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ドキドキ同棲編
妹想いなお兄様③
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会場内は色々な光に満たされていた。
スポットライトを浴びるセクシーなダンサー、煌びやかなライトの下の美味しそうなお料理、そしてギラギラとした眼光のゲストたち。
黒木グループの長男であるイツくんに何とか取り入りたい策略家と、ここに集まったセレブのおこぼれに預かりたい一般ピープルのマリアージュだ。
それから、独身のイツくんの妻の座を狙う女性も多く集まっている。
「うほぉい♡美味しそうなお料理が沢山あるぅ~!オマール海老でしょ、ローストビーフでしょ、キッシュもあるな、それから…」
「こらこら、希帆さん。まずは逸弥さんたちと合流しなきゃでしょ?」
「え~…。さきにちょこっとだけ食べちゃダメぇ?」
「俺のこと紹介するより、食べ物をとるんだ?」
「……いや…………違うけど」
「なに、その間」
ペソっと首に這わされた大輔くんの手がひんやりとしている。
この手が本格的に冷たくなる前に態度を改めた方が良さそうだ。
「イツくんたちにLIMEしてみるね!紹介する方が何よりも大事だからね!!オマール海老よりもね!!!」
サクサクとLIMEを送ると、慶太くんが付けたインカムに連絡が入る。
どうやらイツくんから直に指示が入ったようだ。
「…はい…VIPっすね……はい」
ほぉん。VIPルームね。
慶太くんの返答を聞きながら、吹き抜けの会場の3階部分に目を移す。
このお店には2階に半個室の作りの席が8つ、そして3階に完全個室の部屋が1つある。
その3階にある完全個室の部屋がVIPルームなのだ。
「3階まで行ったらお料理取れないじゃん…」
ついつい恨みがましい声を出してしまうのは仕方がないと思う。
だって、りゅうにぃに大輔くんを紹介する為にわざわざパーティーに出席したのは他でもない、美味しいお料理を堪能するためなのだ。
それがなければ三富くんのお店にお邪魔しているところである。
「初めてパーティーに参加するわけじゃないんでしょ?今回くらい、ちょっと我慢しようよ希帆さん」
ね?と幼女のワガママをあやすように、大輔くんが私の顔を覗き込んでくる。
「だぁってぇ…。これまでは毎回イツくんの隣にべったり付いて、ゲスト相手にニコニコと笑ってないといけなかったんだもんっ!これまでお料理堪能出来なかった分、今日こそはって思ってたんだもん!!」
ブーブー!と頬を膨らませて訴えると、大輔くんの眉間に皺が寄った。
「もしかして、今回みたいに逸弥さんからドレス贈られてたの?それ着て逸弥さんの隣に?」
「そだよ~。ドレス用意する経済的余裕ないし、主催者のイツくんに恥をかかせるわけにいかないし」
今夜も大輔くんが用意してくれたドレスがなければ、イツくんが事前に寄越してくれたものを着るつもりでいた。
イツくんは女性に対してマメな男なので、ドレスから靴からバッグまで一式を揃えてくれる。
「いつも、あんな……ウエディングドレスみたいなの着てたの?」
「おん?にゃはは!確かに毎回白いドレスだったけど、ウエディングドレスってぇ~!ないない~」
小さい頃からの付き合いのイツくんは、私が食べこぼしが酷い事を知っているくせに白いドレスばかりを選びたがる。
粗相をしてしまって純白のドレスにシミを作るのが怖くて、毎回ひもじい思いをする羽目になっていたのだ。
用意してもらった手前、ドレスの色に難癖付ける訳にもいかず、借りて来た猫のようにお行儀良くイツくんの隣で挨拶に励むばかりだった。
「多分だけど、逸弥さんは希帆さんを結婚相手として周囲に紹介しようとしてたんだと思うよ。やっぱり、逸弥さんは希帆さんのことが好きだと思う。…異性として」
真剣な表情の大輔くんにの言葉に、私は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を返してしまう。
「にゃはははははは!!それはあり得ないって!」
「この前もそう言って否定してたけど、どうして断言出来るの?」
「だって、私、ふ…」
『振られたもん』と言いそうになった口を慌てて閉じた。
りゅうにぃに紹介する直前に、大輔くんに余計な情報を伝える必要はないはずだ。
下手をすると魔王が降臨してしまう。それだけは避けねばなるまい。
「『ふ』?」
「いやいや…えーっと…。そう、『不束者』!私、不束者だから、黒木グループのお嫁さんとして相応しくないし、何よりイツくんにとっても私は妹だもん!異性として見る訳がないじゃん!!」
それより、そろそろ行かないと!と、大輔くんの腕をとる。
手持ち無沙汰に私たちを待っていた慶太くんと日和ちゃんに頭を下げ、3階に続くエレベーターに乗り込んだ。
納得がいっていない様子の大輔くんだったけれど、エレベーターが3階に着いたときには別の表情になっていた。
「…龍臣さんに失礼がないようにしないと……」
そう呟く大輔くんは、普段の落ち着いた印象とは違って、とても大学生らしい面持ちだ。
イツくんとは惚れ惚れするくらい、対等に渡り合っていたくせに…。
私の家族だから緊張しているのだろうか。
不謹慎だけれど、愛しい恋人の初めてとも言える緊張した雰囲気に、私の頬は緩んでしまうのだった。
スポットライトを浴びるセクシーなダンサー、煌びやかなライトの下の美味しそうなお料理、そしてギラギラとした眼光のゲストたち。
黒木グループの長男であるイツくんに何とか取り入りたい策略家と、ここに集まったセレブのおこぼれに預かりたい一般ピープルのマリアージュだ。
それから、独身のイツくんの妻の座を狙う女性も多く集まっている。
「うほぉい♡美味しそうなお料理が沢山あるぅ~!オマール海老でしょ、ローストビーフでしょ、キッシュもあるな、それから…」
「こらこら、希帆さん。まずは逸弥さんたちと合流しなきゃでしょ?」
「え~…。さきにちょこっとだけ食べちゃダメぇ?」
「俺のこと紹介するより、食べ物をとるんだ?」
「……いや…………違うけど」
「なに、その間」
ペソっと首に這わされた大輔くんの手がひんやりとしている。
この手が本格的に冷たくなる前に態度を改めた方が良さそうだ。
「イツくんたちにLIMEしてみるね!紹介する方が何よりも大事だからね!!オマール海老よりもね!!!」
サクサクとLIMEを送ると、慶太くんが付けたインカムに連絡が入る。
どうやらイツくんから直に指示が入ったようだ。
「…はい…VIPっすね……はい」
ほぉん。VIPルームね。
慶太くんの返答を聞きながら、吹き抜けの会場の3階部分に目を移す。
このお店には2階に半個室の作りの席が8つ、そして3階に完全個室の部屋が1つある。
その3階にある完全個室の部屋がVIPルームなのだ。
「3階まで行ったらお料理取れないじゃん…」
ついつい恨みがましい声を出してしまうのは仕方がないと思う。
だって、りゅうにぃに大輔くんを紹介する為にわざわざパーティーに出席したのは他でもない、美味しいお料理を堪能するためなのだ。
それがなければ三富くんのお店にお邪魔しているところである。
「初めてパーティーに参加するわけじゃないんでしょ?今回くらい、ちょっと我慢しようよ希帆さん」
ね?と幼女のワガママをあやすように、大輔くんが私の顔を覗き込んでくる。
「だぁってぇ…。これまでは毎回イツくんの隣にべったり付いて、ゲスト相手にニコニコと笑ってないといけなかったんだもんっ!これまでお料理堪能出来なかった分、今日こそはって思ってたんだもん!!」
ブーブー!と頬を膨らませて訴えると、大輔くんの眉間に皺が寄った。
「もしかして、今回みたいに逸弥さんからドレス贈られてたの?それ着て逸弥さんの隣に?」
「そだよ~。ドレス用意する経済的余裕ないし、主催者のイツくんに恥をかかせるわけにいかないし」
今夜も大輔くんが用意してくれたドレスがなければ、イツくんが事前に寄越してくれたものを着るつもりでいた。
イツくんは女性に対してマメな男なので、ドレスから靴からバッグまで一式を揃えてくれる。
「いつも、あんな……ウエディングドレスみたいなの着てたの?」
「おん?にゃはは!確かに毎回白いドレスだったけど、ウエディングドレスってぇ~!ないない~」
小さい頃からの付き合いのイツくんは、私が食べこぼしが酷い事を知っているくせに白いドレスばかりを選びたがる。
粗相をしてしまって純白のドレスにシミを作るのが怖くて、毎回ひもじい思いをする羽目になっていたのだ。
用意してもらった手前、ドレスの色に難癖付ける訳にもいかず、借りて来た猫のようにお行儀良くイツくんの隣で挨拶に励むばかりだった。
「多分だけど、逸弥さんは希帆さんを結婚相手として周囲に紹介しようとしてたんだと思うよ。やっぱり、逸弥さんは希帆さんのことが好きだと思う。…異性として」
真剣な表情の大輔くんにの言葉に、私は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を返してしまう。
「にゃはははははは!!それはあり得ないって!」
「この前もそう言って否定してたけど、どうして断言出来るの?」
「だって、私、ふ…」
『振られたもん』と言いそうになった口を慌てて閉じた。
りゅうにぃに紹介する直前に、大輔くんに余計な情報を伝える必要はないはずだ。
下手をすると魔王が降臨してしまう。それだけは避けねばなるまい。
「『ふ』?」
「いやいや…えーっと…。そう、『不束者』!私、不束者だから、黒木グループのお嫁さんとして相応しくないし、何よりイツくんにとっても私は妹だもん!異性として見る訳がないじゃん!!」
それより、そろそろ行かないと!と、大輔くんの腕をとる。
手持ち無沙汰に私たちを待っていた慶太くんと日和ちゃんに頭を下げ、3階に続くエレベーターに乗り込んだ。
納得がいっていない様子の大輔くんだったけれど、エレベーターが3階に着いたときには別の表情になっていた。
「…龍臣さんに失礼がないようにしないと……」
そう呟く大輔くんは、普段の落ち着いた印象とは違って、とても大学生らしい面持ちだ。
イツくんとは惚れ惚れするくらい、対等に渡り合っていたくせに…。
私の家族だから緊張しているのだろうか。
不謹慎だけれど、愛しい恋人の初めてとも言える緊張した雰囲気に、私の頬は緩んでしまうのだった。
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