを選ばせてくれてありがとう」
泣きじゃくる僕に、気がつけば髭までびしょびしょになるほどの大号泣を始めるミノス。
そんな恩人を僕は抱きしめる。
サイモンとしてではなく、親友ミノスとの再会を心から喜ぶために。
だが。
「はぁ……はぁ……はぁ……何、勝った気でいるんですか」
感動の再会を噛み締めるのも束の間。
ミノスにより壁に叩きつけられていたメルトラが意識を戻したのか、よろよろと立ち上がったのだ。
だが、その姿はもはや満身創痍と言った状況であり、魔法を行使するための杖すらも失っている。
「観念しなさいメルトラ……杖を失った貴方に勝ち目は髪の毛一本ぶんほども残されていないのだから……大人しく捕まると言うなら、今なら半殺しで済ませてあげるわ」
もはや勝敗は歴然であり、セレナは勝ち誇ったように剣の鋒をメルトラへと向けるが。
「私は負けてない……まあ、まだまだまだまだ勝てる、勝てる勝てる勝てる勝てる勝て……て、かか、てかがかかかか⁉︎ う……おええぼえええええええぇ⁉︎‼︎」
「‼︎‼︎」
何かが壊れたような声を上げながら、メルトラは痙攣を始め、口から真っ黒な煙のようなものを吐き出し始める。
「メルトラ‼︎ くっ、何が、何がどーなってやがんですか‼︎あいつに、あいつに何が起こったんですか‼︎」
拘束をされた状態でボレアスはもがき、メルトラの異変を確認しようとするが、メルトラは黒い塊を吐き出し終わると、まるで糸が切れた人形のように地面へと倒れ伏し。
【ぎゃあああああああああああああああああああああ‼︎】
カラスの絶叫のような音が響き渡り、同時に封印が施されたクリスタルが音を立てて砕け散り始める。
一瞬の静寂……まるで全ての音が暗闇に吸い込まれたかのように魔王の魂は魔力を帯びて形を成していき。
───ドクン───と。
結界の中にも聴こえるほどの鼓動が洞窟の中に響く。
────魔王が復活する。
「おぉ、お若いの……無事で何よりじゃよ」
「え? どうしてサイモンがここに?」
「私が呼んだのよ。あれだけ不自然にボレアスの尋問をメルトラと代わったんだもの。何かしてくるとは思ってたからね」
「セレナが? どうして?」
「決まってるでしょ……仲間だからよ」
「???????」
突然のサイモンの登場に、ただでさえ困惑をしているのに、セレナはまるでサイモンとは旧知の仲かのように振る舞っており、あまつさえ仲間とまで言い出した。
確かに、お祭りの準備で王様の手伝いはしていたけれども……そんな深い関係にはなっていないはずなのに……。
「……その反応、サイモン、貴方もしかして。フリークに話してないの?」
「いやぁ、まぁ。あんなことがあった手前気まずくてのぉ」
「気まずい? 気まずいってどういうこと?」
話が飲み込めずに、僕は混乱しながらもサイモンにそう問いかけると。
サイモンはバツが悪そうに頭を掻くと。
そっと指にはめた指輪を外す。
と。
「久しぶり……じゃのぉフリーク」
そこには、僕を救ってくれた神父(サイモン)の姿は消え失せ、代わりに僕を追放した仲間(ミノス)が立っていた。
「ど、どういうこと?」
「よく旅籠に行くために使ってた、顔を変える指輪じゃよ。銀の風をやめた時に、餞別でボレアスにもらったものじゃ」
「もしかして……じゃあ、あの時、僕を助けてくれたのって」
「あぁ……セレナのためとはいえ、お前さんを深く傷つけた罪滅ぼしがしたくてな。ただ、真実を話すわけにはいかなかったんで、こうして顔を変えてお前さんに接触をしたんじゃ……」
「呆れた、偽名も顔を変えたのも……仕事のためと言っておいてただ気まずかっただけだったのね? 本当……なんで私の周りにはこんな不器用な人間しかいないのかしら」
「……それに関してはセレナにだけは言われたくないんじゃが」
「…………………………………………そうね」
セレナの肯定は、とてもとても小さかった。
「そっか……僕が落ち込んで自暴自棄にならないように、ちゃんと見守ってくれていたんだね」
「理由があったとはいえ、お前さんを一方的に傷つけたのは事実じゃ。だからせめて、お前さんの新しい人生を陰ながら支えてやる……それがワシなりの贖罪のつもりだったんじゃが……バレちゃったならしょうがないのぉ……」
バツが悪そうにサイモンはそう言うと、僕に向かって頭を下げた。
「み、ミノス?」
「くだらない嘘でお前さんを傷つけたな……すまなかった。あの夜、お前さんを追放した時の言葉に、真実はひとつもない。お前さんは大切な仲間で、かけがえのない友人じゃ……今更許してくれとは言わん……じゃが、この偽りない気持ちがワシの本心じゃと言うことは信じてほしい」
その言葉に、僕は救われたような気がした。
追放をされた理由をセレナに聞いた時、セレナは他のみんなは自分に口裏を合わせてくれただけだと言っていた。
もちろん僕はその言葉を信じている。
けど、心のどこか奥、ほんの少しだけれども、それがセレナのついた優しい嘘だったらという考えが捨てきれずにいた。
だから、ミノスの言葉を聞いて、本心を聞いて……僕は許すとか許さないとかじゃなく。
ただただ胸の奥の氷が溶けたように、安心をした。
大切な友達は、僕のために悩んでくれていた……落ち込んでいる僕を励ましてくれていた。
そのことがただただ嬉しくて、気がつけば僕は涙がこぼれていた。
「……そっか、よかった……僕、ずっとみんなと友達だったんだね」
「……あぁ。本当にすまなかった……ワシは、ワシは……」
「うん……大丈夫。ずっと見守っててくれてありがとう。新しい人生を、僕に生きることを選ばせてくれてありがとう」
泣きじゃくる僕に、気がつけば髭までびしょびしょになるほどの大号泣を始めるミノス。
そんな恩人を僕は抱きしめる。
サイモンとしてではなく、親友ミノスとの再会を心から喜ぶために。
だが。
「はぁ……はぁ……はぁ……何、勝った気でいるんですか」
感動の再会を噛み締めるのも束の間。
ミノスにより壁に叩きつけられていたメルトラが意識を戻したのか、よろよろと立ち上がったのだ。
だが、その姿はもはや満身創痍と言った状況であり、魔法を行使するための杖すらも失っている。
「観念しなさいメルトラ……杖を失った貴方に勝ち目は髪の毛一本ぶんほども残されていないのだから……大人しく捕まると言うなら、今なら半殺しで済ませてあげるわ」
もはや勝敗は歴然であり、セレナは勝ち誇ったように剣の鋒をメルトラへと向けるが。
「私は負けてない……まあ、まだまだまだまだ勝てる、勝てる勝てる勝てる勝てる勝て……て、かか、てかがかかかか⁉︎ う……おええぼえええええええぇ⁉︎‼︎」
「‼︎‼︎」
何かが壊れたような声を上げながら、メルトラは痙攣を始め、口から真っ黒な煙のようなものを吐き出し始める。
「メルトラ‼︎ くっ、何が、何がどーなってやがんですか‼︎あいつに、あいつに何が起こったんですか‼︎」
拘束をされた状態でボレアスはもがき、メルトラの異変を確認しようとするが、メルトラは黒い塊を吐き出し終わると、まるで糸が切れた人形のように地面へと倒れ伏し。
【ぎゃあああああああああああああああああああああ‼︎】
カラスの絶叫のような音が響き渡り、同時に封印が施されたクリスタルが音を立てて砕け散り始める。
一瞬の静寂……まるで全ての音が暗闇に吸い込まれたかのように魔王の魂は魔力を帯びて形を成していき。
───ドクン───と。
結界の中にも聴こえるほどの鼓動が洞窟の中に響く。
────魔王が復活する。
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