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お花畑転生娘と大監獄
お花畑転生娘と転生死神令嬢
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「マリーローズ……あんたまさか転生者……」
にこにこと微笑むマリーローズにミラは掠れた声で絞り出すように言った。
「はい。かつては貴女と同じ『日本人』でした」
過去形なのは、彼女自身の認識の中で自分はもう日本人ではなくこの世界の人間だからなのだろう。
ミラと同じ転生者のはずなのに、発言も立ち居振る舞いもこの世界の「現地民」と変わらないマリーローズ。
世界に対する自分の立ち位置の認識が、ここまでの差を生むのだろうか。
思ってもみなかった事実にぼう然とするミラ。ついさっきまで身も心もほかほかと温かかったのに、今は凍り付くようなおぞましさを感じる。
「え……まじウケる……あんた日本人なのに平気で八つ裂きとかしてたわけ?あたしよりやばいじゃん。まじ引くわー」
心臓がバクバクと音を立てているのが聞こえるような気がする。なんとかして自分を保とうとつとめて嘲るような調子で言葉を並べるが、動揺が先に立ってどうしても声が震えてしまう。
「平気なわけないでしょう。でも、この世界でエクテレシィ家の人間として生きる上で避けては通れませんでした。貴女が罪を捏造したあげくに法を強引に捻じ曲げて、無理やり刑を確定させたから」
声を荒げるでもなく、静かな瞳で淡々と事実を並べるマリーローズが恐ろしい。
セレスティーヌの裁判の際、必死に弁護をしていた姿を思い出す。
誰も弁護人の引き受け手がいない中、難関である司法試験を一発合格してまで彼女の冤罪を晴らそうと奮闘していた。
敗訴したとはいえ、決して納得などできなかっただろうに……その「正しいと信じられない
判決」による処刑を自らの手で行わねばならなかったのだ。
ミラの悪企みのせいで唯一といっても良い親友を残虐極まりない方法で処刑せざるを得なかった、その恨みと憤りはどれほどのものだろう。
「はっ……我が身かわいさに親友を処刑台に送ったってこと?」
安い挑発で内心の怯えを隠そうとするが、声の震えが止まらない。
「ふふ、怯えなくても大丈夫ですよ。私たち処刑人は法の裁きには必ず従います。たとえ我が身を斬られても、その法がいかなる悪法であっても。だからこそ、合法的な殺人が許される、それが私たち処刑人ですから」
穏やかな笑みとともにごく自然に語られる言葉にこもった強い信念に、底知れぬ恐怖をかきたてられる。
もともとこの世界の処刑人として生まれ育ったのであれば、斬首や火刑も当たり前のものとして違和感なく執行できるだろう。
しかし、現代日本で生まれ育った記憶と価値観を持ったまま、元の世界ではとっくに廃止された残酷な刑に直面して、どれほどの苦悩があっただろうか。
まして、処刑の対象はかけがえのない、誰よりも大切だった友なのだ。
それを、平然と微笑すら浮かべて語れるマリーローズの精神には、いったい何が巣食っているのだろうか。
「……」
衝撃的な事実に愕然とするミラ。自分がまだ全裸でバスタブにおさまったままだという事をすっかり忘れているようだ。
「そんな恰好では風邪をひきますよ。身体を拭いて着替えたらお夕飯にしましょうね」
マリーローズは全く動じる様子もなくミラに清潔なタオルと衣服を渡そうとするが、ミラは震えるだけで動こうとしない。
仕方なくマリーローズはミラをバスタブから抱き上げて小さな椅子に座らせ、身体を丁寧に拭いた。さて下着はどうしよう、と困り顔で思案しているとようやくミラが口を開いた。
にこにこと微笑むマリーローズにミラは掠れた声で絞り出すように言った。
「はい。かつては貴女と同じ『日本人』でした」
過去形なのは、彼女自身の認識の中で自分はもう日本人ではなくこの世界の人間だからなのだろう。
ミラと同じ転生者のはずなのに、発言も立ち居振る舞いもこの世界の「現地民」と変わらないマリーローズ。
世界に対する自分の立ち位置の認識が、ここまでの差を生むのだろうか。
思ってもみなかった事実にぼう然とするミラ。ついさっきまで身も心もほかほかと温かかったのに、今は凍り付くようなおぞましさを感じる。
「え……まじウケる……あんた日本人なのに平気で八つ裂きとかしてたわけ?あたしよりやばいじゃん。まじ引くわー」
心臓がバクバクと音を立てているのが聞こえるような気がする。なんとかして自分を保とうとつとめて嘲るような調子で言葉を並べるが、動揺が先に立ってどうしても声が震えてしまう。
「平気なわけないでしょう。でも、この世界でエクテレシィ家の人間として生きる上で避けては通れませんでした。貴女が罪を捏造したあげくに法を強引に捻じ曲げて、無理やり刑を確定させたから」
声を荒げるでもなく、静かな瞳で淡々と事実を並べるマリーローズが恐ろしい。
セレスティーヌの裁判の際、必死に弁護をしていた姿を思い出す。
誰も弁護人の引き受け手がいない中、難関である司法試験を一発合格してまで彼女の冤罪を晴らそうと奮闘していた。
敗訴したとはいえ、決して納得などできなかっただろうに……その「正しいと信じられない
判決」による処刑を自らの手で行わねばならなかったのだ。
ミラの悪企みのせいで唯一といっても良い親友を残虐極まりない方法で処刑せざるを得なかった、その恨みと憤りはどれほどのものだろう。
「はっ……我が身かわいさに親友を処刑台に送ったってこと?」
安い挑発で内心の怯えを隠そうとするが、声の震えが止まらない。
「ふふ、怯えなくても大丈夫ですよ。私たち処刑人は法の裁きには必ず従います。たとえ我が身を斬られても、その法がいかなる悪法であっても。だからこそ、合法的な殺人が許される、それが私たち処刑人ですから」
穏やかな笑みとともにごく自然に語られる言葉にこもった強い信念に、底知れぬ恐怖をかきたてられる。
もともとこの世界の処刑人として生まれ育ったのであれば、斬首や火刑も当たり前のものとして違和感なく執行できるだろう。
しかし、現代日本で生まれ育った記憶と価値観を持ったまま、元の世界ではとっくに廃止された残酷な刑に直面して、どれほどの苦悩があっただろうか。
まして、処刑の対象はかけがえのない、誰よりも大切だった友なのだ。
それを、平然と微笑すら浮かべて語れるマリーローズの精神には、いったい何が巣食っているのだろうか。
「……」
衝撃的な事実に愕然とするミラ。自分がまだ全裸でバスタブにおさまったままだという事をすっかり忘れているようだ。
「そんな恰好では風邪をひきますよ。身体を拭いて着替えたらお夕飯にしましょうね」
マリーローズは全く動じる様子もなくミラに清潔なタオルと衣服を渡そうとするが、ミラは震えるだけで動こうとしない。
仕方なくマリーローズはミラをバスタブから抱き上げて小さな椅子に座らせ、身体を丁寧に拭いた。さて下着はどうしよう、と困り顔で思案しているとようやくミラが口を開いた。
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