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ドキドキ同棲編
駄々っ子
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「あんまり保たなかった。希帆さんがキュウキュウ締め付けるからだよ~!」
弾む息を早々に整えた大輔くんが、私の顳顬や耳殻に掠めるようなキスを何度も落としてきた。
「ふふふ♡希帆さん、おかわり♡」
いつもの如く繋げたままの状態で私に覆い被さる大輔くんが、無邪気なおねだりをする。
私はそれに答えないで項垂れた。
「…希帆さん?」
私の異変に気付いたのか、大輔くんが不安気な声音を出す。
「もう………やだ…」
「え?」
私の口からポロリと本音が溢れた。
「もぉぉぉ、やだぁぁぁぁぁぁ」
「わ!わ!?希帆さん!?」
覗き込むように私の顔を窺っていた大輔くんを押し退け、ジタバタと地団駄を踏む。
彼が慌てたように私の背中や頭を優しく撫でるのを、イヤイヤをする子供のように振り払った。
けれど大輔くんがまだ私の膣内に居る状態だし、キッチンと大輔くんに挟まれて身動きが取れないしで逃げ出せる訳ではない。
「もうヤダ、抜いて!離して!アッチ行って!」
首を横に振ると、私の目から涙が飛んだ。
下半身をお互いに繋げたままで嫌だ、嫌だと喚く自分が情けなくてまた泣けた。
「希帆さん落ち着いて。どうしたの?痛かった?」
「嫌なの!アッチ行って!!」
大輔くんの元カノのことで心が苦しくなるのが嫌だ。
そんな自分にお構いなしな大輔くんの素直さが嫌だ。
でも、ただ喚くだけの私を優しく宥めてくれる大輔くんに、自分の心の内を上手に伝えられない自分が一番嫌だ。
私は駄々っ子のように、みっともなく涙を流すばかりだった。
「落ち着いた?」
柔らかい声音で囁くように尋ねられ、目の前にそっとホットココアが差し出される。
私は鼻を啜りながらポタリと項垂れるように首を下げた。
「泣いちゃった理由、俺に説明出来そう?」
その質問に唇をキュッと噛む。
湯気の上がるマグカップを見下ろしながら、自分の頭の中を整理しようと試みた。
あの美女に言われた言葉が色濃く残っている。
アカリちゃんの言葉も気がかりだ。
大輔くんにとって、自分が『ハジメテ』の相手じゃないから何だと言うのだろう。
大輔くんに限って、帰りが遅いと言う理由だけで浮気をしているなんて馬鹿馬鹿しい。
それなのに、簡単に乱される自分の幼さに辟易する。
「……」
何度か口をパクパクとさせて、何を言ったら正解か分からなくて結局口を閉じる。
このまま感情的に話してしまったら、これまで元カレにしてきたように彼を責め立ててしまいそうだった。
「希帆さん?」
そんな私を気遣うように、困ったような顔をした大輔くんの大きな手の平が私の肩に乗せられる。
一見すると情けない表情をしているのに、この人はどこまでも美しい。
こんな人だから私は不要な心配をしなくてはいけない。
だいたい、ここ数日、私に内緒でどこに行っているのだろう。
聞いてもはぐらかされてしまうし、そうなると無理に聞けなくなってしまう。
自分自身の誕生日が近いことから、彼の誕生日を何気なく尋ねたときも煙に巻かれてしまった。
把握されたがりなくせに、なんで教えてくれないんだろう。
「なにか悩んでるならちゃんと話して?俺じゃ頼りにならない?」
私を覗き込む大輔くんは、まるで自分がつらいみたいな顔で、心配でたまらないという表情を浮かべている。
こんな風に心配してくれる恋人が、私の過去に居ただろうか?
「仕事のこと?ごめんね、ゆっくり話聞けなくて」
そうだ。そう。
仕事のことも考えなくてはいけない。
今の会社に転職したのは3年ほど前だったろうか。
居酒屋で意気投合した社長に「仕事探しとんならウチに来ぃや!」と誘ってもらったのだ。
義理人情に厚い社長は、人を疑うことを知らない。
そのせいで弊社は現在倒産の危機真っ只中である。
早い話、社長が騙されて資金難なのだ。
大輔くんの元カノのことも、浮気疑惑も、そして仕事のことも…。
ここ最近、私の頭は悩み事の宝石箱やぁ♡状態である。
全くをもって嬉しくない。
そんな宝石箱はコンクリ詰めにして東京湾辺りに沈めたい。
「…仕事のことも悩んでるけど、今日泣いたのは別件だよ」
ポソリと言葉を紡ぐと、大輔くんが労わるように私の背中を撫でてくれた。
その先を促すような顔を向けて来るから、私はため息交じりに続ける。
「私は色々と悩んでるのに、大輔くんは平和だな~って思って…。玄関に引き続き、台所にも仕込んであるって思わなかったからさ。なんか、頭に来ちゃった」
出来るだけ重くならないように、何気ない雰囲気で話したのが悪かったのだろう。
大輔くんは私が色欲に浮かされて駄々っ子化したと捉えたらしい。
「ごめんごめん♡でも、まだまだ仕込んでるから楽しみにしててね♡」
「いや…そう言う話じゃなくて…」
「え~?でも、希帆さんも気持ち良さそうにしてたじゃない?希帆さんの悩み事を吹き飛ばすくらいに頑張るからさ、…おかわり、ちょうだい♡」
そう言って誰もが見惚れる笑顔で、大輔くんがチュッ、と触れるだけの口付けをしてくる。
いつもは『顔が良いって凄いな』と感心して流されてしまうところだ。
けれど、どうしてだろう。
今日は腹が立って仕方がなかった。
弾む息を早々に整えた大輔くんが、私の顳顬や耳殻に掠めるようなキスを何度も落としてきた。
「ふふふ♡希帆さん、おかわり♡」
いつもの如く繋げたままの状態で私に覆い被さる大輔くんが、無邪気なおねだりをする。
私はそれに答えないで項垂れた。
「…希帆さん?」
私の異変に気付いたのか、大輔くんが不安気な声音を出す。
「もう………やだ…」
「え?」
私の口からポロリと本音が溢れた。
「もぉぉぉ、やだぁぁぁぁぁぁ」
「わ!わ!?希帆さん!?」
覗き込むように私の顔を窺っていた大輔くんを押し退け、ジタバタと地団駄を踏む。
彼が慌てたように私の背中や頭を優しく撫でるのを、イヤイヤをする子供のように振り払った。
けれど大輔くんがまだ私の膣内に居る状態だし、キッチンと大輔くんに挟まれて身動きが取れないしで逃げ出せる訳ではない。
「もうヤダ、抜いて!離して!アッチ行って!」
首を横に振ると、私の目から涙が飛んだ。
下半身をお互いに繋げたままで嫌だ、嫌だと喚く自分が情けなくてまた泣けた。
「希帆さん落ち着いて。どうしたの?痛かった?」
「嫌なの!アッチ行って!!」
大輔くんの元カノのことで心が苦しくなるのが嫌だ。
そんな自分にお構いなしな大輔くんの素直さが嫌だ。
でも、ただ喚くだけの私を優しく宥めてくれる大輔くんに、自分の心の内を上手に伝えられない自分が一番嫌だ。
私は駄々っ子のように、みっともなく涙を流すばかりだった。
「落ち着いた?」
柔らかい声音で囁くように尋ねられ、目の前にそっとホットココアが差し出される。
私は鼻を啜りながらポタリと項垂れるように首を下げた。
「泣いちゃった理由、俺に説明出来そう?」
その質問に唇をキュッと噛む。
湯気の上がるマグカップを見下ろしながら、自分の頭の中を整理しようと試みた。
あの美女に言われた言葉が色濃く残っている。
アカリちゃんの言葉も気がかりだ。
大輔くんにとって、自分が『ハジメテ』の相手じゃないから何だと言うのだろう。
大輔くんに限って、帰りが遅いと言う理由だけで浮気をしているなんて馬鹿馬鹿しい。
それなのに、簡単に乱される自分の幼さに辟易する。
「……」
何度か口をパクパクとさせて、何を言ったら正解か分からなくて結局口を閉じる。
このまま感情的に話してしまったら、これまで元カレにしてきたように彼を責め立ててしまいそうだった。
「希帆さん?」
そんな私を気遣うように、困ったような顔をした大輔くんの大きな手の平が私の肩に乗せられる。
一見すると情けない表情をしているのに、この人はどこまでも美しい。
こんな人だから私は不要な心配をしなくてはいけない。
だいたい、ここ数日、私に内緒でどこに行っているのだろう。
聞いてもはぐらかされてしまうし、そうなると無理に聞けなくなってしまう。
自分自身の誕生日が近いことから、彼の誕生日を何気なく尋ねたときも煙に巻かれてしまった。
把握されたがりなくせに、なんで教えてくれないんだろう。
「なにか悩んでるならちゃんと話して?俺じゃ頼りにならない?」
私を覗き込む大輔くんは、まるで自分がつらいみたいな顔で、心配でたまらないという表情を浮かべている。
こんな風に心配してくれる恋人が、私の過去に居ただろうか?
「仕事のこと?ごめんね、ゆっくり話聞けなくて」
そうだ。そう。
仕事のことも考えなくてはいけない。
今の会社に転職したのは3年ほど前だったろうか。
居酒屋で意気投合した社長に「仕事探しとんならウチに来ぃや!」と誘ってもらったのだ。
義理人情に厚い社長は、人を疑うことを知らない。
そのせいで弊社は現在倒産の危機真っ只中である。
早い話、社長が騙されて資金難なのだ。
大輔くんの元カノのことも、浮気疑惑も、そして仕事のことも…。
ここ最近、私の頭は悩み事の宝石箱やぁ♡状態である。
全くをもって嬉しくない。
そんな宝石箱はコンクリ詰めにして東京湾辺りに沈めたい。
「…仕事のことも悩んでるけど、今日泣いたのは別件だよ」
ポソリと言葉を紡ぐと、大輔くんが労わるように私の背中を撫でてくれた。
その先を促すような顔を向けて来るから、私はため息交じりに続ける。
「私は色々と悩んでるのに、大輔くんは平和だな~って思って…。玄関に引き続き、台所にも仕込んであるって思わなかったからさ。なんか、頭に来ちゃった」
出来るだけ重くならないように、何気ない雰囲気で話したのが悪かったのだろう。
大輔くんは私が色欲に浮かされて駄々っ子化したと捉えたらしい。
「ごめんごめん♡でも、まだまだ仕込んでるから楽しみにしててね♡」
「いや…そう言う話じゃなくて…」
「え~?でも、希帆さんも気持ち良さそうにしてたじゃない?希帆さんの悩み事を吹き飛ばすくらいに頑張るからさ、…おかわり、ちょうだい♡」
そう言って誰もが見惚れる笑顔で、大輔くんがチュッ、と触れるだけの口付けをしてくる。
いつもは『顔が良いって凄いな』と感心して流されてしまうところだ。
けれど、どうしてだろう。
今日は腹が立って仕方がなかった。
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