黄昏時奇譚

歌川ピロシキ

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黄金の小鳥

血脈

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「妙な女の子って......転校生のことか?」

「一体どう言うこと......?」

 二人の疑問に答えたのは尾崎だった。

「ああ、あの女は律の又従姉はとこだ。司の母親とあの女の父親が兄妹だな」

「え?? ばあちゃんって天涯孤独てんがいこどくだって……」

 尾崎がなんでもないことかのように軽く言い放った言葉に律は混乱しきりだ。天涯孤独のはずの祖母に甥孫......すなわち兄の孫がいるなんて。

「ああ、人間の係累はいないな。あれは銀杏の精だから」

「「はいぃっ!?」」

 期せずして律と甲斐の変な声が被った。彼の脳天で羽繕いを始めたあずまが楽しげな声を出す。

「おやおや、こんな時でも甲斐殿と律殿は実に仲良しですな」

 能天気に笑っていられるあずまが恨めしい。いや、鳥の表情なんてわからないから本当に笑っているかどうかは定かじゃないけど。

「銀杏の精って......ばあちゃんが?」

 なるほど、人間の親戚はいないのも無理はない。そういう問題ではない気がひしひしとするが、気のせいだろう。

「さっき目が合った時、なんかすごく怖い目で笑われた気がするんだけど......」

 律は先ほどの転校生の嗜虐的な笑顔を思い出し、ぶるりと身震いする。

「大丈夫か、顔色が悪いぞ」

 顔面蒼白な律を見やって甲斐も心配そうだ。

「ああ、律は霊力が高いからな。喰らって己の力を増したいのだろう」

 あっさりと言い放つ尾崎に律は戦慄した。

「喰らうって、食べられちゃうってこと?怖……っ」

 情けない顔で涙目になっている律を、甲斐がかいがいしく背中をさすって介抱している。

「尾崎さん、いい加減なことは言わないでくれよ。律が怖がってるだろ?」

 甲斐が抗議すると、尾崎は飄々と答えた。

「どうせ喰らわれたところで死ぬわけじゃなし。お互い喰らって良い心地になれば良いだろう」

 いやもう何を言われているのか訳が分からない。もういっそ僕と契約して魔法少女になればいいよ。
 そんな謎のフレーズが脳裏をよぎる。

「喰らわれたところで死ぬわけじゃないってどういうこと?」

 恐る恐る訊ねた甲斐にこれまたあっさりと返された尾崎の返事は、二人の脳をフリーズさせるのに十分な威力の爆弾だった。
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