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第一章 オクタヴィアンはハゲを治したいだけ
第五話 恥をかく
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くそ~~~~~~~~~っっ! ヴラド公~~~~~~~~~っっ! みんなの前でボクの頭をいじりやがって~~~~~~~~~っっ!
オクタヴィアンは家に向かう馬車の中で、口をとんがらせて涙が出そうなくらい悔しがっていた。
「確か君は長い髪の毛が自慢だったと記憶していたのだが……、オールバックにしたのだな。ずいぶん雰囲気が変わって、最初誰だか分からなかったぞ」
儀式を終えてあえて公(国王)になったヴラドは、父の死で代行的に評議員としてやって来たオクタヴィアンの顔を見て、懐かしそうに話してきた。
しかしオクタヴィアンはいきなりの髪の毛の話題で嬉しくない。
何せ薄毛隠しの髪型なのだから。
「いえ、この髪型は少し前からしていまして……」
その言葉に義父のモゴシュはじめとする評議会の面々が笑いをこらえた。司教も目が笑っている。
オクタヴィアンはそれに気づくと顔が赤くなっていった。
ヴラド公はそんな事には気がつかない。
「そうか。君も大人になったという事だな。父君の分も仕事をしないといけない立場だし、その覚悟の現れなのだな。今日はありがとう、祝賀会も楽しんでいってくれ」
ヴラド公はそう言うと、オクタヴィアンの肩をポンと叩いた。
するとヴラド公は思い出したように評議員全員の顔を見渡した。
「あ、そうだ。すまぬが明日。明日、まあ、明後日になってしまうかもしれないが……皆の屋敷へ向かいたい。そのつもりでお願いしたいんだが、よいかな?」
「ほう? 明日ですか」
「分かりました」
各評議員が返事をした。
「うむ。すまぬな」
ヴラド公はそう言い残すと、礼拝堂から出ていった。
しばらくして、完全にヴラド公がいなくなった事を確認した評議会の面々と司教は、皆で目を合わせはじめ、吹き出すように笑い出した。
オクタヴィアンはさらに顔を真っ赤にした。
「す、すまない、オクタヴィアン。で、でもどうしてその髪型っっ。いきなりハゲ始めたのか?」
「そりゃ男なら皆がある程度、通る道だがっっ、君はちょっと気の毒な程キてるからっっ」
「その抜け方なら、坊主にした方が絶対いいのにっっ。むしろハゲが目立つだろっっ。坊主が嫌ならせめて長髪はやめないと~」
「それじゃあせっかくの色男が台無しじゃないか~」
もう礼拝堂の中は笑いの渦である。
評議会の面々と司教は涙を流し、腹を抱えて笑っている。
オクタヴィアンは居ても立っても居られない気持ちになった。
そこに義父のモゴシュが涙を拭きながらオクタヴィアンの肩を叩いた。
「なあオクタヴィアン。娘からよく君の愚痴を聞かされているが、これだけ面白い事をしてくれるんなら安心だよ。きっと娘も笑っているだろ。でも祝賀会では娘に恥をかかせないでくれよな」
その言葉にまたその場は大爆笑になった。
オクタヴィアンはもう耐えれなかった。顔も真っ赤、口はとんがり、悔し涙も出そうである。
「失礼する」
オクタヴィアンは仏頂面で部屋を出ると、一目散に馬車へ向かった。その最中も後ろからは笑い声が聞こえて来た。
オクタヴィアンはさらに早足になると、さっさと馬車の元へ戻り、乗り込んだ。
御者席で横になっていたアンドレアスはまさかこんなに早くオクタヴィアンが戻ってくるとは思っていなかったのでかなり驚いた。
「へ? も、もうお戻りで?」
「家に戻れ!」
アンドレアスはオクタヴィアンの怒声に驚き、馬車を走り出した。
しかし妻のエリザベタがパーティー会場にいる事を思い出したオクタヴィアンは、
「すまないアンドレアス。ボクが家に戻ったらまた宮廷に戻ってくれないか? エリザベタがパーティーを楽しんでいると思うから」
そうアンドレアスに言うと、馬車の中でこれでもかと悔しがった。
オクタヴィアンは家に向かう馬車の中で、口をとんがらせて涙が出そうなくらい悔しがっていた。
「確か君は長い髪の毛が自慢だったと記憶していたのだが……、オールバックにしたのだな。ずいぶん雰囲気が変わって、最初誰だか分からなかったぞ」
儀式を終えてあえて公(国王)になったヴラドは、父の死で代行的に評議員としてやって来たオクタヴィアンの顔を見て、懐かしそうに話してきた。
しかしオクタヴィアンはいきなりの髪の毛の話題で嬉しくない。
何せ薄毛隠しの髪型なのだから。
「いえ、この髪型は少し前からしていまして……」
その言葉に義父のモゴシュはじめとする評議会の面々が笑いをこらえた。司教も目が笑っている。
オクタヴィアンはそれに気づくと顔が赤くなっていった。
ヴラド公はそんな事には気がつかない。
「そうか。君も大人になったという事だな。父君の分も仕事をしないといけない立場だし、その覚悟の現れなのだな。今日はありがとう、祝賀会も楽しんでいってくれ」
ヴラド公はそう言うと、オクタヴィアンの肩をポンと叩いた。
するとヴラド公は思い出したように評議員全員の顔を見渡した。
「あ、そうだ。すまぬが明日。明日、まあ、明後日になってしまうかもしれないが……皆の屋敷へ向かいたい。そのつもりでお願いしたいんだが、よいかな?」
「ほう? 明日ですか」
「分かりました」
各評議員が返事をした。
「うむ。すまぬな」
ヴラド公はそう言い残すと、礼拝堂から出ていった。
しばらくして、完全にヴラド公がいなくなった事を確認した評議会の面々と司教は、皆で目を合わせはじめ、吹き出すように笑い出した。
オクタヴィアンはさらに顔を真っ赤にした。
「す、すまない、オクタヴィアン。で、でもどうしてその髪型っっ。いきなりハゲ始めたのか?」
「そりゃ男なら皆がある程度、通る道だがっっ、君はちょっと気の毒な程キてるからっっ」
「その抜け方なら、坊主にした方が絶対いいのにっっ。むしろハゲが目立つだろっっ。坊主が嫌ならせめて長髪はやめないと~」
「それじゃあせっかくの色男が台無しじゃないか~」
もう礼拝堂の中は笑いの渦である。
評議会の面々と司教は涙を流し、腹を抱えて笑っている。
オクタヴィアンは居ても立っても居られない気持ちになった。
そこに義父のモゴシュが涙を拭きながらオクタヴィアンの肩を叩いた。
「なあオクタヴィアン。娘からよく君の愚痴を聞かされているが、これだけ面白い事をしてくれるんなら安心だよ。きっと娘も笑っているだろ。でも祝賀会では娘に恥をかかせないでくれよな」
その言葉にまたその場は大爆笑になった。
オクタヴィアンはもう耐えれなかった。顔も真っ赤、口はとんがり、悔し涙も出そうである。
「失礼する」
オクタヴィアンは仏頂面で部屋を出ると、一目散に馬車へ向かった。その最中も後ろからは笑い声が聞こえて来た。
オクタヴィアンはさらに早足になると、さっさと馬車の元へ戻り、乗り込んだ。
御者席で横になっていたアンドレアスはまさかこんなに早くオクタヴィアンが戻ってくるとは思っていなかったのでかなり驚いた。
「へ? も、もうお戻りで?」
「家に戻れ!」
アンドレアスはオクタヴィアンの怒声に驚き、馬車を走り出した。
しかし妻のエリザベタがパーティー会場にいる事を思い出したオクタヴィアンは、
「すまないアンドレアス。ボクが家に戻ったらまた宮廷に戻ってくれないか? エリザベタがパーティーを楽しんでいると思うから」
そうアンドレアスに言うと、馬車の中でこれでもかと悔しがった。
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