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show me show KNIGHT

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あ…、慶太くんの口の中、ほのかにピーマンの味だ。
あんなに美味しそうに食べてくれるなんて思わなかった。
また作ったら食べてくれるかな…?

「…っ」

そんなことを考えながら彼の唇を受け止めていると、下唇を軽く噛まれてしまう。
急な刺激に思わず吐息が漏れた。

「何考えてんの?こんな時まで妄想してんの?妄想続ける?俺とセックスする?」

私の思考を奪う目付きをしておきながら、甘く溶かすように愛撫を続ける慶太くんが問う。
ささやかな胸の膨らみを、彼の大きな手がやわやわと刺激した。
それだけでも心臓がドクドクと脈打つ。

「…セックス……する…ぅ…っ…♡」

半ば反射的にそう答えると、慶太くんの目が柔らかく細められた。
彼は返事の代わりに私の乳首を口に含むと、ちゅこちゅこと吸い上げる。

「ぁ…っ……んんっ…♡」

甘い声が上がるのを止められない。
それどころか、もっともっとと慶太くんの頭を掴んでしまう。
もう片方の乳首を指先でコロコロと刺激しながら、慶太くんがニヤリと笑った。

「っとに、ド淫乱だな、日和は」
「…ぁんっ…♡…もっと…強いのが…ぃぃ…っ…」

慶太くんは獰猛な目をしているくせに、私を壊れモノみたいに優しく扱う。
もっと酷くしてくれて良いのに。
愛読している小説みたいに凌辱されてみたいのに。
きっと、慶太くんになら何をされても気持ちが良いのに。

「…っ……、アンタ…今の、絶対に余所で言うなよ?俺以外にそんな事言うの禁止だかんな?」
「え…?…慶太くん…以外の人と……こんなこと…しない……もん…」
「それは当たり前!ふざけんなよ、サブいぼ立ったわ!!俺が言いてーのは、そんな可愛い顔して無防備なこと俺が居ねーときに言うなよってこと!アンタ自分の可愛さちゃんと自覚してる?」
「か…わいい…?」

まるで獣が咆哮するように慶太くんが声を荒げる。
ガオォ!と聞こえそうな顔をキョトンと見返した。
私のこと「可愛い」って言った…。

「あ?ガチで自分の可愛さ自覚してないわけ?小っちぇーし、髪もホワホワだし、プルプル震えるし…。どこをとっても可愛いだろ!」
「…可愛い?……私が…?」
「はぁ?ウサギみてーに可愛いだろーが!!」
「…慶太くんにとって……私…可愛い…?」
「…………っ」

慶太くんは、途端に顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
彼の耳まで赤く染まっている。

「嬉しい…可愛い……って…思ってくれてたん…だ…♡」

噛みしめるように反芻すると、喜びが体内でジュワリと溢れ出した。

「…んな喜ぶことでもねーだろ。別に可愛いって言ったの初めてじゃねーし」
「…?初めて…だよ…?」
「………は?ガチで?」

目を見開いて私を見据える慶太くんを不思議に思って見返しながら頷いた。
それまで『好みの女』と言われたことはあっても、可愛いだとか賛辞の言葉は初めてだ。

「好みの…女って…何度か言われた…けど…可愛いは……初めて…」

答えながらポッと頬を染めてしまった。
私のことを憎からず思ってくれているとは感じていたけれど、言葉にされると安心感がまるで違う。
危うく口元が緩みそうで、慌てて両手でそれを隠した。

「マジか……。俺…ちゃんと伝えてるつもりだったのに…。これじゃオーナーの言うまんまじゃん」

慶太くんは落ち込んだ表情で何かをブツブツと呟いている。
私に覆い被さった状態で譫言うわごとを続ける慶太くんを見上げていると、不意に彼の表情が引き締まって凛々しいものになった。
そして私の瞳を見つめながら、ゆっくりと顔を近付けて来る。
一重なのに印象の強い目に捕らえられて、私は瞬きも忘れてしまった。
ゆっくり、ゆっくり近づいて来た慶太くんの整った顔が、鼻先の距離でピタリと止まる。

「……可愛いよ、日和は。すげー可愛い」

そう言うと、唇を重ねるだけのキスをくれた。
これまでにもっと深いキスを何度も繰り返してきたのに、それだけで私の心拍は急上昇してしまって、全身を沸騰した血液が巡っているのかと思う程に身体が熱くなる。
慶太くんはそれからもう一度キスをして、私をギュッと抱き締めた。

「日和の心臓、すげー早い。四六時中エグい妄想してるくせに、可愛いって言葉でこんななんの?可愛いって言われて嬉しい?」
「…嬉しい……すごく…」

私が読む小説は激しいベッドシーンがあったとしても、こんな風に胸が高鳴るシーンなんて登場しないのだ。
それに私の知っている不良ヤンキーは慶太くんみたいに女性を優しく扱わない。
もっと粗野で強欲で、奪うことはあっても与えることなんて決してないキャラクターばかりだった。
慶太くんは私に色んな感情をくれる。
それに色んな表情を見せてくれる。
慶太くんの素直なところも、意外に初心なところも、全部が愛しい。
もっと沢山の慶太くんを見せて欲しい。沢山彼を感じたい。

「初めて会った夜から可愛いって思ってた。ちゃんと伝えてるつもりで言ってなかったんだな…。俺、本当にしょーもねーわ。……愛想尽かした?もう俺のことヤダ?」

少し短い眉を寄せて、しょんぼりとした顔を見せてくれる慶太くんに私の胸はキュンと音を立てる。
急いで首を振って、嫌いになんてならない!と意思表示をしてみせた。
すると慶太くんは安心した様に無邪気な笑顔をこちらに向けて「そっか」と嬉しそうに呟く。
それから彼は、私の額に唇を落とすと、今度は真剣な眼差しで私を捕らえた。

「日和が無理して平気な顔しなくて良いように、俺がちゃんと守ってやっから」

そう言いながら慶太くんは壊れモノを扱うように、私の頬を優しく撫ぜる。
まるで騎士ナイトみたいなその面差しが私の心臓を激しく揺さぶった。
息するのも忘れて慶太くんを見つめ返す。
小学生の頃に読んだ、お姫様に忠誠を誓う騎士みたいな慶太くんは、数秒の間のあと、おずおずと言葉を続けた。

「…だからさ、……俺のこと嫌いになんなよ?」

彼の少し厚みのある唇が所在なさげに窄められる。
私はそんな慶太くんをしっかりと目に焼き付けて、自分一人だけのためのショーナイトに身を委ねた。
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