25 / 70
第二章 吸血鬼初心者
第二十五話 ラドゥの計画
しおりを挟む
オクタヴィアンのいきなりな質問にラドゥは少し驚きながらも冷ややかな反応をした。
そしてローラは目を閉じ、ヨアナは意味が分かっていないので、キョトンとした。
「ラドゥ! 教えてくれ! これはどういう事なんだ? ボクはアンドレアスからそう聞いてきたんだ! でも君はローラを選んだ。もうボクには何が何だか分からないっっ」
テスラの左手でブランブランしているオクタヴィアンは、必死になってラドゥに話しかけた。
「ん~……そうだね。君には何も話してなかったし、話せなかったからね……。でも今や同じ吸血鬼だ。話してもいいだろう」
ラドゥとローラは少しオクタヴィアンから距離を取った。
しかしヨアナはオクタヴィアンに抱きついた。
「いいかいオクタヴィアン? 僕はこのワラキアを手に入れる使命を、オスマントルコから言い渡されている。それくらいは分かるだろう? だからあのバサラブも味方に引き込んだ。ただコンスタンティン……君の父君はどっちつかずの態度をずっとしてきてね。彼からしたらその方が家にとっても良い事は分かるんだけど、それだと僕的にはあまり旨味がないんだよ。だってこの家にはかなりの財産がある。それを放っておくのは勿体無い。君とは馬が合ったが、でもコンスタンティンの息子だからね。仲間には出来ない。だから君の奥さんのエリザベタに取り入ったんだよ。するとエリザベタは普段の生活がよほど嫌だったのか、すぐに乗ってきたよ」
「え? 普段の生活から不満だったの?」
ラドゥの話をさえぎってオクタヴィアンは声を出した。
しかしそう驚きながらも、冷静に考えたらやっぱりそうだったんだと思い直した。
「話を続けるよ。君の事も何かと気に入らなかったみたいだけど、それ以上に君の父君、コンスタンティンにはほとほと嫌気がさしてたようだったよ。何せ君には内緒で身体を強要しようと何度も迫られたらしいからね。それに……このローラも君は聞いているかは知らないが、ローラは十代の時に妾にさせられて、子どもが出来ると腹を蹴ったりして子どもを無理矢理おろさせて、彼女の身体をボロボロにしていったからね。それをテスラも助けてるけど、僕も何度も助けてる。君は全く気づいてなかったけどね。そんな男ならとりあえず殺しておこうと思ってね。それでローラとエリザベタには毒薬を渡したのさ。それで時間をかけてコンスタンティンは殺した。問題はその後だった。僕はヴラドに追われて殺されてしまったからね。僕があのまま生きていて、バサラブが公のままだったら、君に罪をなすりつけて、家を没収するつもりだったんだけど。まあでもグリゴアって言うあの堅物も始末しないと行けなかったから、やっぱり計画は上手く行かなかったかな」
オクタヴィアンは愕然とした。
何にも知らなかった……。
「え、エリザベタはどうするつもりだったんだ?」
「ん~? エリザベタも殺すつもりだったよ。だって僕、彼女の事、特に好きじゃなかったし。財産さえ入ればいいし、ローラと恋人同士だったし」
オクタヴィアンは言葉を失った。
すっかりラドゥに踊らされていた。これだけ仲のいいローラにも騙されていたのか?
そう思うと怒りが込み上げてきた。
するとテスラにぶら下がっていた身体が勝手に空中に動き出し、ヨアナを抱えたままラドゥとローラの真ん前まで移動した。
「この子は……! ヨアナはどうするつもりだったんだ! ローラ! 君だってヨアナは大切に思ってくれてたんだろ!」
「…………ヨアナ様は私の娘にするつもりでした」
ローラは目をつむったまま答えた。
オクタヴィアンは何だか悲しくなってきた。
そんな時、ヨアナが服を引っ張っている事に気がついた。
「私ね、パパとローラと三人がいい」
「え……」
オクタヴィアンはその言葉に救われた気分になったが、ローラは目の色が変わった。
「な、何言ってるんです? ヨアナ様は私とラドゥ様の娘になるって約束したじゃないですか」
「ええ? だってパパ死んじゃったと思ってたんだもん! それにローラはいいけど、ラドゥはやだ!」
ヨアナはビッタリとオクタヴィアンに抱きついた。
そしてオクタヴィアンに耳打ちをしてきた。
「パパ。お母様……今、大変……」
「え?」
オクタヴィアンはヨアナの顔を見た。
ヨアナは真面目な顔をしている。
オクタヴィアンはラドゥとローラを睨みこんだ。
「エリザベタに何かしたのか?」
その凄みにローラはひるみ、後ろに下がりかけたが、それをラドゥが肩を組んで止めた。
「オクタヴィアン。エリザベタに何かしたら問題なのか? あの女は君とローラとヨアナを殺そうとしたんだぞ」
「だから彼女の話を聞く為にボクは戻ってきたんだ! 彼女に何をした!」
ヨアナはより一層オクタヴィアンに抱きついた。
「ふふ。オクタヴィアン。君は優しい……というよりアホだな。あんな女、死んで当然なのに。今ね、私達の部下が門を閉めて、君の屋敷の敷地内なら出られなくしたよ。そして君の屋敷の使用人達な……昨日からみんなで食べてたから今、屍食鬼に変わって活動を始めているよ。もちろん人間のままのヤツもいると思うけどね。エリザベタが一晩耐えれるのか、それが楽しみでね。ちょっとした遊びだよ」
「な、何~~~~~~~っっ!」
オクタヴィアンはとても信じなれなかった。
ラドゥはこんなに冷たい人間だったのか? こんな男とローラはくっついたのか?
そこにローラがラドゥに加勢した。
「オクタヴィアン様。少し過激なゲームですけど、奥様には当然の報いですよ! だって私とオクタヴィアン様とヨアナ様をアンドレアスを使って殺そうとしたじゃないですか!」
「でもボクの奥さんだ! 一度話をしないと……。それにこんな事をする権限がラドゥ! キミにあるのかい? エリザベタはボクの家の者だ!」
「ははは! 分かってないなオクタヴィアン! あの女の本性を! あの女はおまえの事などどうでも良かったのだ! そもそもこの家の財産さえ手に入れば、おまえなど用なしなのだ!」
オクタヴィアンは怒りの頂点に達した。
しかしそれ以上に抱きついていたヨアナが怒ったようだった。
「ラドゥもローラも嫌い! お母様の悪口言うな~! もうどっか行っちゃえええっっ!」
ヨアナがその一言を叫んだ。
するとラドゥはいきなり見えない何かに押されるように屋敷の敷地から外に弾き飛ばされ、手を繋いでいたローラも「え?」と引っ張られて敷地の外へ行ってしまった。
オクタヴィアンはいきなり二人が飛ばされて行ったので、何が起こったか分からなかった。
そこでテスラが冷静に話した。
「まさかここで敷地から出されるとはな」
オクタヴィアンは理解できたようなできないような、やっぱり理解できないでいた。
「まあ後で教えてやる。今は奥さんを探すのが先なんだろ?」
「パパ、急ご」
「あ、ああ! そうだった!」
思い直したオクタヴィアンはヨアナを抱いたまま、テスラとともに敷地内に向かって降りて行った。
その際にテスラが一言こぼした。
「怒りで飛ぶ事を覚えたか」
そしてローラは目を閉じ、ヨアナは意味が分かっていないので、キョトンとした。
「ラドゥ! 教えてくれ! これはどういう事なんだ? ボクはアンドレアスからそう聞いてきたんだ! でも君はローラを選んだ。もうボクには何が何だか分からないっっ」
テスラの左手でブランブランしているオクタヴィアンは、必死になってラドゥに話しかけた。
「ん~……そうだね。君には何も話してなかったし、話せなかったからね……。でも今や同じ吸血鬼だ。話してもいいだろう」
ラドゥとローラは少しオクタヴィアンから距離を取った。
しかしヨアナはオクタヴィアンに抱きついた。
「いいかいオクタヴィアン? 僕はこのワラキアを手に入れる使命を、オスマントルコから言い渡されている。それくらいは分かるだろう? だからあのバサラブも味方に引き込んだ。ただコンスタンティン……君の父君はどっちつかずの態度をずっとしてきてね。彼からしたらその方が家にとっても良い事は分かるんだけど、それだと僕的にはあまり旨味がないんだよ。だってこの家にはかなりの財産がある。それを放っておくのは勿体無い。君とは馬が合ったが、でもコンスタンティンの息子だからね。仲間には出来ない。だから君の奥さんのエリザベタに取り入ったんだよ。するとエリザベタは普段の生活がよほど嫌だったのか、すぐに乗ってきたよ」
「え? 普段の生活から不満だったの?」
ラドゥの話をさえぎってオクタヴィアンは声を出した。
しかしそう驚きながらも、冷静に考えたらやっぱりそうだったんだと思い直した。
「話を続けるよ。君の事も何かと気に入らなかったみたいだけど、それ以上に君の父君、コンスタンティンにはほとほと嫌気がさしてたようだったよ。何せ君には内緒で身体を強要しようと何度も迫られたらしいからね。それに……このローラも君は聞いているかは知らないが、ローラは十代の時に妾にさせられて、子どもが出来ると腹を蹴ったりして子どもを無理矢理おろさせて、彼女の身体をボロボロにしていったからね。それをテスラも助けてるけど、僕も何度も助けてる。君は全く気づいてなかったけどね。そんな男ならとりあえず殺しておこうと思ってね。それでローラとエリザベタには毒薬を渡したのさ。それで時間をかけてコンスタンティンは殺した。問題はその後だった。僕はヴラドに追われて殺されてしまったからね。僕があのまま生きていて、バサラブが公のままだったら、君に罪をなすりつけて、家を没収するつもりだったんだけど。まあでもグリゴアって言うあの堅物も始末しないと行けなかったから、やっぱり計画は上手く行かなかったかな」
オクタヴィアンは愕然とした。
何にも知らなかった……。
「え、エリザベタはどうするつもりだったんだ?」
「ん~? エリザベタも殺すつもりだったよ。だって僕、彼女の事、特に好きじゃなかったし。財産さえ入ればいいし、ローラと恋人同士だったし」
オクタヴィアンは言葉を失った。
すっかりラドゥに踊らされていた。これだけ仲のいいローラにも騙されていたのか?
そう思うと怒りが込み上げてきた。
するとテスラにぶら下がっていた身体が勝手に空中に動き出し、ヨアナを抱えたままラドゥとローラの真ん前まで移動した。
「この子は……! ヨアナはどうするつもりだったんだ! ローラ! 君だってヨアナは大切に思ってくれてたんだろ!」
「…………ヨアナ様は私の娘にするつもりでした」
ローラは目をつむったまま答えた。
オクタヴィアンは何だか悲しくなってきた。
そんな時、ヨアナが服を引っ張っている事に気がついた。
「私ね、パパとローラと三人がいい」
「え……」
オクタヴィアンはその言葉に救われた気分になったが、ローラは目の色が変わった。
「な、何言ってるんです? ヨアナ様は私とラドゥ様の娘になるって約束したじゃないですか」
「ええ? だってパパ死んじゃったと思ってたんだもん! それにローラはいいけど、ラドゥはやだ!」
ヨアナはビッタリとオクタヴィアンに抱きついた。
そしてオクタヴィアンに耳打ちをしてきた。
「パパ。お母様……今、大変……」
「え?」
オクタヴィアンはヨアナの顔を見た。
ヨアナは真面目な顔をしている。
オクタヴィアンはラドゥとローラを睨みこんだ。
「エリザベタに何かしたのか?」
その凄みにローラはひるみ、後ろに下がりかけたが、それをラドゥが肩を組んで止めた。
「オクタヴィアン。エリザベタに何かしたら問題なのか? あの女は君とローラとヨアナを殺そうとしたんだぞ」
「だから彼女の話を聞く為にボクは戻ってきたんだ! 彼女に何をした!」
ヨアナはより一層オクタヴィアンに抱きついた。
「ふふ。オクタヴィアン。君は優しい……というよりアホだな。あんな女、死んで当然なのに。今ね、私達の部下が門を閉めて、君の屋敷の敷地内なら出られなくしたよ。そして君の屋敷の使用人達な……昨日からみんなで食べてたから今、屍食鬼に変わって活動を始めているよ。もちろん人間のままのヤツもいると思うけどね。エリザベタが一晩耐えれるのか、それが楽しみでね。ちょっとした遊びだよ」
「な、何~~~~~~~っっ!」
オクタヴィアンはとても信じなれなかった。
ラドゥはこんなに冷たい人間だったのか? こんな男とローラはくっついたのか?
そこにローラがラドゥに加勢した。
「オクタヴィアン様。少し過激なゲームですけど、奥様には当然の報いですよ! だって私とオクタヴィアン様とヨアナ様をアンドレアスを使って殺そうとしたじゃないですか!」
「でもボクの奥さんだ! 一度話をしないと……。それにこんな事をする権限がラドゥ! キミにあるのかい? エリザベタはボクの家の者だ!」
「ははは! 分かってないなオクタヴィアン! あの女の本性を! あの女はおまえの事などどうでも良かったのだ! そもそもこの家の財産さえ手に入れば、おまえなど用なしなのだ!」
オクタヴィアンは怒りの頂点に達した。
しかしそれ以上に抱きついていたヨアナが怒ったようだった。
「ラドゥもローラも嫌い! お母様の悪口言うな~! もうどっか行っちゃえええっっ!」
ヨアナがその一言を叫んだ。
するとラドゥはいきなり見えない何かに押されるように屋敷の敷地から外に弾き飛ばされ、手を繋いでいたローラも「え?」と引っ張られて敷地の外へ行ってしまった。
オクタヴィアンはいきなり二人が飛ばされて行ったので、何が起こったか分からなかった。
そこでテスラが冷静に話した。
「まさかここで敷地から出されるとはな」
オクタヴィアンは理解できたようなできないような、やっぱり理解できないでいた。
「まあ後で教えてやる。今は奥さんを探すのが先なんだろ?」
「パパ、急ご」
「あ、ああ! そうだった!」
思い直したオクタヴィアンはヨアナを抱いたまま、テスラとともに敷地内に向かって降りて行った。
その際にテスラが一言こぼした。
「怒りで飛ぶ事を覚えたか」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
追放しなくて結構ですよ。自ら出ていきますので。
華原 ヒカル
ファンタジー
子爵家の令嬢であるクロエは、仕える身である伯爵家の令嬢、マリーに頭が上がらない日々が続いていた。加えて、母が亡くなって以来、父からの暴言や暴力もエスカレートするばかり。
「ゴミ、屑」と罵られることが当たり前となっていた。
そんな、クロエに社交界の場で、禁忌を犯したマリー。
そして、クロエは完全に吹っ切れた。
「私は、屑でゴミですから、居なくなったところで問題ありませんよね?」
これで自由になれる。やりたいことが実は沢山ありましたの。だから、私、とっても幸せです。
「仕事ですか?ご自慢の精神論で頑張って下さいませ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる