言の葉のかけら

歌川ピロシキ

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「またね」

 いつもそういってイタズラっぽく笑う彼が、その日に限って違っていた。

「じゃあね」

 別れ際の言葉を思い出したのは、翌日彼の遺体が見つかってから。
 私に下されるはずだった困難な任務を達成したは良いが、生還はかなわなかったのだと知らされたのは葬儀がおわってから。

 その日、泣くこともすがることもできなかった私の辞書に、新しい単語が登録された。

 何もかも手遅れで、今さら誰もどうしようもないというのに……

 それでも、何をどうすればこんなことにならずに済んだのかと事あるごとに考えずにはいられない。
 もしも時間を戻せるなら、どんなことでもしてみせるのに、と暇さえあれば思わずにいられない。

 そんな苦い想いを「後悔」と呼ぶ。

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