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ドキドキ同棲編

抱き締めてよハニー

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理保さんにお付き合いスタートを報告したら、Arazonで大量のラブグッズを届けてくれた。
私の女神様は時々驚くほどの瞬発力を見せてくれる。

「わ~♡手錠とかあるよ、希帆さん♡このベビードール着て、両手拘束されて、俺に電マで攻められるとか、どう?」
「ど…どうって……」

清廉潔白みたいな顔面をして何を言うんだこの男はっ!!!
って言うか、このベビードールはなんだっ、理保さんっ!!!!
スケスケのピチピチじゃないか、こんなの!!!!!
一番隠さなきゃいけないところが隠れないじゃないか、このデザイン!!!!!!
まったく、けしからん!!!

「こっちはアイマスクか…。なるほど、理保さんと話が合うかも、俺」
「…バカなこと言ってないでさっさとお風呂に入って来なさい」

理保さんからのプレゼントを爛々らんらんと漁っている大輔くんに、咳ばらいをしながら声を掛ける。
終わりがけだけど、生理中の私は大輔くんの後にお風呂に入るルールなのだ。

「はーい♡このグッズに触発されたからって、また一人エッチしないでね?する時は俺に見せてね♡」
「…バカなの?」
「って言うか、今度ちゃんと俺にオナニー見せてね♡」
「…こ…のっ…ばかちんがっ!!!」

ギッと片手を上げて叩く仕草をすると、その手を絡め取られて、唇を奪われる。
もう片方の手で逃れようとすると、その手も捕らえられてしまって、抵抗できなくなった。
背の高い彼に届くように首を出来るだけ伸ばして、大輔くんの分厚い舌を受け止める。
上顎を舐めすぼめられて、背筋から腰元までゾワゾワとした疼きが走った。

「希帆さんに対しては理性がバカになってるだけだよ♡ごめんね♡」

ごめんね、と微塵も思っていない顔で謝られても、ちっとも慰められない。
ワナワナと口を動かすと、その動きごと再び大輔くんの口内に収められた。


***************


あれから数回キスを楽しんで、大輔くんはお風呂に向かった。
私はキスの余韻とは別に、違うことへ意識を向けてソワソワと動く。
ここ数日、大輔くんがお風呂に入ってる間だけ楽しんでいることがあるのだ。
そう、あの夜、私を一人エッチするに至らしめた恋愛アプリ『天使のため息』略して『天ため』だ!
進行状況によっては、スマフォの画面いっぱいにエッチな顔した登場人物たちが映し出されてしまうため、通勤の電車内ではおちおち進めてられない。
けれど、そのシナリオとフルボイスが私を虜にしてやまないのだ。
後で調べたら、このアプリは全世界の18歳以上の女性がインストールしてるんじゃないか?ってくらい、驚くべきユーザー数らしい。
各地でイベントも行わられているらしく、コスプレ界でもこのアプリは人気だとBoogle先生が教えてくれた。
その時の画面に映し出されたコスプレイヤーの完成度の高さに、思わず身震いをしてしまったくらいだ。

「マディアス様が、呆れるほどに大輔くんボイスなんだよねぇ…」

イヤホンを耳に嵌めながら、しみじみと独りごちた。
マディアス様は主人公の2歳上の超絶紳士で、ファンが一番多いキャラクターでもある。
どこまでも紳士な彼は、年下の主人公に対しても常に敬語を崩さない。
この『敬語攻め』が人気の理由だ。

「浮気では…ない……よね…?ただの、癒し…だよね?」

彼氏にコソコソと隠しながらゲームをしている時点でアウトかもしれないけれど、それとこれとは別腹と言うことでお願いしたい。

『さぁ、僕の愛しいお姫様…。貴女の身体を…全て僕に見せて……』

必要以上に吐息を弾ませて、私のお耳の恋人マディアス様が囁いて来る。

『貴女の反応は…全てが愛しい……。小さく震える、その、唇も…全部、全部……僕のものです。良いですか?他の誰にも……見せないでください』

くぅぅぅぅ!!!
他の誰にも見せないよぉぉぉ!!!
私はマディアス様のものだよぉぉぉぉ!!!

『僕をギュッと抱き締めてください…、僕を…絶対に離さないって…キツく抱き締めて欲しいんです……!そうじゃないと…、君を他の誰かに奪われそうで……気が狂いそうになる!!』

っかーーーー!!!
い や さ れ る ー !
どした、どした~
今日のマディたん、激しいなぁ♡
そんなマディたんは、ギュギュ~っと抱き締めちゃる!!
だからその画面から出ておいで~

『怖がらせて…、しまい、ました…か?……っ申し訳ありません…。僕は…ただ、貴女に愛されたいだけなんです…。お願いです、僕を嫌いにならないでください』

マディアス様が色っぽく啜り泣く声が聞こえる。
シナリオが佳境に入ったところで、大輔くんが脱衣室から出てくる気配がした。
前回の反省点を元に、ノイズキャンセリング機能をオフにしていたのだ!
希帆ちゃん学習能力がたかーい♡

「…ふぅ、やっぱりお風呂上がりは暑いなぁ」

スウェットのボトムだけ着て、上半身は裸のままの大輔くんのご登場に、乙女な私の心臓が興奮のリズムを奏でる。

「か、風邪引くよ!髪の毛も濡れたままだし…」
「あれ~?希帆さん顔赤い?もしかして恥ずかしいの?今まで何度も俺の裸見てるくせに♡」
「温かいお茶飲んでたから身体が熱くなっただけだよ!ほら、乾かしてあげるからこっち座って」

ソファーに投げ出したイヤホンを隠すように座り直して、大輔くんを手招きする。
ニコニコと歩いて来た大輔くんは、私が示した場所に座ってくれた。
またもや家主を地べたに座らせて、居候の私がソファーに座る狼藉者ろうぜきものの所業をしてしまうが、そうじゃないと大輔くんの髪の毛を乾かしてあげられないから仕方ない。
大輔くんが、脱衣室からそのまま持ってきたバスタオルを彼の頭に被せて、ワシャワシャと勢い良く拭いた。
まるで大型犬のお世話をしてるみたいで楽しい。

「希帆さん、俺がお風呂に入ってる間なにしてたのー?」

突然の質問に、心臓がドキーーーンと不整脈を打つ。
いやいや、バレてないはず…、大丈夫、大丈夫…。

「スマフォで音楽聴いてたよ!」
「ふーん、音楽ね…」

何かを含んだような微笑を浮かべた大輔くんがこちらを振り返る。

「さぞや癒されたんだろうね♡」

冷え冷えとした雰囲気に包まれて、私は気の抜けた炭酸みたいに、プシューと胃の中の空気を吐き出した。

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