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マッスル兄貴
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「き、金髪ぅ……妾あれ怖い」
マオは怯え、フレンの後ろに隠れるようにして震えている。
正直できることなら僕も姉ちゃんの後ろに隠れようとしたが、すでに姉ちゃんが僕の後ろに隠れていた。
「姉ちゃん……顔馴染みって言ってたけれど」
「アンネ……まさかあんたにもこんな趣味が」
フレンと共に、白い視線を姉ちゃんに向けると。
「ごめんねユウ君、私うっかり場所を間違えちゃったみたい……あはは、似てる建物だから間違えちゃった、と言うより修練場もう潰れちゃったのかも、残念だなー」
冷静に、かつ早口で扉を閉めて帰ろうとする姉ちゃん。
しかし。
「おやぁ? そこにいるのは、アーーーーーンネじゃなーいかね‼︎ 久しぶりだYO‼︎」
「やばっ、気づかれた……」
「姉ちゃん、めちゃくちゃ名前呼んでるけど……というかいま気づかれたって言ったよね」
「ききき、聞き間違いじゃないかなユウ君‼︎? わ、私あんな筋肉もりもりマッチョマンの知り合いなんて……」
「おーーい‼︎ アンネくーーん‼︎ アンネ、ファタ、モルガナくーーん‼︎ HAHAHA、聞こえてるんだろー?」
「めちゃくちゃフルネーム呼んでるけれど」
「~~~~~~‼︎?」
鞭で叩かれながらも、にこやかな笑顔でこちらに手を振る男はとても親しげだ。
黒光りする頭と真白な歯……そしてもっこり。
「……姉ちゃん、まさかああいうのが好み……」
「ちちちち違うから‼︎? 私はユウ君一筋だし……そりゃ筋肉は嫌いじゃないけれど、あんな変なプレイをする人は全然好みなんかじゃ……」
「どうしたんだYOアンネ君‼︎ もしかして久しぶりの再会で恥ずかしがってるのかなー? どうだい、昔みたいにまた、一発ヤって行かないかーーい?」
「一発……ヤる?」
「……アンネ、妾えっちなのはいけないと思うのじゃ」
マオの言葉が追い討ちとなり視界が歪む。
信じていた姉がまさかあんな黒光りに……死にたい。
「いやああぁ‼︎? ちちち違うからユウ君‼︎ 本当に、本当にそんなんじゃないからあぁ‼︎」
「アンネ君―‼︎ また一緒に大胸筋をプルプル……」
「っもう、余計なこと言うなこの筋肉だるまーー‼︎」
悲鳴に近い声を上げながら、姉ちゃんは赤色の魔法陣を展開する。
「ちょっ‼︎? アンネ、お主それ室内で打つような魔法じゃ……」
高度な魔術式だったのだろう。
マオは慌てて姉ちゃんの魔法行使を止めようとするが。
「問答無用‼︎筋繊維ひとつ残らず灰塵と化せ‼︎『エクステッド・ファイヤーボール!』」
それよりも早く詠唱を終えた姉ちゃんは、男目掛けて巨大な火の玉を発射する。
「ちょおおぉ‼︎? 姉ちゃん‼︎」
巨大な火球は人間一人は軽く包み込めそうなほど巨大であり、破裂をすればこの空間内の人間全てを巻き込んで死滅させられるだけの大魔法。
そんな魔法がまっすぐに一人の男に向けられて走る……だが。
「ふっふふふ‼︎ 相変わらずいいもの持ってるね‼︎ だが、『モストンマスキュラー‼︎』」
男はその巨大な火球を回避するでも防ぐでもなく……その腹筋で正面から受け止める。
炎により照らされ、さらなる輝きを見せる筋肉……そして強調される腹筋。
「な、なんだってんだよあの大根すりおろせそうな腹筋は‼︎?」
「何個じゃ、一体何個あるのじゃあの腹筋‼︎」
姉ちゃんの一撃を真正面から受けてもなお無傷。
しかも苦しむどころか漢は爽やかな笑顔をたたえている。
「はっはっは、さすがだねアンネ……純度の高い魔力行使、仕上がってるNE‼︎」
その姿はまさに、マッチョだった。
「はぁ……はぁ……もう、なんで貴方がここにいるのよ」
「いやぁ本国より要請で魔王軍幹部を追ってここまできたんだが、ぱったりと消息が途絶えてしまってね。捜索がてら近くに寄ったからついでに修練場の視察も兼ねて足を運んだというわけSA‼︎」
「何て最悪のタイミングなのよ……知ってたらこなかったのに~」
珍しく悔しそうな表情を見せる姉ちゃんに僕は目を白黒させながらも、黒光りするマッスルに僕は思わず声をかける。
「えと……貴方は?」
「おや、もしかして君がユウ君かな?」
「そう、ですけれど」
「おぉ、ナイストゥミーチュー‼︎ 話はお姉さんからYO―――く聞いてるYO。……ふむ、アンネ君の話よりも随分と逞しいね。もっとプリティなベイビーを想像していたんだが……風が吹いただけで折れて死んでしまいそうで心配だとかなんとか」
いったいどんな紹介してるんだよ姉ちゃん……僕は藁か!?
「逞しくないもん‼︎ ユウ君はいつだってお人形さんみたいにかわいいんだから‼︎」
「HAHAHA、なるほど前々から感じてたけどやっぱり君も色々と捻じ曲がってる子だったか‼︎ まぁいいだろう。とりあえず初めましてだ弟君‼︎ 私はアーノルド・ドゥエイン・ジャックマン‼︎ 修練場の責任者にしてここ、ギルドアームストロングのギルドマスターだ‼︎ 気軽にマッスルアニキと呼んで欲しいYO‼︎」
ポーズを決め挨拶をするアニキ。
眩しい……。
マオは怯え、フレンの後ろに隠れるようにして震えている。
正直できることなら僕も姉ちゃんの後ろに隠れようとしたが、すでに姉ちゃんが僕の後ろに隠れていた。
「姉ちゃん……顔馴染みって言ってたけれど」
「アンネ……まさかあんたにもこんな趣味が」
フレンと共に、白い視線を姉ちゃんに向けると。
「ごめんねユウ君、私うっかり場所を間違えちゃったみたい……あはは、似てる建物だから間違えちゃった、と言うより修練場もう潰れちゃったのかも、残念だなー」
冷静に、かつ早口で扉を閉めて帰ろうとする姉ちゃん。
しかし。
「おやぁ? そこにいるのは、アーーーーーンネじゃなーいかね‼︎ 久しぶりだYO‼︎」
「やばっ、気づかれた……」
「姉ちゃん、めちゃくちゃ名前呼んでるけど……というかいま気づかれたって言ったよね」
「ききき、聞き間違いじゃないかなユウ君‼︎? わ、私あんな筋肉もりもりマッチョマンの知り合いなんて……」
「おーーい‼︎ アンネくーーん‼︎ アンネ、ファタ、モルガナくーーん‼︎ HAHAHA、聞こえてるんだろー?」
「めちゃくちゃフルネーム呼んでるけれど」
「~~~~~~‼︎?」
鞭で叩かれながらも、にこやかな笑顔でこちらに手を振る男はとても親しげだ。
黒光りする頭と真白な歯……そしてもっこり。
「……姉ちゃん、まさかああいうのが好み……」
「ちちちち違うから‼︎? 私はユウ君一筋だし……そりゃ筋肉は嫌いじゃないけれど、あんな変なプレイをする人は全然好みなんかじゃ……」
「どうしたんだYOアンネ君‼︎ もしかして久しぶりの再会で恥ずかしがってるのかなー? どうだい、昔みたいにまた、一発ヤって行かないかーーい?」
「一発……ヤる?」
「……アンネ、妾えっちなのはいけないと思うのじゃ」
マオの言葉が追い討ちとなり視界が歪む。
信じていた姉がまさかあんな黒光りに……死にたい。
「いやああぁ‼︎? ちちち違うからユウ君‼︎ 本当に、本当にそんなんじゃないからあぁ‼︎」
「アンネ君―‼︎ また一緒に大胸筋をプルプル……」
「っもう、余計なこと言うなこの筋肉だるまーー‼︎」
悲鳴に近い声を上げながら、姉ちゃんは赤色の魔法陣を展開する。
「ちょっ‼︎? アンネ、お主それ室内で打つような魔法じゃ……」
高度な魔術式だったのだろう。
マオは慌てて姉ちゃんの魔法行使を止めようとするが。
「問答無用‼︎筋繊維ひとつ残らず灰塵と化せ‼︎『エクステッド・ファイヤーボール!』」
それよりも早く詠唱を終えた姉ちゃんは、男目掛けて巨大な火の玉を発射する。
「ちょおおぉ‼︎? 姉ちゃん‼︎」
巨大な火球は人間一人は軽く包み込めそうなほど巨大であり、破裂をすればこの空間内の人間全てを巻き込んで死滅させられるだけの大魔法。
そんな魔法がまっすぐに一人の男に向けられて走る……だが。
「ふっふふふ‼︎ 相変わらずいいもの持ってるね‼︎ だが、『モストンマスキュラー‼︎』」
男はその巨大な火球を回避するでも防ぐでもなく……その腹筋で正面から受け止める。
炎により照らされ、さらなる輝きを見せる筋肉……そして強調される腹筋。
「な、なんだってんだよあの大根すりおろせそうな腹筋は‼︎?」
「何個じゃ、一体何個あるのじゃあの腹筋‼︎」
姉ちゃんの一撃を真正面から受けてもなお無傷。
しかも苦しむどころか漢は爽やかな笑顔をたたえている。
「はっはっは、さすがだねアンネ……純度の高い魔力行使、仕上がってるNE‼︎」
その姿はまさに、マッチョだった。
「はぁ……はぁ……もう、なんで貴方がここにいるのよ」
「いやぁ本国より要請で魔王軍幹部を追ってここまできたんだが、ぱったりと消息が途絶えてしまってね。捜索がてら近くに寄ったからついでに修練場の視察も兼ねて足を運んだというわけSA‼︎」
「何て最悪のタイミングなのよ……知ってたらこなかったのに~」
珍しく悔しそうな表情を見せる姉ちゃんに僕は目を白黒させながらも、黒光りするマッスルに僕は思わず声をかける。
「えと……貴方は?」
「おや、もしかして君がユウ君かな?」
「そう、ですけれど」
「おぉ、ナイストゥミーチュー‼︎ 話はお姉さんからYO―――く聞いてるYO。……ふむ、アンネ君の話よりも随分と逞しいね。もっとプリティなベイビーを想像していたんだが……風が吹いただけで折れて死んでしまいそうで心配だとかなんとか」
いったいどんな紹介してるんだよ姉ちゃん……僕は藁か!?
「逞しくないもん‼︎ ユウ君はいつだってお人形さんみたいにかわいいんだから‼︎」
「HAHAHA、なるほど前々から感じてたけどやっぱり君も色々と捻じ曲がってる子だったか‼︎ まぁいいだろう。とりあえず初めましてだ弟君‼︎ 私はアーノルド・ドゥエイン・ジャックマン‼︎ 修練場の責任者にしてここ、ギルドアームストロングのギルドマスターだ‼︎ 気軽にマッスルアニキと呼んで欲しいYO‼︎」
ポーズを決め挨拶をするアニキ。
眩しい……。
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