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第三章 思惑
第三十三話 あらためてショック
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「え? え? ししょくき?」
アンドレアスはいきなり起こされてまだ寝ぼけている。
そんなアンドレアスとオクタヴィアンに屍食鬼が気がついた。
屍食鬼は仁王立ちだった向きを出口側から二人の方に変えると、怪我を負っている左足を引きづりながら、のっそのっそと歩いて来くる。
屍食鬼を初めて見たアンドレアスは、あまりの気持ち悪さに「ひ~~っ」と声を出して逃げ出そうとした。
しかし恐ろしさのあまりに腰が抜けて動けない。
オクタヴィアンはアンドレアスを見て、仕方ないなあと思いながらも立ち上がった。
そして一瞬のうちに向かってくる屍食鬼の前に移動するなり、切れ味のいいナイフのような右手の爪で、これまた一瞬で屍食鬼の首を切断した。
そして首が地面に落ちる前にまだ立ったままの体をアンドレアスから離すために、思いっきり松明の灯りがついている城への出口に向かって蹴り飛ばした。
首をなくした屍食鬼の身体はすごい勢いで吹っ飛び、出口を越えて城の中まで飛んでいき、突き当たりの壁にぶつかるや否や、パーン! と大きな破裂音を響かせ四方八方に血と肉片をばら撒きながら壁にくっついた。
すると、
「うわあああああああああ~~~っっ!」
城の出口付近から叫び声が聞こえた。
オクタヴィアンはその悲鳴を聞いて、城への出口の辺りに人がいた事に初めて気がついた。
「ご、ごめんごめんっっ! 自分でもこんなに屍食鬼が吹っ飛ぶと思わなかったんだよっっ」
「き、貴様は何ヤツだ! な、名乗れ! 名乗れ!」
そう言いながら、城の出口から返り血を浴びた兵士が恐る恐る顔を覗かせた。
オクタヴィアンは、ここの城主に何て口の聞き方をするんだ? と思いながらも、まあ、こっちは灯りをつけてなくて暗いからボクの事が見えないんだろう。仕方ないな。とも思う事にした。
「ちょっと待って! 今行くから」
オクタヴィアンは兵士に言うと、ビビり倒しているアンドレアスをまずは気遣った。
アンドレアスは目の前に落ちた屍食鬼の生首に、もう一度腰が抜けたようで動けなさそう。
「アンドレアス、大丈夫だね? コイツの血が口に入ったりしてないね? コイツは屍食鬼って言うらしいんだけど、人を襲って食べてしまう怪物なんだよ。ボクもよく分かってないんだけど、たぶんコイツの血はキミには毒だと思う。だから決して近寄っちゃダメだ」
「いやあ~っっ! こ、こんな気持ち悪いヤツ、コッチからごめんでさあ~っっ」
アンドレアスは生首から遠のいた。
オクタヴィアンはこれでアンドレアスは手を出さないだろうと安心した。
そこで何か妙に臭い事に気がついた。
さっきまでこんな臭いはしていなかったはず。
オクタヴィアンはまさかな……と思いながら屍食鬼の生首を持ち上げると、おもむろに鼻を近づけた。
臭い! 臭すぎる!
たった一日経っただけで、こんなに臭くなるのか? よく分からんっっ!
オクタヴィアンは苦い顔をするとその生首を通路の端に置いた。
そしてさっきから顔を覗かせている兵士の元へ向かった。
それに気がついた兵士は慌てて剣を抜くと、オクタヴィアンに向かって構えた。
しかしその手は明らかにこの異常事態にビクついてブルブルと震えている。
オクタヴィアンは(そりゃそうなるか……)と思いながら話しかけた。
「キミは大丈夫だったかい?」
オクタヴィアンはその兵士が少しでも興奮しないように気さくに話しかけた……つもりだったが、どうやら兵士の方はその言葉を聞く余裕はないらしい。
「き、貴様~~~~~~~っっ! と、止まれ~~~~~~~~~っっ! 止まらんと、叩っ切るぞお~~~~っっ!」
その激高っぷりに、オクタヴィアンはまずいと思い、その場で足を止めた。
その兵士はまだ通路の暗闇からオクタヴィアンの顔を確認出来ないのか、目を細めて一生懸命オクタヴィアンを眺めている。
「も、もう一歩前に、ゆっくり出ろ!」
オクタヴィアンは、やれやれと思いながら一歩前に出た。
すると松明の灯がオクタヴィアンの顔が照らし、確認できたらしい。
「か、怪物! 怪物だあ~~~~~~~~~~っっ! また怪物が現れた~~~! だ、誰か来てくれ~~~!」
その兵士はかなり焦った表情で加勢の兵士を呼んでいる。
いやいやいや、だからボクはここの城主だってば! そんなに分かんないものかあ?
オクタヴィアンは頭をかきながらその兵士に聞いた。
「ボクだよ……オクタヴィアン……。オロロック・オクタヴィアン。ここの城主だよ。分かんない? えっと…キミの名前……何だっけ? ごめん、分かんないや」
これはこれでだいぶ失礼ではあるが、オクタヴィアンからしたら自分の部下にあたる兵士なので、こんな対応になる。
オクタヴィアンは、普段から城の事は全てグリゴアに任せていて兵士の事など全然分かっていなかった。
なのでその兵士の名前など、分かるハズがない。
そしてその兵士にグリゴアを呼んできてもらえば、全て分かってくれると思ったのだ。
しかし兵士はその言葉を聞いてさらに激高した。
「き、貴様! ウソをつくな~~~~! オクタヴィアン様はそんなハゲちゃびんじゃないわあ~~~~!」
「…………………………」
オクタヴィアンは言葉を失った。
そうなのだ。
オクタヴィアンは、昨晩からのあまりに多くのショッキングな出来事に気を取られ、自分の髪の毛から眉毛から身体中の毛が抜けてしまった事を忘れていたのだった。
オクタヴィアンはあらためてショックを受けた。
ひょっとすると、吸血鬼に変わって、ただでさえ髪の毛がなくなったのに、人相も変わっているのではないか?
これではみんなボクだと分からないのでは……
オクタヴィアンは不安になりながら、いまだにブルブル震えてながら剣を構えている兵士に聞いてみた。
「キ、キミ……ホントにボクが分からないかい? ちょっとよく見てみてよっっ」
オクタヴィアンは更に近寄ろうと城側に出ようとした。
その時だった。
空気の壁が「グニュ」と顔に当たる感覚を感じた。
え? 何? 何かある?
オクタヴィアンは前に出ようとすればする程、そこにクッションでもあるかのように、痛くはないが確実に前を阻む何かを感じた。
え……? どゆこと? これ……ひょっとして昨日言ってた他人の敷地内には入れないっていうアレ? え? ボクはこの城の城主なのに? 何で? 城主と認められてないの? ウソ~!
オクタヴィアンはとてもショックを受けた。
そして今の一連の行動を見た兵士はそのヘンテコな動作を見ながらも剣を構えている。
「き、貴様、さっきから何をしてるんだ? 顔を見せるんじゃないのか?」
「あ、いや、顔を今出すよっっ」
兵士に突っ込まれたオクタヴィアンは(そうだった)と思い直すと、顔を少し出して、じっくりと兵士に見せた。
ようやくオクタヴィアンが顔を出したのを確認兵士も少しだけ警戒しながらも近寄って顔をまじまじと観察した。
そして兵士は驚いた。
「…………た、確かにオクタヴィアン様にそっくりだ! き、貴様! オクタヴィアン様に何をした! まさか食べたんじゃあるまいな!」
どうしてそうなる?
アンドレアスはいきなり起こされてまだ寝ぼけている。
そんなアンドレアスとオクタヴィアンに屍食鬼が気がついた。
屍食鬼は仁王立ちだった向きを出口側から二人の方に変えると、怪我を負っている左足を引きづりながら、のっそのっそと歩いて来くる。
屍食鬼を初めて見たアンドレアスは、あまりの気持ち悪さに「ひ~~っ」と声を出して逃げ出そうとした。
しかし恐ろしさのあまりに腰が抜けて動けない。
オクタヴィアンはアンドレアスを見て、仕方ないなあと思いながらも立ち上がった。
そして一瞬のうちに向かってくる屍食鬼の前に移動するなり、切れ味のいいナイフのような右手の爪で、これまた一瞬で屍食鬼の首を切断した。
そして首が地面に落ちる前にまだ立ったままの体をアンドレアスから離すために、思いっきり松明の灯りがついている城への出口に向かって蹴り飛ばした。
首をなくした屍食鬼の身体はすごい勢いで吹っ飛び、出口を越えて城の中まで飛んでいき、突き当たりの壁にぶつかるや否や、パーン! と大きな破裂音を響かせ四方八方に血と肉片をばら撒きながら壁にくっついた。
すると、
「うわあああああああああ~~~っっ!」
城の出口付近から叫び声が聞こえた。
オクタヴィアンはその悲鳴を聞いて、城への出口の辺りに人がいた事に初めて気がついた。
「ご、ごめんごめんっっ! 自分でもこんなに屍食鬼が吹っ飛ぶと思わなかったんだよっっ」
「き、貴様は何ヤツだ! な、名乗れ! 名乗れ!」
そう言いながら、城の出口から返り血を浴びた兵士が恐る恐る顔を覗かせた。
オクタヴィアンは、ここの城主に何て口の聞き方をするんだ? と思いながらも、まあ、こっちは灯りをつけてなくて暗いからボクの事が見えないんだろう。仕方ないな。とも思う事にした。
「ちょっと待って! 今行くから」
オクタヴィアンは兵士に言うと、ビビり倒しているアンドレアスをまずは気遣った。
アンドレアスは目の前に落ちた屍食鬼の生首に、もう一度腰が抜けたようで動けなさそう。
「アンドレアス、大丈夫だね? コイツの血が口に入ったりしてないね? コイツは屍食鬼って言うらしいんだけど、人を襲って食べてしまう怪物なんだよ。ボクもよく分かってないんだけど、たぶんコイツの血はキミには毒だと思う。だから決して近寄っちゃダメだ」
「いやあ~っっ! こ、こんな気持ち悪いヤツ、コッチからごめんでさあ~っっ」
アンドレアスは生首から遠のいた。
オクタヴィアンはこれでアンドレアスは手を出さないだろうと安心した。
そこで何か妙に臭い事に気がついた。
さっきまでこんな臭いはしていなかったはず。
オクタヴィアンはまさかな……と思いながら屍食鬼の生首を持ち上げると、おもむろに鼻を近づけた。
臭い! 臭すぎる!
たった一日経っただけで、こんなに臭くなるのか? よく分からんっっ!
オクタヴィアンは苦い顔をするとその生首を通路の端に置いた。
そしてさっきから顔を覗かせている兵士の元へ向かった。
それに気がついた兵士は慌てて剣を抜くと、オクタヴィアンに向かって構えた。
しかしその手は明らかにこの異常事態にビクついてブルブルと震えている。
オクタヴィアンは(そりゃそうなるか……)と思いながら話しかけた。
「キミは大丈夫だったかい?」
オクタヴィアンはその兵士が少しでも興奮しないように気さくに話しかけた……つもりだったが、どうやら兵士の方はその言葉を聞く余裕はないらしい。
「き、貴様~~~~~~~っっ! と、止まれ~~~~~~~~~っっ! 止まらんと、叩っ切るぞお~~~~っっ!」
その激高っぷりに、オクタヴィアンはまずいと思い、その場で足を止めた。
その兵士はまだ通路の暗闇からオクタヴィアンの顔を確認出来ないのか、目を細めて一生懸命オクタヴィアンを眺めている。
「も、もう一歩前に、ゆっくり出ろ!」
オクタヴィアンは、やれやれと思いながら一歩前に出た。
すると松明の灯がオクタヴィアンの顔が照らし、確認できたらしい。
「か、怪物! 怪物だあ~~~~~~~~~~っっ! また怪物が現れた~~~! だ、誰か来てくれ~~~!」
その兵士はかなり焦った表情で加勢の兵士を呼んでいる。
いやいやいや、だからボクはここの城主だってば! そんなに分かんないものかあ?
オクタヴィアンは頭をかきながらその兵士に聞いた。
「ボクだよ……オクタヴィアン……。オロロック・オクタヴィアン。ここの城主だよ。分かんない? えっと…キミの名前……何だっけ? ごめん、分かんないや」
これはこれでだいぶ失礼ではあるが、オクタヴィアンからしたら自分の部下にあたる兵士なので、こんな対応になる。
オクタヴィアンは、普段から城の事は全てグリゴアに任せていて兵士の事など全然分かっていなかった。
なのでその兵士の名前など、分かるハズがない。
そしてその兵士にグリゴアを呼んできてもらえば、全て分かってくれると思ったのだ。
しかし兵士はその言葉を聞いてさらに激高した。
「き、貴様! ウソをつくな~~~~! オクタヴィアン様はそんなハゲちゃびんじゃないわあ~~~~!」
「…………………………」
オクタヴィアンは言葉を失った。
そうなのだ。
オクタヴィアンは、昨晩からのあまりに多くのショッキングな出来事に気を取られ、自分の髪の毛から眉毛から身体中の毛が抜けてしまった事を忘れていたのだった。
オクタヴィアンはあらためてショックを受けた。
ひょっとすると、吸血鬼に変わって、ただでさえ髪の毛がなくなったのに、人相も変わっているのではないか?
これではみんなボクだと分からないのでは……
オクタヴィアンは不安になりながら、いまだにブルブル震えてながら剣を構えている兵士に聞いてみた。
「キ、キミ……ホントにボクが分からないかい? ちょっとよく見てみてよっっ」
オクタヴィアンは更に近寄ろうと城側に出ようとした。
その時だった。
空気の壁が「グニュ」と顔に当たる感覚を感じた。
え? 何? 何かある?
オクタヴィアンは前に出ようとすればする程、そこにクッションでもあるかのように、痛くはないが確実に前を阻む何かを感じた。
え……? どゆこと? これ……ひょっとして昨日言ってた他人の敷地内には入れないっていうアレ? え? ボクはこの城の城主なのに? 何で? 城主と認められてないの? ウソ~!
オクタヴィアンはとてもショックを受けた。
そして今の一連の行動を見た兵士はそのヘンテコな動作を見ながらも剣を構えている。
「き、貴様、さっきから何をしてるんだ? 顔を見せるんじゃないのか?」
「あ、いや、顔を今出すよっっ」
兵士に突っ込まれたオクタヴィアンは(そうだった)と思い直すと、顔を少し出して、じっくりと兵士に見せた。
ようやくオクタヴィアンが顔を出したのを確認兵士も少しだけ警戒しながらも近寄って顔をまじまじと観察した。
そして兵士は驚いた。
「…………た、確かにオクタヴィアン様にそっくりだ! き、貴様! オクタヴィアン様に何をした! まさか食べたんじゃあるまいな!」
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