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ハラハラ同居編

【番外編】定番のバレンタイン④

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息を整えてから、お互いの身体を清め浴室を後にする。
大輔くんは終始満開の笑顔だった。

あー、顔が良い。

脳内偏差値が一気に若返った私は、ポヘポヘと自分の美しい彼氏への称賛を浮かべる。
甘い香りにあてられたのか、頭がボーっとしてしまって仕方ない。
まるでお酒を呑んだ時のようだ。

「あ~ぁ、希帆さん、チョコレートの香りに完全に酔ってるねぇ♡」
「ん~」

いつも通り、ドライヤーで髪を乾かして貰い何となく上機嫌な私は、大輔くんの胸元にウリウリと顔面を埋める。

「わぁ♡希帆さんがデレてるぅ~♡」
「んむぅ」

驚嘆の声を上げる大輔くんが、ギュウギュウと抱きしめて来るものだから苦しくてたまらない。
そのまま、ちゅっちゅっちゅっ、と頭に数回キスを落とされた。
デレのお返しがすごい。
デレにデレをかけたらデレの何乗なんだろうか…。
普通に二乗では済まない気がする。
大輔くんのデレは一京をはるかに凌ぐ尊さだ。

「希帆さ~ん♡好き好き好きっ♡」

ちゅいっ!ちゅいっ!

頬に何度もキスをくれる大輔くんの頭を撫でながら、彼の抱擁を幸せな気持ちで受け止める。
私も彼の頬に口付けをして、出来るだけ柔らかな笑みを浮かべた。

「…私も、好き」

結局、へにゃり、と締まりのない顔になってしまった気がするけど、大輔くんとは顔の造り顔面スコアが違うんだもの、仕方がない!
女は愛嬌!笑って誤魔化せ!!うぇっへっへ~

「……っ♡希帆さん!ベッドに行こう!!今すぐ行こう!!!」
「うぇ…」

発情した駄犬のような大輔くんに、少したじろぐ。
お陰で頭にかかっていたモヤのような濁りが消えた。

「欲を言えば、ローションでヌルヌルになった胸でパイずりして欲しかったんだけど、それはまた今度ね♡」
「……うぇぇ…」

顔面が良いからって何でも許されると思うなよ?
爽やかな顔して、さっき出したばっかりのくせして、何言ってんだ。
…まぁ、その時が来れば素直に従うんだろうけど、私って。
顔が良いってすごい免罪符だなぁ…。

「それにしても、チョコレートにも媚薬効果があるって書いてあったけど、本当なんだねぇ♡」
「…おん?」

後ろから私を抱きすくめたまま、ペンギン歩きで寝室に向かう途中で大輔くんが愉しそうに笑う。

「マヤ・アステカ文明では戦士の精力剤や媚薬として広まったんだって♡」
「…それ何時代?」
「ん~…、日本で言うと縄文時代後期から弥生時代くらいかなぁ」
「めっちゃ昔やん!昔過ぎて信憑性ないやん!」
「でも実際、今日の希帆さんいつも以上にメロメロだったよ?」
「…むぅ」
「珍しくデレてるし♡」
「……別に媚薬効果でデレてるわけじゃないもん」
「…………っ♡」

羽交い絞めにされてしまい、一歩も進めなくなる。

「うぅぅ…重たぁぁい…」
「あぁ、もう、好き好き好き♡大好き♡」
「……私も」
「私も?その後は?」
「………」
「…………」
「…ぬぁ~~~~っ!…っもう!…好き!!!」
「ふふふ♡ありがと♡♡」

優しく唇が重ねられる。
舌先から全身を溶かされるようだった。

「…イギリスの研究者がね、ブラックチョコレートを食べているときの心拍数は、キスをしているときの2倍に増加することを発見したんだ」
「…んっ」
「だからね?チョコレートを食べながら、キスしたらさ、…ここ、どうなっちゃうんだろうね?」
「ふっ…」

つんつん、と大輔くんの人差し指が私の左胸をつつく。
私の心拍数が不整脈を打った。

「チョコレート食べる?」

マカダミアナッツチョコレートを広げたままのローテーブルにチラリと視線を向けて、大輔くんが誘う様な笑みを向けて来る。

「…ん」

既に私の心拍数は限界を超えているが、妖艶な彼の笑みに抗えるはずもない。
小さく頷いた私に、甘やかすようなキスをして、大輔くんはチョコレートを一つ口に含んだ。

今日は2021年2月14日
時刻は23:32
私たちの初めてのバレンタインデーが、もうすぐ終わりを告げる。
来年の私たちは、どんなバレンタインデーを過ごすんだろう。
密かに思考を巡らせ、そっと目を閉じた。

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