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大人の恋の始まりは
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それから約1ヶ月。
私たちの境界線は曖昧なまま、身体だけをつなげる日々。
私は所謂『恋人』と言うものを持ったことがない。
木原くんとは始まる前に終わってしまった感があるし、その後に言い寄って来る男性は一刀両断して来た。
だから分からないのだ。金髪くんと私の関係を示す言葉が。
「俺、今日は早番。んで、明日は休みだから」
私からヘルメットを受け取りながら、金髪くんこと慶太くんがそう言った。
彼は私よりも4つ下の22歳。いかにもヤンチャな風貌なのに、きちんと職に就いているらしい。
まぁ、詳しくは知らないんだけど。
「土曜日……がお休みって…珍しい…ね?」
これまで私が記憶している限り、彼は平日休みが常だった。
何でも警備員みたいなことをしている慶太くんの所は、金曜日と土曜日は人手が足りないらしく忙しいらしい。
会社の警備員なら平日が忙しいはずなのに変な話だ。
詳しく聞きたいけれど、聞いて良いのか分からない。
『恋人』ならば踏み込んでも良いのだろうか。
「ん。ウチは土日のどっちかを月1で休めるようにオーナーが調整してる。じゃねぇとデートもままなんねぇからって」
「そっか…」
デート、か。
良いなぁ。私もデートをしてみたい。
アカリや希帆さんと買い物に『お出掛け』は出来ても、『デート』は恋人同士がするものだ。
「そ。今日は迎えに行けねぇけど、寄り道すんなよ?俺ん家何時に来る?迎え何時?」
「え?……ん?…何時…?」
「あ?会社には迎え行けねぇけど、今日、仕事終わったらそのまま日和の家まで迎え行くつもりだったんだけど?」
「……?…そっ…か…?」
あれ?約束してたっけ?
あの夜、私はいつもの様に電車内で痴漢に遭い、いつもの様にその痴漢男をボロクソに口撃して、逆上した痴漢男に追いかけ回されていたのだ。
それをコンビニから帰宅途中だった慶太くんに助けてもらった。
その経緯を聞いた慶太くんは、自分の仕事終わりに私を会社まで送り、自分の仕事前に私を会社まで迎えに来てくれている。
大型バイクを乗りこなす姿も不良って感じで格好良い。
早番の日は慶太くんの出勤時間と私の退勤時間が合わないから、その日ばかりは電車で帰宅する。
慶太くんに「何かされたらこれで刺せ」と虫ピンを渡された。
『痴漢する様なクソ男は、日和みたいな外見の子が正論かましてくると逆上すんだよ。それより痛い目見せてやる方が黙って身ぃ引く。あ、顔は覚えとけよ?探して潰すから』
私みたいな外見ってどう言うことだろう。
胸も尻もツルペタで、どれだけ食べようが縦にも横にも伸びないこの体型を指しているんだろうか。
尻は諦めるから、希帆さんみたいなオッパイが欲しい。
オッパイは偉大だ。
マシュマロみたいにフワフワな希帆さんのオッパイを思い出して、手元をワキワキとさせていると、慶太くんに現実世界に呼び戻された。
「いやらしいこと考えてたろ?また妄想?」
「………あ……えっと…」
朝日に照らされた慶太くんの金髪がキラキラと輝いている。
それ以上にフワリと笑う慶太くんが眩しくて顔が見れない。
「どんな妄想してたか帰ったら聞くわ。そろそろ行かねぇと遅刻じゃね?」
「…………あ゛」
腕時計を確認すると制服に着替える時間を逆算したら、ギリギリの時間になっていた。
駆け出す前に慶太くんを振り返り、ペコリとお辞儀する。
「送ってくれて…ありがとう……。…行って…きます…!」
小さく手を振ってみると、慶太くんも片手をあげて応えてくれた。
じゅわり、と沁み渡るような感情が胸を埋め尽くす。
こう言う日常のことを『幸福』だと、人は呼ぶのだろう。
私たちの境界線は曖昧なまま、身体だけをつなげる日々。
私は所謂『恋人』と言うものを持ったことがない。
木原くんとは始まる前に終わってしまった感があるし、その後に言い寄って来る男性は一刀両断して来た。
だから分からないのだ。金髪くんと私の関係を示す言葉が。
「俺、今日は早番。んで、明日は休みだから」
私からヘルメットを受け取りながら、金髪くんこと慶太くんがそう言った。
彼は私よりも4つ下の22歳。いかにもヤンチャな風貌なのに、きちんと職に就いているらしい。
まぁ、詳しくは知らないんだけど。
「土曜日……がお休みって…珍しい…ね?」
これまで私が記憶している限り、彼は平日休みが常だった。
何でも警備員みたいなことをしている慶太くんの所は、金曜日と土曜日は人手が足りないらしく忙しいらしい。
会社の警備員なら平日が忙しいはずなのに変な話だ。
詳しく聞きたいけれど、聞いて良いのか分からない。
『恋人』ならば踏み込んでも良いのだろうか。
「ん。ウチは土日のどっちかを月1で休めるようにオーナーが調整してる。じゃねぇとデートもままなんねぇからって」
「そっか…」
デート、か。
良いなぁ。私もデートをしてみたい。
アカリや希帆さんと買い物に『お出掛け』は出来ても、『デート』は恋人同士がするものだ。
「そ。今日は迎えに行けねぇけど、寄り道すんなよ?俺ん家何時に来る?迎え何時?」
「え?……ん?…何時…?」
「あ?会社には迎え行けねぇけど、今日、仕事終わったらそのまま日和の家まで迎え行くつもりだったんだけど?」
「……?…そっ…か…?」
あれ?約束してたっけ?
あの夜、私はいつもの様に電車内で痴漢に遭い、いつもの様にその痴漢男をボロクソに口撃して、逆上した痴漢男に追いかけ回されていたのだ。
それをコンビニから帰宅途中だった慶太くんに助けてもらった。
その経緯を聞いた慶太くんは、自分の仕事終わりに私を会社まで送り、自分の仕事前に私を会社まで迎えに来てくれている。
大型バイクを乗りこなす姿も不良って感じで格好良い。
早番の日は慶太くんの出勤時間と私の退勤時間が合わないから、その日ばかりは電車で帰宅する。
慶太くんに「何かされたらこれで刺せ」と虫ピンを渡された。
『痴漢する様なクソ男は、日和みたいな外見の子が正論かましてくると逆上すんだよ。それより痛い目見せてやる方が黙って身ぃ引く。あ、顔は覚えとけよ?探して潰すから』
私みたいな外見ってどう言うことだろう。
胸も尻もツルペタで、どれだけ食べようが縦にも横にも伸びないこの体型を指しているんだろうか。
尻は諦めるから、希帆さんみたいなオッパイが欲しい。
オッパイは偉大だ。
マシュマロみたいにフワフワな希帆さんのオッパイを思い出して、手元をワキワキとさせていると、慶太くんに現実世界に呼び戻された。
「いやらしいこと考えてたろ?また妄想?」
「………あ……えっと…」
朝日に照らされた慶太くんの金髪がキラキラと輝いている。
それ以上にフワリと笑う慶太くんが眩しくて顔が見れない。
「どんな妄想してたか帰ったら聞くわ。そろそろ行かねぇと遅刻じゃね?」
「…………あ゛」
腕時計を確認すると制服に着替える時間を逆算したら、ギリギリの時間になっていた。
駆け出す前に慶太くんを振り返り、ペコリとお辞儀する。
「送ってくれて…ありがとう……。…行って…きます…!」
小さく手を振ってみると、慶太くんも片手をあげて応えてくれた。
じゅわり、と沁み渡るような感情が胸を埋め尽くす。
こう言う日常のことを『幸福』だと、人は呼ぶのだろう。
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