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ドキドキ同棲編
希帆ちゃんの恋愛相談室⑨
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痛みに備えて目を瞑っていたが、一向に衝撃がやってこない。
そろそろと目を開くと、私の身体は宙に浮いていた。
「希帆さん、何してるの?」
私の身体を抱えているのは私の大好きな彼氏である。
そう、大輔くんだ。
「にゃはははは!だいすけくんら~♡ぎゅってして~♡」
もうギュッとされている状態だけど、不意に現れた大好きな美丈夫にハスハスと心が跳ねてやまない。
天井と床がクルクル回転している。べらぼうに酔ってしまった。
それでも気分はすこぶる良い。
だって大輔くんが来てくれたから。
「ヘベレケにならないように努力するんじゃなかったの?俺が居ないのにこんなになるまで酔って…。お仕置きが必要?」
「きほちゃんは、おしおきじゃなくて、ぎゅってしてほし!!!」
背後から抱えるような状態だったのを一旦解放して、大輔くんが私を見据える。
私は甘えん坊な5歳児のようにイヤイヤをしながら両手を広げた。
頭の中は至って正常なのに、口から出る言葉はどうしてこんなに幼くなるのか。
小さい頃に甘えられなかった鬱憤を晴らそうとしているのだろうか。
我ながら、幼い…。
「………はぁ~~~」
眉間に皺を寄せて大きなため息をつく大輔くんに、オロオロとしてしまう。
「………や?……やなら、がまん、する……」
先ほどまでの高揚感が嘘のように、私の心はペチャンコになってしまった。
まぁね?アラサーの酔いちくれの相手なんて嫌だよね…。
でも、そんなに大きなため息を吐くこともないじゃん。
泣いちゃうぞ?歳を取ったら涙脆くなるんだぞ?
あ、あかん。ほんとにウルウルして来た。
「いいもん!だいすけくんの、ばーか!ばーか!!」
頭の悪い文句を並べながらダッ!と駆け出す。
と言っても店内なので、数歩でイツくんの腕の中に収まった。
高そうな生地のスーツに涙と、ついでに鼻水を擦り付ける。
イツくんのことだからマルマーニあたりの高級スーツだろう。私の鼻水が良いアクセントになるに違いない。ふふん。
「希帆さん!」
背後から焦ったような大輔くんの声が掛けられる。
それに答えたのはイツくんだ。
「…お前、誰だ?」
「希帆さんの恋人です」
「あ゛?ただのガキじゃねぇか。希帆よりも随分と歳下だろ?ガキはガキと連んでな」
「俺が希帆さんじゃないとダメなんです。真面目にお付き合いさせて頂いてます」
おぉぉぉ…。
メンチ切ってるイツくんに正面から向き合ってる。
りゅうにぃ程じゃないけど、イツくんも中々の強面なのに堂々として…。
…あ、ヤバいな。キュンとしちゃう。
「希帆?」
モゾモゾと身じろいだ私にイツくんが怪訝な声を出す。
イツくんの腕から抜け出ると、再びフラフラと大輔くんへと歩を向けた。
「……ギュッてして?」
こてん、と小首を傾げると、一拍置いて大輔くんがしっかりと抱き締めてくれる。
大輔くんの匂いに包まれて、更に夢心地になった。
スンスン、クンクンと鼻を鳴らしてしまう。
顔が良いだけじゃなくて匂いまで最高なんだよなぁ…。
「ハハハ!希帆さん、擽ったいよ」
夢中になって彼の首筋を嗅いでいたら、大輔くんから笑い声が上がる。
笑い声が少し掠れるのも色っぽくて好きだ。
この人の全てが私を駆り立てる。
「………もう、かえる!」
「恋愛相談はもう良いの?」
「ん~…」
アカリちゃんと日和ちゃんに視線を移すと、二人から『大丈夫!』の意をそれぞれジェスチャーで返された。
イツくんは見るからに不機嫌そうだ。
そうだよなぁ……。私の連絡で駆け付けてくれたのに、あまりにも蔑ろにし過ぎだよねぇ。
「イツくん、きてくれて、ありがとうね?こんど、おさけ、おごるからね!!」
「……酒は良いから、今度ゆっくり飯行こう」
「ん!!おやすみのひ、れんらくするね!!!」
「………了解」
イツくんは目を細めると私の頭を優しく撫でてくれた。
大輔くんに抱きついたまま、イツくんが撫でるに任せていると、頭上でバチバチッ、と音がしたーーー気がする。
「…お前も飯行くぞ、希帆とは別にな。希帆の兄貴も会いたがるだろうし、三人でキッチリ話つけようや」
「希帆さんのご家族には挨拶をしたいと思っていたので、ぜひ宜しくお願いします。いずれ俺の家族になる方ですし、希帆さんのお兄さんにお会いするのが楽しみです」
店内の温度が下がった気がする。
二人とも口角を上げていながら、目が笑っていない。
「ふたりは、おくらなくて、だいじょうぶ?」
アカリちゃん達に声を掛けると、二人からニッコリ笑顔が返って来た。
「私も彼に迎えに来て貰います!会いたくなっちゃったから!!」
「……私も…彼の家近いし……今から…行こうかな…♡」
キュンは伝染するんだよなぁ。みんなまとめてキュンです。
三富くんにも、イツくんにもキュンが舞い降りますように…。
私はイツくんの顔をじっと見つめた。
「ん?どうした、希帆?やっぱ、俺んとこ来るか?」
イツくんの軽口に反応してか、大輔くんがギュッと抱き締めてくれる。
隙間なく全身を包み込まれた気がして安心してしまった。
何という幸福感!!!
「イツくんも、はやく、いいひと、みつけなね?」
ニコニコと笑顔でイツくんに言い渡すと、アカリちゃんたちから『むごい…』と呟かれてしまう。
イツくんは虚無を抱えた目をしていた。
なにごと?
私が首を傾げていると、頭上から大輔くんの甘い声が降ってくる。
「さて、無事に引導を渡したところで、帰ろうか?歩ける?」
「…あるけない、っていったら、どうする?」
「…どうして欲しいの?」
「……………だっこ」
普段は絶対に出来ないけれど、お酒の力を借りて甘えてみる。
酔っているから仕方ないんだ、って自分に言い聞かせて。
だって、大輔くんは私の願い事を叶えてくれるって分かっているから。
その証拠に、大輔くんは私を軽々と抱き上げて、湯気を出しそうなくらいに赤くなった私の額にキスを一つ落としてくれた。
そろそろと目を開くと、私の身体は宙に浮いていた。
「希帆さん、何してるの?」
私の身体を抱えているのは私の大好きな彼氏である。
そう、大輔くんだ。
「にゃはははは!だいすけくんら~♡ぎゅってして~♡」
もうギュッとされている状態だけど、不意に現れた大好きな美丈夫にハスハスと心が跳ねてやまない。
天井と床がクルクル回転している。べらぼうに酔ってしまった。
それでも気分はすこぶる良い。
だって大輔くんが来てくれたから。
「ヘベレケにならないように努力するんじゃなかったの?俺が居ないのにこんなになるまで酔って…。お仕置きが必要?」
「きほちゃんは、おしおきじゃなくて、ぎゅってしてほし!!!」
背後から抱えるような状態だったのを一旦解放して、大輔くんが私を見据える。
私は甘えん坊な5歳児のようにイヤイヤをしながら両手を広げた。
頭の中は至って正常なのに、口から出る言葉はどうしてこんなに幼くなるのか。
小さい頃に甘えられなかった鬱憤を晴らそうとしているのだろうか。
我ながら、幼い…。
「………はぁ~~~」
眉間に皺を寄せて大きなため息をつく大輔くんに、オロオロとしてしまう。
「………や?……やなら、がまん、する……」
先ほどまでの高揚感が嘘のように、私の心はペチャンコになってしまった。
まぁね?アラサーの酔いちくれの相手なんて嫌だよね…。
でも、そんなに大きなため息を吐くこともないじゃん。
泣いちゃうぞ?歳を取ったら涙脆くなるんだぞ?
あ、あかん。ほんとにウルウルして来た。
「いいもん!だいすけくんの、ばーか!ばーか!!」
頭の悪い文句を並べながらダッ!と駆け出す。
と言っても店内なので、数歩でイツくんの腕の中に収まった。
高そうな生地のスーツに涙と、ついでに鼻水を擦り付ける。
イツくんのことだからマルマーニあたりの高級スーツだろう。私の鼻水が良いアクセントになるに違いない。ふふん。
「希帆さん!」
背後から焦ったような大輔くんの声が掛けられる。
それに答えたのはイツくんだ。
「…お前、誰だ?」
「希帆さんの恋人です」
「あ゛?ただのガキじゃねぇか。希帆よりも随分と歳下だろ?ガキはガキと連んでな」
「俺が希帆さんじゃないとダメなんです。真面目にお付き合いさせて頂いてます」
おぉぉぉ…。
メンチ切ってるイツくんに正面から向き合ってる。
りゅうにぃ程じゃないけど、イツくんも中々の強面なのに堂々として…。
…あ、ヤバいな。キュンとしちゃう。
「希帆?」
モゾモゾと身じろいだ私にイツくんが怪訝な声を出す。
イツくんの腕から抜け出ると、再びフラフラと大輔くんへと歩を向けた。
「……ギュッてして?」
こてん、と小首を傾げると、一拍置いて大輔くんがしっかりと抱き締めてくれる。
大輔くんの匂いに包まれて、更に夢心地になった。
スンスン、クンクンと鼻を鳴らしてしまう。
顔が良いだけじゃなくて匂いまで最高なんだよなぁ…。
「ハハハ!希帆さん、擽ったいよ」
夢中になって彼の首筋を嗅いでいたら、大輔くんから笑い声が上がる。
笑い声が少し掠れるのも色っぽくて好きだ。
この人の全てが私を駆り立てる。
「………もう、かえる!」
「恋愛相談はもう良いの?」
「ん~…」
アカリちゃんと日和ちゃんに視線を移すと、二人から『大丈夫!』の意をそれぞれジェスチャーで返された。
イツくんは見るからに不機嫌そうだ。
そうだよなぁ……。私の連絡で駆け付けてくれたのに、あまりにも蔑ろにし過ぎだよねぇ。
「イツくん、きてくれて、ありがとうね?こんど、おさけ、おごるからね!!」
「……酒は良いから、今度ゆっくり飯行こう」
「ん!!おやすみのひ、れんらくするね!!!」
「………了解」
イツくんは目を細めると私の頭を優しく撫でてくれた。
大輔くんに抱きついたまま、イツくんが撫でるに任せていると、頭上でバチバチッ、と音がしたーーー気がする。
「…お前も飯行くぞ、希帆とは別にな。希帆の兄貴も会いたがるだろうし、三人でキッチリ話つけようや」
「希帆さんのご家族には挨拶をしたいと思っていたので、ぜひ宜しくお願いします。いずれ俺の家族になる方ですし、希帆さんのお兄さんにお会いするのが楽しみです」
店内の温度が下がった気がする。
二人とも口角を上げていながら、目が笑っていない。
「ふたりは、おくらなくて、だいじょうぶ?」
アカリちゃん達に声を掛けると、二人からニッコリ笑顔が返って来た。
「私も彼に迎えに来て貰います!会いたくなっちゃったから!!」
「……私も…彼の家近いし……今から…行こうかな…♡」
キュンは伝染するんだよなぁ。みんなまとめてキュンです。
三富くんにも、イツくんにもキュンが舞い降りますように…。
私はイツくんの顔をじっと見つめた。
「ん?どうした、希帆?やっぱ、俺んとこ来るか?」
イツくんの軽口に反応してか、大輔くんがギュッと抱き締めてくれる。
隙間なく全身を包み込まれた気がして安心してしまった。
何という幸福感!!!
「イツくんも、はやく、いいひと、みつけなね?」
ニコニコと笑顔でイツくんに言い渡すと、アカリちゃんたちから『むごい…』と呟かれてしまう。
イツくんは虚無を抱えた目をしていた。
なにごと?
私が首を傾げていると、頭上から大輔くんの甘い声が降ってくる。
「さて、無事に引導を渡したところで、帰ろうか?歩ける?」
「…あるけない、っていったら、どうする?」
「…どうして欲しいの?」
「……………だっこ」
普段は絶対に出来ないけれど、お酒の力を借りて甘えてみる。
酔っているから仕方ないんだ、って自分に言い聞かせて。
だって、大輔くんは私の願い事を叶えてくれるって分かっているから。
その証拠に、大輔くんは私を軽々と抱き上げて、湯気を出しそうなくらいに赤くなった私の額にキスを一つ落としてくれた。
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