12 / 16
ネコチヤンは探偵さん?~前半~
しおりを挟む
『あなた様。かなり微妙な空気になっていますよ?』
「ん? どこがだ? 鳥とかをプレゼントされるよりは、よっぽどマシだろ?」
『……そういうことではなく』
「あっ! もしかして……食ってないやつがよかったのか!? ああ……ハゲータには、申し訳ないことをしなぁ」
『天然かよ!? しかも、何かわいいポーズとっちゃってるんですか!?』
かわいいポーズとは何だろうか。俺はただ、お尻が痒いから、片足上げて舐めてるだけだってのに。
謎の声はときどきわからないことを言う。
俺がそうあきれていると、謎の声に咳払いをされてしまった。
『あなた様、見てください。ハゲータさんの、あの、何とも言えない表情を』
そう言われ、彼を見る。
ハゲータは骨だけになった魚の尻尾を摘み、乾いた笑い声をあげていた。
『ゴミだから捨てたい。でも、あなた様が嬉しそうにプレゼントしてくるものだから、捨てるに捨てれないといった感情です』
「……マジか」
悪いことをしてしまったのかもしれない。そう思い、骨を奪おうと、お尻を上げて狙いを定めた。そのとき……ドンッ! という、大きな爆発が起きた。一体なんだと探ってみれば、真向かいにあるパン屋さんから煙が上がっている。
「おい、大丈夫か!?」
「大変だ! 怪我人はいるか!?」
突然の爆発に、町は一気に緊張の糸に絡まっていった。パン屋さんから救出されたのは若い男と、年配の女性のよう。二人は煤だらけになっていた。幸いにも怪我はないようで、呆然と立ち尽くしている。
町の人たちが二人に話を聞くと、どうやら竈門が爆発した化膿性があるようだ。理由はわからないけれど、焼いていたら焦げ臭くなったそう。そしてあっという間に、煙まみれになり……
「──今にいたるってわけか。……謎の声さん、どう思う?」
『わかりません。ですが、竈門を調べてみる必要はあると思います』
謎の声の意見には、俺も賛成だった。だけどそうなると、どうやって調べるかが課題となる。猫として侵入したとしても、竈門の中までは調べられないだろう。
体が柔らかくても、限界というものがあるからだ。
「……俺たちじゃ無理っぽいな」
『お待ちください。諦めるのはまだ早いかと』
「ん? 何で?」
少しだけ、わくわくした気分になる。そわそわしながら尻尾を左右にふった。
『ネコチヤン、という言葉をご存知でしょうか?』
聞いたことがないなと、首を左右にふる。顎をガシガシと掻き、教えてよとお願いしてみた。
『……んん! かわいい! ……じゃなくて。こほんっ! ネコチヤンというのは、猫のようなものが映ったときに使われます』
妙な言い方をするな。猫のようなものとは、いったんなんなのだろうか? もしかして猫に似た新種の生き物なのか。それとも……
『当たらずとも遠からずです。実際は猫なのですが、写真などに映った姿は猫ではないとう……猫を撮っていたはずなのに、なぜか猫になっていない。そんな感じの用語です』
「あー……あれか? 猫のはずなのに、なぜか体の長い蛇っぽいものが撮れてしまった! みたいな?」
『はい。だいたい、そんな感じです。そしてそのネコチヤンはこの世界では、猫ではない別の物質へと体を変化させることが可能となります』
「なるほど! ちょうど今が、そのスキルを使うときってわけだな!?」
『はい。そのとおりです! 是非、やりましょう! やらなければならないのです!』
謎の声は妙に明るい。そんなにネコチヤンが見たいのだろうかと思えるぐらいに、テンションが高かった。
まあ、それでこの町の平和が保たれるならと了承する。
『了解しました。それではスキル、【ネコチヤン】を発動させます』
「おう!」
俺が返事をする前に、体が熱くなっていくのを感じた。そして……俺の体はみるみるうちに、でっかいトカゲのようになっていく。
真っ白な体は珍しい品種のようだ。でも尻尾だけは、なんか猫のままというか……もふもふな毛がついたままだった。
『あなた様、とってもかわいいです!』
「……いや、これ何かおかしくない?」
完全に珍獣というか、キメラ状態じゃないか。こんなの誰かに見られたら、宇宙人のように捕獲されて実験体にされるのがヲチだ。
『ご心配には及びません。その姿は、この世界で【オオネコトカゲ】と呼ばれています。尻尾だけが猫のように長くてふわふわ。その見た目から、そうい名前のつけられた魔物でございます』
「ふんふん。なるほどね。魔物か……って、魔物ーー!?」
ちょっと待て。そんなの見つかった瞬間に退治されるだけじゃないのか!?
慌ててそのことを謎の声に聞いた。すると謎の声は、ふふっと楽しそうに笑う。
『この魔物は、人畜無害と言われています。猫や犬同様に、人間の暮らしに普通に溶けこんで過ごしております』
「……え? 退治されないってこと?」
『はい。それどころか、そのマイペースさや尻尾の見た目から、愛好家がいるほどです。その人気はなかなかでして……年に一回、愛好家の中で品評会が行われるほどです』
「とことん、常識通じない世界じゃないか!」
『それはそうですよ。ここは異世界。その名が、【モフモーフ】というぐらいですから』
「初めてこの世界の名前聞いた! というか、何その適当な名前!」
『あなた様。それよりも今は……』
「おっと。そうだったな。よーし……探索開始にゃ!」
産まれたばかりの仔猫よりも小さなサイズになった俺は、竈門に何が起きたのか。それを調べに、パン屋へと潜入した。
「ん? どこがだ? 鳥とかをプレゼントされるよりは、よっぽどマシだろ?」
『……そういうことではなく』
「あっ! もしかして……食ってないやつがよかったのか!? ああ……ハゲータには、申し訳ないことをしなぁ」
『天然かよ!? しかも、何かわいいポーズとっちゃってるんですか!?』
かわいいポーズとは何だろうか。俺はただ、お尻が痒いから、片足上げて舐めてるだけだってのに。
謎の声はときどきわからないことを言う。
俺がそうあきれていると、謎の声に咳払いをされてしまった。
『あなた様、見てください。ハゲータさんの、あの、何とも言えない表情を』
そう言われ、彼を見る。
ハゲータは骨だけになった魚の尻尾を摘み、乾いた笑い声をあげていた。
『ゴミだから捨てたい。でも、あなた様が嬉しそうにプレゼントしてくるものだから、捨てるに捨てれないといった感情です』
「……マジか」
悪いことをしてしまったのかもしれない。そう思い、骨を奪おうと、お尻を上げて狙いを定めた。そのとき……ドンッ! という、大きな爆発が起きた。一体なんだと探ってみれば、真向かいにあるパン屋さんから煙が上がっている。
「おい、大丈夫か!?」
「大変だ! 怪我人はいるか!?」
突然の爆発に、町は一気に緊張の糸に絡まっていった。パン屋さんから救出されたのは若い男と、年配の女性のよう。二人は煤だらけになっていた。幸いにも怪我はないようで、呆然と立ち尽くしている。
町の人たちが二人に話を聞くと、どうやら竈門が爆発した化膿性があるようだ。理由はわからないけれど、焼いていたら焦げ臭くなったそう。そしてあっという間に、煙まみれになり……
「──今にいたるってわけか。……謎の声さん、どう思う?」
『わかりません。ですが、竈門を調べてみる必要はあると思います』
謎の声の意見には、俺も賛成だった。だけどそうなると、どうやって調べるかが課題となる。猫として侵入したとしても、竈門の中までは調べられないだろう。
体が柔らかくても、限界というものがあるからだ。
「……俺たちじゃ無理っぽいな」
『お待ちください。諦めるのはまだ早いかと』
「ん? 何で?」
少しだけ、わくわくした気分になる。そわそわしながら尻尾を左右にふった。
『ネコチヤン、という言葉をご存知でしょうか?』
聞いたことがないなと、首を左右にふる。顎をガシガシと掻き、教えてよとお願いしてみた。
『……んん! かわいい! ……じゃなくて。こほんっ! ネコチヤンというのは、猫のようなものが映ったときに使われます』
妙な言い方をするな。猫のようなものとは、いったんなんなのだろうか? もしかして猫に似た新種の生き物なのか。それとも……
『当たらずとも遠からずです。実際は猫なのですが、写真などに映った姿は猫ではないとう……猫を撮っていたはずなのに、なぜか猫になっていない。そんな感じの用語です』
「あー……あれか? 猫のはずなのに、なぜか体の長い蛇っぽいものが撮れてしまった! みたいな?」
『はい。だいたい、そんな感じです。そしてそのネコチヤンはこの世界では、猫ではない別の物質へと体を変化させることが可能となります』
「なるほど! ちょうど今が、そのスキルを使うときってわけだな!?」
『はい。そのとおりです! 是非、やりましょう! やらなければならないのです!』
謎の声は妙に明るい。そんなにネコチヤンが見たいのだろうかと思えるぐらいに、テンションが高かった。
まあ、それでこの町の平和が保たれるならと了承する。
『了解しました。それではスキル、【ネコチヤン】を発動させます』
「おう!」
俺が返事をする前に、体が熱くなっていくのを感じた。そして……俺の体はみるみるうちに、でっかいトカゲのようになっていく。
真っ白な体は珍しい品種のようだ。でも尻尾だけは、なんか猫のままというか……もふもふな毛がついたままだった。
『あなた様、とってもかわいいです!』
「……いや、これ何かおかしくない?」
完全に珍獣というか、キメラ状態じゃないか。こんなの誰かに見られたら、宇宙人のように捕獲されて実験体にされるのがヲチだ。
『ご心配には及びません。その姿は、この世界で【オオネコトカゲ】と呼ばれています。尻尾だけが猫のように長くてふわふわ。その見た目から、そうい名前のつけられた魔物でございます』
「ふんふん。なるほどね。魔物か……って、魔物ーー!?」
ちょっと待て。そんなの見つかった瞬間に退治されるだけじゃないのか!?
慌ててそのことを謎の声に聞いた。すると謎の声は、ふふっと楽しそうに笑う。
『この魔物は、人畜無害と言われています。猫や犬同様に、人間の暮らしに普通に溶けこんで過ごしております』
「……え? 退治されないってこと?」
『はい。それどころか、そのマイペースさや尻尾の見た目から、愛好家がいるほどです。その人気はなかなかでして……年に一回、愛好家の中で品評会が行われるほどです』
「とことん、常識通じない世界じゃないか!」
『それはそうですよ。ここは異世界。その名が、【モフモーフ】というぐらいですから』
「初めてこの世界の名前聞いた! というか、何その適当な名前!」
『あなた様。それよりも今は……』
「おっと。そうだったな。よーし……探索開始にゃ!」
産まれたばかりの仔猫よりも小さなサイズになった俺は、竈門に何が起きたのか。それを調べに、パン屋へと潜入した。
11
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる