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町を散歩しよう
串焼き
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曹朱に連れられでやってきたのは、屋台通りという場所だった。大通りの一角にあり、たくさんの屋台が並んでいる。包子や小籠包、炒飯に餃子など。あらゆる食べ物がたくさん売っていた。そこかしこの屋台から焼けた皮や肉の香りがして、香 麗然のお腹はますます鳴っていく。
「……美味しそう。あ、曹朱のお薦めは何?」
「そうだな……あえて言うなら、串焼きだ。串に刺さった羊肉が香ばしいのはもちろん、何と言っても甘辛のタレがいいな。羊肉の全体に絡んでいるんだ。焼きネギと一緒に食べると、肉の脂っこさがスッと引いて、さっぱりした味になるんだ」
美味。曹朱は両目を閉じて、悦るように言った。
それを見た香 麗然は我慢できるはずもなく……彼の腕を引っぱり、早く案内してと我先に進んでいく。
「あ、おい! そんなに引っ張るな。店は逃げないぞ?」
「何、言ってるのよ? そんなに美味しいなら、売り切れちゃうかもしれないでしょ?」
「……そ、それもそうだな」
引っぱる彼の腕は、鍛え上げられた筋肉ががっつり とついていた。香 麗然は曹朱の逞しい体つきに改めて驚く。けれど今の目的はそんなことではないと、一瞬で脳を切り替えた。
腕を引っ張られた青年の顔や耳が、真っ赤になっていることにも気づかずに──
目的地の串家に着くと、香 麗然たちは早速並ぶ。串屋は行者の列ができていて、二人の番までには、少々時間がかかりそうだった。
自分たちの後ろを見れば、次から次へと人が並んでいく。
(うわ! 私たちのが最後尾だったはずなのに。もうこんなに後ろに並んでいる。すごい人気ね。これ……私たちの、残ってるわよね?)
少しばかり心配になってきた。そのとき……
「……ん?」
串焼きを買った人が彼女の横を通り過ぎたとき、香 麗然の嗅覚が何かを捉える。くんくんと、犬のように串焼きの匂いを嗅いだ。
「あれ?」
「ん? どうしたんだ?」
「あ、うん。なんかさっき、串焼き持ってた人がここ通ったときにね。妙な香りがしたの。串焼きにしては、珍しいなっていうような匂いよ」
「…… したか? 確かに、肉の焼ける匂いはしたが」
どうやら彼は何も感じていないよう。
「……美味しそう。あ、曹朱のお薦めは何?」
「そうだな……あえて言うなら、串焼きだ。串に刺さった羊肉が香ばしいのはもちろん、何と言っても甘辛のタレがいいな。羊肉の全体に絡んでいるんだ。焼きネギと一緒に食べると、肉の脂っこさがスッと引いて、さっぱりした味になるんだ」
美味。曹朱は両目を閉じて、悦るように言った。
それを見た香 麗然は我慢できるはずもなく……彼の腕を引っぱり、早く案内してと我先に進んでいく。
「あ、おい! そんなに引っ張るな。店は逃げないぞ?」
「何、言ってるのよ? そんなに美味しいなら、売り切れちゃうかもしれないでしょ?」
「……そ、それもそうだな」
引っぱる彼の腕は、鍛え上げられた筋肉ががっつり とついていた。香 麗然は曹朱の逞しい体つきに改めて驚く。けれど今の目的はそんなことではないと、一瞬で脳を切り替えた。
腕を引っ張られた青年の顔や耳が、真っ赤になっていることにも気づかずに──
目的地の串家に着くと、香 麗然たちは早速並ぶ。串屋は行者の列ができていて、二人の番までには、少々時間がかかりそうだった。
自分たちの後ろを見れば、次から次へと人が並んでいく。
(うわ! 私たちのが最後尾だったはずなのに。もうこんなに後ろに並んでいる。すごい人気ね。これ……私たちの、残ってるわよね?)
少しばかり心配になってきた。そのとき……
「……ん?」
串焼きを買った人が彼女の横を通り過ぎたとき、香 麗然の嗅覚が何かを捉える。くんくんと、犬のように串焼きの匂いを嗅いだ。
「あれ?」
「ん? どうしたんだ?」
「あ、うん。なんかさっき、串焼き持ってた人がここ通ったときにね。妙な香りがしたの。串焼きにしては、珍しいなっていうような匂いよ」
「…… したか? 確かに、肉の焼ける匂いはしたが」
どうやら彼は何も感じていないよう。
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