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フリーク、王宮へ
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ボレアスが依頼して来たのは何てことない仕事で、王都の詳細な地図の作成と、宮廷内部の見取り図を作ってほしいという内容であった。
何でそんなものが必要なのかは疑問であったが。
ボレアス曰く、正確な地図があると騎士団の巡回や城の警備に役立つらしく、大した内容でもなかったため僕は二つ返事でその依頼を承諾した。
そんなことでセレナに会えるようになるなら安いものだ。
その時僕はそう思ったのだが、ギルドハウスに戻ってルードにこの話をすると、ルードは右の眉をまつ毛とくっつきそうになるほど顰めた。
「どっからどう聞いても胡散臭い話だぞ相棒……俺を通さないようにって足早に話を進めてきたのも怪しさぷんぷんじゃねえか。なぁんでそんな話受けちまったんだ?」
呆れたようなルードのセリフに僕は少し考えてみるが。
「なんでって、セレナに会いたいから」
上手い言葉を思いつかなかったので素直にそう告白をする。
「はぁ。お熱いことで結構だがよ、正直俺は反対だね……女をダシに要求を飲ませようって考え方が俺としては特に気に入らねえ。分かってんのか相棒……また捨てられて辛い思いするかもしんねーんだぞ?」
心配するようにそう呟くルードに、僕は一瞬、パーティーを追放された時の光景を思い出す。
だけど。
「その時は、いい加減に懲りてまた一からやり直すさ。筆一本でここまで来れたんだもの、いくらだってやり直せるよ。おまけに今はルーディバイスっていう相棒がいる。怖いものなんてあるもんか」
もちろん強がりだ。
実際にそうなったら落ち込むだろうし、子供みたいに泣きじゃくるだろう。
でも、前みたいにおしまいだなんてもうきっと思わない。
だって僕はもう、自分のすごいところを見つけたんだから。
そう思いを込めて僕はルードにそう返すと。
ルードは一瞬驚いたような表情を見せた後、優しく笑ってくれた。
「それもそうか……わかった!もうこれ以上は何も言わねえさ相棒。ちゃっちゃとあのおっかねえ女を口説き落としちまえ!」
「く、口説くわけじゃないけど……その、ごめんねルード……多分一緒に仕事はできなくなるかもだけど」
「なんで謝るんだよ相棒。元々は、絵を描いてほしいってわがままをずーっと聞いてもらってたのはこっちなんだぜ?」
「あ、そっか……」
ルードの言う通り。僕は今日までルードの頼みを聞いてきただけにすぎなかった。
楽しすぎてそんなことすっかり忘れちゃっていたが。
思えば今まで、僕のやりたいことをルードはいつだってやらせてくれた。
「あぁそうさ。だから俺のことなんざ気にせずやりたいことをやればいいんだ。友達として心配はするがよ、男が振り出しに戻る覚悟で挑もうってんだ……それなら親友の俺は応援してやるのが正解だろ?」
満面の笑みで僕を見つめるルード。その表情にはぼくでもわかるほど寂しさが滲み出ていたが、ルードは決して引き止めようなんてしなかった。
僕は改めて、僕の一番の幸運は彼と出会えたことなのだと理解する。
「……ありがとうルード。信じてくれて」
「当たり前だろ? 親友なんだからよ」
そう言ってルードは僕に手を差し伸べ。
何も言わずに僕はその手を取って固く握手を交わす。
そこにある確かな絆は決して解けることはない。
そんな確信めいたものをお互い確認したのち、僕達はこうして袂を別ったのであった。
何でそんなものが必要なのかは疑問であったが。
ボレアス曰く、正確な地図があると騎士団の巡回や城の警備に役立つらしく、大した内容でもなかったため僕は二つ返事でその依頼を承諾した。
そんなことでセレナに会えるようになるなら安いものだ。
その時僕はそう思ったのだが、ギルドハウスに戻ってルードにこの話をすると、ルードは右の眉をまつ毛とくっつきそうになるほど顰めた。
「どっからどう聞いても胡散臭い話だぞ相棒……俺を通さないようにって足早に話を進めてきたのも怪しさぷんぷんじゃねえか。なぁんでそんな話受けちまったんだ?」
呆れたようなルードのセリフに僕は少し考えてみるが。
「なんでって、セレナに会いたいから」
上手い言葉を思いつかなかったので素直にそう告白をする。
「はぁ。お熱いことで結構だがよ、正直俺は反対だね……女をダシに要求を飲ませようって考え方が俺としては特に気に入らねえ。分かってんのか相棒……また捨てられて辛い思いするかもしんねーんだぞ?」
心配するようにそう呟くルードに、僕は一瞬、パーティーを追放された時の光景を思い出す。
だけど。
「その時は、いい加減に懲りてまた一からやり直すさ。筆一本でここまで来れたんだもの、いくらだってやり直せるよ。おまけに今はルーディバイスっていう相棒がいる。怖いものなんてあるもんか」
もちろん強がりだ。
実際にそうなったら落ち込むだろうし、子供みたいに泣きじゃくるだろう。
でも、前みたいにおしまいだなんてもうきっと思わない。
だって僕はもう、自分のすごいところを見つけたんだから。
そう思いを込めて僕はルードにそう返すと。
ルードは一瞬驚いたような表情を見せた後、優しく笑ってくれた。
「それもそうか……わかった!もうこれ以上は何も言わねえさ相棒。ちゃっちゃとあのおっかねえ女を口説き落としちまえ!」
「く、口説くわけじゃないけど……その、ごめんねルード……多分一緒に仕事はできなくなるかもだけど」
「なんで謝るんだよ相棒。元々は、絵を描いてほしいってわがままをずーっと聞いてもらってたのはこっちなんだぜ?」
「あ、そっか……」
ルードの言う通り。僕は今日までルードの頼みを聞いてきただけにすぎなかった。
楽しすぎてそんなことすっかり忘れちゃっていたが。
思えば今まで、僕のやりたいことをルードはいつだってやらせてくれた。
「あぁそうさ。だから俺のことなんざ気にせずやりたいことをやればいいんだ。友達として心配はするがよ、男が振り出しに戻る覚悟で挑もうってんだ……それなら親友の俺は応援してやるのが正解だろ?」
満面の笑みで僕を見つめるルード。その表情にはぼくでもわかるほど寂しさが滲み出ていたが、ルードは決して引き止めようなんてしなかった。
僕は改めて、僕の一番の幸運は彼と出会えたことなのだと理解する。
「……ありがとうルード。信じてくれて」
「当たり前だろ? 親友なんだからよ」
そう言ってルードは僕に手を差し伸べ。
何も言わずに僕はその手を取って固く握手を交わす。
そこにある確かな絆は決して解けることはない。
そんな確信めいたものをお互い確認したのち、僕達はこうして袂を別ったのであった。
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