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二夜目
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「希帆ちゃん!お疲れ様ぁ~」
昨日ぶりな三富くんのbarで理保さんと落ち合う。
はぁ、今日も可愛らしい声。癒される~。
特に今日は一日、魔王と対峙していたからいつも以上に癒されてしまう。
「理保さぁ~ん!!誘い出してくれてありがとうございます!!!」
「あははは。お安い御用だよ~」
理保さんは私より少し年上のお姉さんで、SNSで知り合ったお友達だ。
SNS上で交流をしていくうちに、お互いの住まいが近いと分かって
LIME交換してやり取りするうちに、今度はお互いの名前が近いと分かって、
何だか私たち似ているね!なんてやり取りして、それから仲良くしてもらっている。
とても上品な理保さんは私が唐突に送るLIMEにも丁寧に相手をしてくれる。
上品だけど、私のちょっと下世話な悩み相談にも乗ってくれるから、どうしても頼ってしまう。
私にとっては女神様だ。
今日も魔王に後ろからがっちりホールドされて、
スマホの画面も監視されて身動きできずにいた私を上手に救い出してくれた。
魔王がトイレに行っている間、理保さんにSOSを送ったのだ。
あの支離滅裂な内容で把握してくれる理保さんは、女神と言うより全知全能の神かもしれない。すごい。
「なんか、大変だったみたいだね~」
ほわほわした空気を纏う理保さんの隣を陣取って、三富くんにミルクティーを頼む。
barのカウンターでミルクティー。毎回申し訳ないね、三富くん。
「いやぁ…。私、男運なさ過ぎやしませんかね…」
「あははは。今、三富くんにちょっと話聞いてたけど、年下くんなんでしょ?」
「ですです。22歳」
「良いじゃん、良いじゃん。希帆ちゃんには年下の方が良いと思うよ」
「前から言ってますよね、それ。でも、年上の包容力に守られたいんですよ、私!」
「希帆ちゃんが選ぶ年上に包容力を感じた事ないな、俺」
「私も~」
「…本人も、そう感じてますから抉らないで!!」
男運が無いんじゃない。きっと。そう信じている。
ただ、男を見る目が限りなく0に近い。
大事にするから付き合って!と告白してきた男性に、嫁と別れるための慰謝料を請求されたり
俺の奥さんになって!と告白してきた男性に、自分の妻子の写真を見せられたり
俺の事好きでしょ?俺もお前が好きだよ、と告白してきた男性に、彼女の愚痴を聞かされたり
とにかく「セカンドの女」扱いされてしまうのだ。
もちろん、そんな男ばかりではなかったけれど
結局私の一途さを嫌って離れて行ってしまう。
三富くんに「一途な女は利用されるよ」と言われるけれど、恋をしたら一途になる。なってしまう。
だから、もう、お終いにした。
付き合うとかどうとか、線引きをしてしまうから面倒くさくなるのだ。
恋人ごっこなら大歓迎。ベッドの上でイチャイチャするのも大好き。
だけど、もう、誰の事も好きになりたくない。
好きになって、嫌われて、離れて行かれるなんて、もう耐えられない。
つまるところ、二度と失恋したくない。
失恋の痛みは歳を重ねるごとに重くなる。
この歳で失恋したら、それこそ心肺停止でご臨終だ。
「その年下くんと付き合っちゃうの、ありだと思うよ~」
優しい声で女神様がおっしゃるけれど、どう考えてもこれを恋にしてしまうと
圧倒的に私に不利な状況になるのは目に見えている。
「いやいや!!10歳以上年下だし、なにより顔が良いんですよ、彼」
「良いじゃん。イケメン」
「それに筋肉質で綺麗な身体してるし…。私以外とシたことないんです」
「希帆ちゃん好きじゃん、筋肉。それに自分好みに育てられるじゃん」
「…おっほ♡」
自分好みに育成した彼を思い浮かべて、ついつい奇声を発してしまう。
三富くんも理保さんも、私の奇声や奇行には慣れたものなので、いちいちツッコミはない。
「そんなイケメンなら私も会ってみたいな」
「イケメンでも魔王みたいな男ですよ」
「魔王?」
「なんか、いきなり怖くなります。今日は一日中監視されてましたし」
「希帆ちゃん、そう言う男の人好きじゃなかったっけ?」
「………っ正直、好きっスね!!!!!」
くぅっ…!束縛してくる男って、なんか、ええやん…?
こう、愛されてるって感じがして、ええやん?
「そんな事言ってるから毎回微妙な男掴むんだよ、希帆ちゃん」
ミルクティーを提供されながら、非常に刺さる言葉を三富くんに頂く。
分かる。分かるよ、三富くん。
そんな愛情の示し方をする男って、最終的に碌なもんじゃない。
知ってる!だって経験したからねっ!!
自分にやましい事があるから束縛するんだよね、男って。
まぁ、女も一緒なんだろうけどね。
「もう付き合っちゃいなよ~」
ふわりと笑う女神様に、そんな簡単な問題じゃないっスと口先を窄めて答えると、後方の扉が開く。
後ろを振り向いて、危うく椅子から転げ落ちるところだった。
「わぁ、イケメンだ~」
私は理保さんの癒しボイスを聞きながら、心臓が早鐘を打つのを止められなかった。
昨日ぶりな三富くんのbarで理保さんと落ち合う。
はぁ、今日も可愛らしい声。癒される~。
特に今日は一日、魔王と対峙していたからいつも以上に癒されてしまう。
「理保さぁ~ん!!誘い出してくれてありがとうございます!!!」
「あははは。お安い御用だよ~」
理保さんは私より少し年上のお姉さんで、SNSで知り合ったお友達だ。
SNS上で交流をしていくうちに、お互いの住まいが近いと分かって
LIME交換してやり取りするうちに、今度はお互いの名前が近いと分かって、
何だか私たち似ているね!なんてやり取りして、それから仲良くしてもらっている。
とても上品な理保さんは私が唐突に送るLIMEにも丁寧に相手をしてくれる。
上品だけど、私のちょっと下世話な悩み相談にも乗ってくれるから、どうしても頼ってしまう。
私にとっては女神様だ。
今日も魔王に後ろからがっちりホールドされて、
スマホの画面も監視されて身動きできずにいた私を上手に救い出してくれた。
魔王がトイレに行っている間、理保さんにSOSを送ったのだ。
あの支離滅裂な内容で把握してくれる理保さんは、女神と言うより全知全能の神かもしれない。すごい。
「なんか、大変だったみたいだね~」
ほわほわした空気を纏う理保さんの隣を陣取って、三富くんにミルクティーを頼む。
barのカウンターでミルクティー。毎回申し訳ないね、三富くん。
「いやぁ…。私、男運なさ過ぎやしませんかね…」
「あははは。今、三富くんにちょっと話聞いてたけど、年下くんなんでしょ?」
「ですです。22歳」
「良いじゃん、良いじゃん。希帆ちゃんには年下の方が良いと思うよ」
「前から言ってますよね、それ。でも、年上の包容力に守られたいんですよ、私!」
「希帆ちゃんが選ぶ年上に包容力を感じた事ないな、俺」
「私も~」
「…本人も、そう感じてますから抉らないで!!」
男運が無いんじゃない。きっと。そう信じている。
ただ、男を見る目が限りなく0に近い。
大事にするから付き合って!と告白してきた男性に、嫁と別れるための慰謝料を請求されたり
俺の奥さんになって!と告白してきた男性に、自分の妻子の写真を見せられたり
俺の事好きでしょ?俺もお前が好きだよ、と告白してきた男性に、彼女の愚痴を聞かされたり
とにかく「セカンドの女」扱いされてしまうのだ。
もちろん、そんな男ばかりではなかったけれど
結局私の一途さを嫌って離れて行ってしまう。
三富くんに「一途な女は利用されるよ」と言われるけれど、恋をしたら一途になる。なってしまう。
だから、もう、お終いにした。
付き合うとかどうとか、線引きをしてしまうから面倒くさくなるのだ。
恋人ごっこなら大歓迎。ベッドの上でイチャイチャするのも大好き。
だけど、もう、誰の事も好きになりたくない。
好きになって、嫌われて、離れて行かれるなんて、もう耐えられない。
つまるところ、二度と失恋したくない。
失恋の痛みは歳を重ねるごとに重くなる。
この歳で失恋したら、それこそ心肺停止でご臨終だ。
「その年下くんと付き合っちゃうの、ありだと思うよ~」
優しい声で女神様がおっしゃるけれど、どう考えてもこれを恋にしてしまうと
圧倒的に私に不利な状況になるのは目に見えている。
「いやいや!!10歳以上年下だし、なにより顔が良いんですよ、彼」
「良いじゃん。イケメン」
「それに筋肉質で綺麗な身体してるし…。私以外とシたことないんです」
「希帆ちゃん好きじゃん、筋肉。それに自分好みに育てられるじゃん」
「…おっほ♡」
自分好みに育成した彼を思い浮かべて、ついつい奇声を発してしまう。
三富くんも理保さんも、私の奇声や奇行には慣れたものなので、いちいちツッコミはない。
「そんなイケメンなら私も会ってみたいな」
「イケメンでも魔王みたいな男ですよ」
「魔王?」
「なんか、いきなり怖くなります。今日は一日中監視されてましたし」
「希帆ちゃん、そう言う男の人好きじゃなかったっけ?」
「………っ正直、好きっスね!!!!!」
くぅっ…!束縛してくる男って、なんか、ええやん…?
こう、愛されてるって感じがして、ええやん?
「そんな事言ってるから毎回微妙な男掴むんだよ、希帆ちゃん」
ミルクティーを提供されながら、非常に刺さる言葉を三富くんに頂く。
分かる。分かるよ、三富くん。
そんな愛情の示し方をする男って、最終的に碌なもんじゃない。
知ってる!だって経験したからねっ!!
自分にやましい事があるから束縛するんだよね、男って。
まぁ、女も一緒なんだろうけどね。
「もう付き合っちゃいなよ~」
ふわりと笑う女神様に、そんな簡単な問題じゃないっスと口先を窄めて答えると、後方の扉が開く。
後ろを振り向いて、危うく椅子から転げ落ちるところだった。
「わぁ、イケメンだ~」
私は理保さんの癒しボイスを聞きながら、心臓が早鐘を打つのを止められなかった。
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