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魔王の苦労
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「ぺ、ペーパーナイフだあぁ‼︎? いやいや、だってあの魔力だぞユウ、あんなすごい魔力を持つ魔王がペーパーナイフだなんてそんなこと…………まじだ」
僕から折れた刀身を奪うと、フレンは顔を真っ赤にして僕と刀身を何度も見比べる。
「……勇者様、お助けぇ」
ちょっと煽ってみると、フレンの顔がゆでだこよりも赤く染まる。
「お、おま、ば、バカにしやがって、じゃなくて、ペーパーナイフバカにすんなよ‼︎? さ、刺さったらあれだ、ペーパーナイフだって人殺せんだぞ‼︎?」
「はいはい……」
素直に剣と見間違えたって認めればいいのに……という言葉を押さえ、僕は剣を構えて魔王へと向き直る。
ペーパーナイフでの攻撃を仕掛けてきたとはいえあれだけの魔力、まだ油断は……。
「え? な……ほ、本当になにもしておらぬのか? そ、そんなバカな……だって、だって店の店主これ、伝説の魔剣だって。妾、だから買ったのに……」
「あっ……(察し)」
「おいこらなんだそのかわいそうなモノを見る目は‼︎? 分かったよ偽物なんだなこれ! もう分かったからそんな目でもう見るでない! いやもう本当分かったから、その目を止めるのじゃ……っていうかお願いやめろください!」
顔を真赤にして騒ぐ魔王……殺気も敵意も完全に消え失せており、僕は警戒を説いて剣を鞘にしまった。
「……なんか、色々と可哀想な奴だな」
ぽつりと溢れたフレンの言葉。
肯定も否定もしないで、僕はうろたえる少女に声をかける。
「……えーと君、その、色々と大丈夫?」
「ええい、その雑な気遣いが余計に傷つくわ‼︎」
「あ、ごめん」
「やめて‼︎? もう妾に、優しくしないで‼︎ 妾も魔王じゃ、破れ去ったならば生恥を晒すつもりはない! 貴様も勇者ならさっさと妾を殺せばよかろう‼︎」
「いや……殺すつもりはないんだけど」
「んなっ‼︎? 貴様らもしや妾の美貌にあてられ、ここが人目のつかぬ暗がりだというのを言いことに、妾に【自主規制】や、【禁則事項】みたいなことをすると言うつもりか‼︎?
ナイス! バディな! 妾の美貌に当てられて‼︎」
「ははっ鏡見てから言えよな貧にゅ……ってぶほぉあ‼︎?」
嘲笑うかのようなフレンの顔面に少女の飛び膝蹴りが突き刺さり、フレンはゴロゴロと床を転がった。
「誰が、発育不全の妖怪胸壁じゃこらあぁ‼︎」
「そ、そこまで言ってねえよ‼︎? 自覚あるなら無理な背伸びすんじゃねえ貧乳‼︎」
「まだ言うか貴様! 妾はこれから大きくなるんじゃぁ!?」
「けっ、お前のその身長じゃもう希望は……あ、ちょっ‼︎? まって、顔‼︎ 顔殴るのやめて‼︎? お婿に行けなくなるからあぁ‼︎」
「ちょっとフレンいい加減にしてよ、話が先に進まないだろ?」
「お前は俺の仲間だろ‼︎? もうちょっと俺を助けるとかしなさいよ!? 親友だろ?!」
「親友?」
「本気で首傾げんじゃねーよ‼︎」
しばしボコボコにされるフレン。
やがて気が済むまで殴り終えたのだろう、少女は肩で息をしてこちらに振り返る。
「ふー、ふー‼︎ ともかく! 妾は勇者に負けたのだ、殺される覚悟は出来ておるわ!妾を殺して名声でも富でも手に入れりゃいいじゃろバーカ! もうどうだっていいわ‼︎
どこにいっても野良犬みたいに追い回されて、三日三晩寝ずに働いて手に入れた剣も偽物だし、挙げ句の果てには貧乳って馬鹿にされるし!?妾が一体何をしたっていうんじゃ‼︎みんなそんなに妾が嫌いか! だったら殺せば良いじゃろ‼︎ ほら殺せ、お望み通りまな板の上の鯉じゃ、さっさと殺していけ作りにでもなんにでもすれば良いじゃろうがばーか‼︎」
「だから、どっちかってーとお前は鯉じゃなくてまな板そのも……」
「しねええええぇ‼︎」
「うぎゃああああぁ‼︎?」
泣きじゃくりながら馬乗りになってフレンをボコボコにする少女。
よくみればフレンを殴るその腕は細く、体は痩せ細り全身ボロボロで……とてもじゃないが放っておける様子ではない。
「うぐっ、ひっく、うえええぇえぇん……なんでみんな妾をいじめるのじゃああぁ」
ぐったりと動かなくなったフレンの上で、子供のように泣きじゃくる姿は、魔王というよりもどこか昔の自分を見ているようで。
「……ねえ……もしお腹減ってるなら、うちでごはんでも食べてかない?」
気がつけば僕は、そんな言葉を魔王に向けてそんな言葉を投げかけていた。
◇
僕から折れた刀身を奪うと、フレンは顔を真っ赤にして僕と刀身を何度も見比べる。
「……勇者様、お助けぇ」
ちょっと煽ってみると、フレンの顔がゆでだこよりも赤く染まる。
「お、おま、ば、バカにしやがって、じゃなくて、ペーパーナイフバカにすんなよ‼︎? さ、刺さったらあれだ、ペーパーナイフだって人殺せんだぞ‼︎?」
「はいはい……」
素直に剣と見間違えたって認めればいいのに……という言葉を押さえ、僕は剣を構えて魔王へと向き直る。
ペーパーナイフでの攻撃を仕掛けてきたとはいえあれだけの魔力、まだ油断は……。
「え? な……ほ、本当になにもしておらぬのか? そ、そんなバカな……だって、だって店の店主これ、伝説の魔剣だって。妾、だから買ったのに……」
「あっ……(察し)」
「おいこらなんだそのかわいそうなモノを見る目は‼︎? 分かったよ偽物なんだなこれ! もう分かったからそんな目でもう見るでない! いやもう本当分かったから、その目を止めるのじゃ……っていうかお願いやめろください!」
顔を真赤にして騒ぐ魔王……殺気も敵意も完全に消え失せており、僕は警戒を説いて剣を鞘にしまった。
「……なんか、色々と可哀想な奴だな」
ぽつりと溢れたフレンの言葉。
肯定も否定もしないで、僕はうろたえる少女に声をかける。
「……えーと君、その、色々と大丈夫?」
「ええい、その雑な気遣いが余計に傷つくわ‼︎」
「あ、ごめん」
「やめて‼︎? もう妾に、優しくしないで‼︎ 妾も魔王じゃ、破れ去ったならば生恥を晒すつもりはない! 貴様も勇者ならさっさと妾を殺せばよかろう‼︎」
「いや……殺すつもりはないんだけど」
「んなっ‼︎? 貴様らもしや妾の美貌にあてられ、ここが人目のつかぬ暗がりだというのを言いことに、妾に【自主規制】や、【禁則事項】みたいなことをすると言うつもりか‼︎?
ナイス! バディな! 妾の美貌に当てられて‼︎」
「ははっ鏡見てから言えよな貧にゅ……ってぶほぉあ‼︎?」
嘲笑うかのようなフレンの顔面に少女の飛び膝蹴りが突き刺さり、フレンはゴロゴロと床を転がった。
「誰が、発育不全の妖怪胸壁じゃこらあぁ‼︎」
「そ、そこまで言ってねえよ‼︎? 自覚あるなら無理な背伸びすんじゃねえ貧乳‼︎」
「まだ言うか貴様! 妾はこれから大きくなるんじゃぁ!?」
「けっ、お前のその身長じゃもう希望は……あ、ちょっ‼︎? まって、顔‼︎ 顔殴るのやめて‼︎? お婿に行けなくなるからあぁ‼︎」
「ちょっとフレンいい加減にしてよ、話が先に進まないだろ?」
「お前は俺の仲間だろ‼︎? もうちょっと俺を助けるとかしなさいよ!? 親友だろ?!」
「親友?」
「本気で首傾げんじゃねーよ‼︎」
しばしボコボコにされるフレン。
やがて気が済むまで殴り終えたのだろう、少女は肩で息をしてこちらに振り返る。
「ふー、ふー‼︎ ともかく! 妾は勇者に負けたのだ、殺される覚悟は出来ておるわ!妾を殺して名声でも富でも手に入れりゃいいじゃろバーカ! もうどうだっていいわ‼︎
どこにいっても野良犬みたいに追い回されて、三日三晩寝ずに働いて手に入れた剣も偽物だし、挙げ句の果てには貧乳って馬鹿にされるし!?妾が一体何をしたっていうんじゃ‼︎みんなそんなに妾が嫌いか! だったら殺せば良いじゃろ‼︎ ほら殺せ、お望み通りまな板の上の鯉じゃ、さっさと殺していけ作りにでもなんにでもすれば良いじゃろうがばーか‼︎」
「だから、どっちかってーとお前は鯉じゃなくてまな板そのも……」
「しねええええぇ‼︎」
「うぎゃああああぁ‼︎?」
泣きじゃくりながら馬乗りになってフレンをボコボコにする少女。
よくみればフレンを殴るその腕は細く、体は痩せ細り全身ボロボロで……とてもじゃないが放っておける様子ではない。
「うぐっ、ひっく、うえええぇえぇん……なんでみんな妾をいじめるのじゃああぁ」
ぐったりと動かなくなったフレンの上で、子供のように泣きじゃくる姿は、魔王というよりもどこか昔の自分を見ているようで。
「……ねえ……もしお腹減ってるなら、うちでごはんでも食べてかない?」
気がつけば僕は、そんな言葉を魔王に向けてそんな言葉を投げかけていた。
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