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ドキドキ同棲編
龍臣の贖罪③【龍臣視点】
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「………アンタ、隠し子が居たわけ?」
戸口に立つ俺たちに、彼女である美由希が冷たく言い放つ。
「アホかっ!!俺はお前一筋だって知ってんだろーが!!」
「はいはい。艶子さんから聞いてるよ。希帆ちゃんでしょ」
「っだぁぁぁ!!知ってんなら変なこと言ってんなよ!」
「もっと早く連れて来いっつってんの!こんな時間まで家に帰ってなかったの?信じらんないんだけど、このばかちんが!!」
「いってぇぇぇ!!!」
いつも通り、美由希の鉄拳が俺の頭に落とされる。
ガリガリは目を白黒させて、俺たちの日常風景を眺めていた。
「美由希ちゃん美由希ちゃん、キホちゃんが怖がってる。先に中に入れてやって」
「あぁ!ごめんね、希帆ちゃん!!さぁ、入って入って」
「お前、俺にも謝れよ!この暴力女がっ!!」
「龍臣、大きい声出したら怖がられるぞ」
逸弥が指し示した先には、ビクビクと肩を震わせるガリガリの姿。
どうやらコイツは大きな声が苦手らしい。
そんなこと言っても、俺の声はデカい。ババア譲りだからな。
「んなコト言ったって、ボリューム調整できっかよ!!ヲイ!俺の妹になるんなら、この声にお前が慣れろ!!」
わざとらしく大声で話すと、ガリガリが目をパチクリさせながら俺を見上げた。
夜空に星が瞬くようなガリガリの瞳が、仏頂面の俺を鮮やかに映し出す。
他はボロボロなくせに、やけに綺麗な目をしてやがるなと見つめ返していたら、その瞳から大粒の涙が次々にこぼれ落ちた。
「…っ、ヲ、ヲ、ヲ…ヲイ!!!そ、そんな…泣くことねぇだろーが!!」
声を上げるでもなく、ほたほたと涙を流すばかりのガリガリに酷く狼狽してしまう。
美由希は俺を叱責しながらガリガリの顔にハンカチをあて、逸弥はガリガリの頭を撫でていた。
俺は慌てるだけで、何もしてやれない。
「いもうと……、きほも、いもうと…?いもうと、なったら、きほも、だいじに、して…もらえますか?」
ひたすらに無垢な瞳が俺を見上げている。
ほたほたと流れる涙もそのままに、俺だけを見上げている。
その瞳に映された俺の顔は酷く不細工で、今にも泣きそうな顔をしていた。
「ゆかりは、きほの、いもうとだから、きほが、まもるけど……きほは、いもうとじゃないから、たたかれても、いいって…」
誰だよそんなことコイツに言ったのは。
俺の前に連れて来いよ。
いくら弱い俺でも、全身全霊をかけて殴り倒してやるよ。
コイツが何したってんだよ…。
こんなにガリガリで…こんなに震えて…まだガキじゃねぇかよ…。
「おっきなおと、がまんする…します。きほ、いいこにする…。いいこに、します。いいこに、できたら、いもうと……なれますか?きほも、まもって、もらえますか…?」
勘弁してくれよ。俺は弱いんだよ。
いまだにアニメ観て泣くくらい涙腺も弱いんだ。
んな真っ直ぐな目で見つめられて、んな話聞かされたら、年甲斐もなく泣いちまうに決まってんだろーが!
「……っ」
俺は服の袖で堪え切れなかった涙を乱暴に拭き取り、ガリガリの目線に合うように身を屈める。
「アホ。お前はもう俺の妹なんだよ。これからは俺がお前たちを守ってやるよ」
頭を撫でようと手をかかげたら、やっぱりビクリと反応されてしまった。
けれど、おずおずと頭を下げて撫でやすくしてくれて、撫でられた後はふにゃ、と気の抜けたような笑顔を見せてくれる。
「……腹減ったな、飯にするか」
急に気恥ずかしくなって無理矢理に話を変えると、ガリガリの後ろで大号泣をしていた美由希が話を広げてくれた。
「うぅ…希帆ちゃん……いっぱい食べて…いっぱい遊ぼうね……。希帆ちゃんの好きな食べ物は何かな?」
「龍臣お兄ちゃんに何でも作って貰おうな~」
逸弥がガリガリの頭を撫でながら戯けた声を出す。
さっきから逸弥の手は怖がらねぇな…。
何か面白くねぇ。
「お前にお兄ちゃんって言われるのキショいわ!」
苛立ち紛れに逸弥の頭を叩くと、ガリガリの顔が真っ青になる。
「たた……たたいたら…ダメ…いたい……です…」
そう言って逸弥の手をギュッと握るガリガリ。
余計に面白くねぇ気分になるが、逸弥に叩きつけた手を慌てて引っ込める。
「こ…これからは……気を付ける!!………ほら、美味いもん作ってやっから、んな顔すんなって!!な?何が食いてぇんだ?」
まだ納得がいかない顔のガリガリに、逸弥が膝を折って目線を合わせると穏やかな口調で話し掛ける。
「キホちゃんは優しい子だね。そんなに痛くないから泣かないで。守ってくれてありがとう。美人さんになったら、俺と結婚しようね♡」
「けっこん…?」
「うん。結婚したら俺もキホちゃんのこと守ってあげれるよ~。家族になるからね。そのかわり、夜は泣かすけど♡」
「教育的指導!!!!」
鈍い音と共に逸弥の後頭部に美由希のかかと落としが見事に決まった。
大きく目を開いて硬直するガリガリを抱き上げて、美由希がニッコリと微笑みかける。
「希帆ちゃん♡変な男が居たら今みたいにしっかりと指導するんだよ!うちの道場で鍛えてあげるからね!」
「し…どう……?」
「そう。暴力はダメだけど、口で言っても分からない人には必要な時もあるの。自分や自分の大切な人を守るためにね」
「……まもる、ために…」
ガリガリは美由希の言葉を反芻して何かを考えていた。
華奢な美由希が楽々と抱え上げられるほど、ガリガリは軽くて弱い。
俺は逸弥を助け起こしながら、俺の小さな妹が拳を握る必要のない未来だけを祈った。
戸口に立つ俺たちに、彼女である美由希が冷たく言い放つ。
「アホかっ!!俺はお前一筋だって知ってんだろーが!!」
「はいはい。艶子さんから聞いてるよ。希帆ちゃんでしょ」
「っだぁぁぁ!!知ってんなら変なこと言ってんなよ!」
「もっと早く連れて来いっつってんの!こんな時間まで家に帰ってなかったの?信じらんないんだけど、このばかちんが!!」
「いってぇぇぇ!!!」
いつも通り、美由希の鉄拳が俺の頭に落とされる。
ガリガリは目を白黒させて、俺たちの日常風景を眺めていた。
「美由希ちゃん美由希ちゃん、キホちゃんが怖がってる。先に中に入れてやって」
「あぁ!ごめんね、希帆ちゃん!!さぁ、入って入って」
「お前、俺にも謝れよ!この暴力女がっ!!」
「龍臣、大きい声出したら怖がられるぞ」
逸弥が指し示した先には、ビクビクと肩を震わせるガリガリの姿。
どうやらコイツは大きな声が苦手らしい。
そんなこと言っても、俺の声はデカい。ババア譲りだからな。
「んなコト言ったって、ボリューム調整できっかよ!!ヲイ!俺の妹になるんなら、この声にお前が慣れろ!!」
わざとらしく大声で話すと、ガリガリが目をパチクリさせながら俺を見上げた。
夜空に星が瞬くようなガリガリの瞳が、仏頂面の俺を鮮やかに映し出す。
他はボロボロなくせに、やけに綺麗な目をしてやがるなと見つめ返していたら、その瞳から大粒の涙が次々にこぼれ落ちた。
「…っ、ヲ、ヲ、ヲ…ヲイ!!!そ、そんな…泣くことねぇだろーが!!」
声を上げるでもなく、ほたほたと涙を流すばかりのガリガリに酷く狼狽してしまう。
美由希は俺を叱責しながらガリガリの顔にハンカチをあて、逸弥はガリガリの頭を撫でていた。
俺は慌てるだけで、何もしてやれない。
「いもうと……、きほも、いもうと…?いもうと、なったら、きほも、だいじに、して…もらえますか?」
ひたすらに無垢な瞳が俺を見上げている。
ほたほたと流れる涙もそのままに、俺だけを見上げている。
その瞳に映された俺の顔は酷く不細工で、今にも泣きそうな顔をしていた。
「ゆかりは、きほの、いもうとだから、きほが、まもるけど……きほは、いもうとじゃないから、たたかれても、いいって…」
誰だよそんなことコイツに言ったのは。
俺の前に連れて来いよ。
いくら弱い俺でも、全身全霊をかけて殴り倒してやるよ。
コイツが何したってんだよ…。
こんなにガリガリで…こんなに震えて…まだガキじゃねぇかよ…。
「おっきなおと、がまんする…します。きほ、いいこにする…。いいこに、します。いいこに、できたら、いもうと……なれますか?きほも、まもって、もらえますか…?」
勘弁してくれよ。俺は弱いんだよ。
いまだにアニメ観て泣くくらい涙腺も弱いんだ。
んな真っ直ぐな目で見つめられて、んな話聞かされたら、年甲斐もなく泣いちまうに決まってんだろーが!
「……っ」
俺は服の袖で堪え切れなかった涙を乱暴に拭き取り、ガリガリの目線に合うように身を屈める。
「アホ。お前はもう俺の妹なんだよ。これからは俺がお前たちを守ってやるよ」
頭を撫でようと手をかかげたら、やっぱりビクリと反応されてしまった。
けれど、おずおずと頭を下げて撫でやすくしてくれて、撫でられた後はふにゃ、と気の抜けたような笑顔を見せてくれる。
「……腹減ったな、飯にするか」
急に気恥ずかしくなって無理矢理に話を変えると、ガリガリの後ろで大号泣をしていた美由希が話を広げてくれた。
「うぅ…希帆ちゃん……いっぱい食べて…いっぱい遊ぼうね……。希帆ちゃんの好きな食べ物は何かな?」
「龍臣お兄ちゃんに何でも作って貰おうな~」
逸弥がガリガリの頭を撫でながら戯けた声を出す。
さっきから逸弥の手は怖がらねぇな…。
何か面白くねぇ。
「お前にお兄ちゃんって言われるのキショいわ!」
苛立ち紛れに逸弥の頭を叩くと、ガリガリの顔が真っ青になる。
「たた……たたいたら…ダメ…いたい……です…」
そう言って逸弥の手をギュッと握るガリガリ。
余計に面白くねぇ気分になるが、逸弥に叩きつけた手を慌てて引っ込める。
「こ…これからは……気を付ける!!………ほら、美味いもん作ってやっから、んな顔すんなって!!な?何が食いてぇんだ?」
まだ納得がいかない顔のガリガリに、逸弥が膝を折って目線を合わせると穏やかな口調で話し掛ける。
「キホちゃんは優しい子だね。そんなに痛くないから泣かないで。守ってくれてありがとう。美人さんになったら、俺と結婚しようね♡」
「けっこん…?」
「うん。結婚したら俺もキホちゃんのこと守ってあげれるよ~。家族になるからね。そのかわり、夜は泣かすけど♡」
「教育的指導!!!!」
鈍い音と共に逸弥の後頭部に美由希のかかと落としが見事に決まった。
大きく目を開いて硬直するガリガリを抱き上げて、美由希がニッコリと微笑みかける。
「希帆ちゃん♡変な男が居たら今みたいにしっかりと指導するんだよ!うちの道場で鍛えてあげるからね!」
「し…どう……?」
「そう。暴力はダメだけど、口で言っても分からない人には必要な時もあるの。自分や自分の大切な人を守るためにね」
「……まもる、ために…」
ガリガリは美由希の言葉を反芻して何かを考えていた。
華奢な美由希が楽々と抱え上げられるほど、ガリガリは軽くて弱い。
俺は逸弥を助け起こしながら、俺の小さな妹が拳を握る必要のない未来だけを祈った。
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