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115話
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「シルフェ様、どちらへ?」
回廊を慣れた足取りで進んで行くシルフェ様。
王子妃教育で訪れた事もあるその場所。
「このまま、付いてきてくれればわかる……大丈夫だ」
「わかりました」
シルフェ様の腕に手を添えて歩くその先に見えてくるのは大広間。
此処は、王に呼ばれた者しか入れない。
俺も、数度しか足を踏み入れた事がない場所だった。
「騎士団長様、騎士団長妃様、お越しです」
声が掛かり、扉が開く。
中に入るとかなりの人数がこちらを向いた。
「ゆっくり、大丈夫だから」
シルフェ様に促され俺は静かに深呼吸をしてからシルフェ様を見上げてシルフェ様の歩調に合わせて歩いていく。
「団長!」
声が掛かり、シルフェ様が足を止めると、数人の騎士が近付いてくる。
「ルーカス、副団長達だ」
シルフェ様が紹介をしてくれ、俺は頭を下げる。
すると、握手の手を差し出してくれ、俺は順に握手をした。
シルフェ様も大柄ではあるが、そのシルフェ様よりも大きな騎士様達。
爽やかな笑顔が優しそうだった。
「ルーカス様、ありがとうございました」
三人目の騎士様がそう頭を下げた。
「え、あの……」
「ルーカス様の兵法で今回は勝てたのだと団長に聞いています」
「あ、いえ……お役に立てたようで良かったです。ですが、俺のではなくシルフェ様の采配と、それを受けて動く騎士様達が素晴らしかったのだと」
そう言っていると、ぐいっとシルフェ様に腰を抱かれた。
「ルーカス、あまり近付くな。もうすぐに陛下が来る」
「あ、はい」
抱き寄せられたことで会話が途切れてしまい、俺はぺこりと騎士様に頭を下げると、騎士様は俺に向かって騎士の礼をしてくれた。
「ルーカス、少し壁際に寄ろうか……これから、式典が始まる。何があっても私に任せて欲しい」
シルフェ様の手に導かれ、少し壁際の上座に近い方に立つ。
チラチラとこちらを見る視線は気持ちのいいものではなかった。
俺を品定めする視線だ。
王子妃になる予定だったΩが不況を蒙り左遷されたという噂が流れ、次に王都に現れた時には王族であり騎士の最高位である騎士団長の伴侶となっているのだ。
気にならない者はいないだろう。流石にシルフェ様がいるため不躾な質問をしてくるものは居ないだろうが。
「では、褒賞を与えよう」
考え事をしていた先にそう声がかかり、俺ははっと顔を上げた。
いつの間にか陛下が上階に現れ、椅子に座っている。
呼ばれたのは、シルフェ様だった。
「そちの采配にて敵国を退けた。ついては……」
つかつかと、王座の前まで歩き礼を取ったシルフェ様は右手を小さく上げると陛下の言葉を遮った。
「陛下、お言葉を遮る事をお許しください。私は褒賞は辞退をしたく。合わせて二つお願いがありまして」
その言葉に俺は驚いた。
どうして?あれだけシルフェ様は頑張ったのに……?
「ん?言ってみよ」
陛下はどうしたとばかりに肩を竦めて手元にあった品書きだろうか、ぱたりと閉じた。
「恐れ入ります。ひとつは領内にいる敵国兵士の討伐権限及び処罰方法の権利をいただければ」
シルフェ様の言葉を聞いてその意味が分からずに首を傾げた。
回廊を慣れた足取りで進んで行くシルフェ様。
王子妃教育で訪れた事もあるその場所。
「このまま、付いてきてくれればわかる……大丈夫だ」
「わかりました」
シルフェ様の腕に手を添えて歩くその先に見えてくるのは大広間。
此処は、王に呼ばれた者しか入れない。
俺も、数度しか足を踏み入れた事がない場所だった。
「騎士団長様、騎士団長妃様、お越しです」
声が掛かり、扉が開く。
中に入るとかなりの人数がこちらを向いた。
「ゆっくり、大丈夫だから」
シルフェ様に促され俺は静かに深呼吸をしてからシルフェ様を見上げてシルフェ様の歩調に合わせて歩いていく。
「団長!」
声が掛かり、シルフェ様が足を止めると、数人の騎士が近付いてくる。
「ルーカス、副団長達だ」
シルフェ様が紹介をしてくれ、俺は頭を下げる。
すると、握手の手を差し出してくれ、俺は順に握手をした。
シルフェ様も大柄ではあるが、そのシルフェ様よりも大きな騎士様達。
爽やかな笑顔が優しそうだった。
「ルーカス様、ありがとうございました」
三人目の騎士様がそう頭を下げた。
「え、あの……」
「ルーカス様の兵法で今回は勝てたのだと団長に聞いています」
「あ、いえ……お役に立てたようで良かったです。ですが、俺のではなくシルフェ様の采配と、それを受けて動く騎士様達が素晴らしかったのだと」
そう言っていると、ぐいっとシルフェ様に腰を抱かれた。
「ルーカス、あまり近付くな。もうすぐに陛下が来る」
「あ、はい」
抱き寄せられたことで会話が途切れてしまい、俺はぺこりと騎士様に頭を下げると、騎士様は俺に向かって騎士の礼をしてくれた。
「ルーカス、少し壁際に寄ろうか……これから、式典が始まる。何があっても私に任せて欲しい」
シルフェ様の手に導かれ、少し壁際の上座に近い方に立つ。
チラチラとこちらを見る視線は気持ちのいいものではなかった。
俺を品定めする視線だ。
王子妃になる予定だったΩが不況を蒙り左遷されたという噂が流れ、次に王都に現れた時には王族であり騎士の最高位である騎士団長の伴侶となっているのだ。
気にならない者はいないだろう。流石にシルフェ様がいるため不躾な質問をしてくるものは居ないだろうが。
「では、褒賞を与えよう」
考え事をしていた先にそう声がかかり、俺ははっと顔を上げた。
いつの間にか陛下が上階に現れ、椅子に座っている。
呼ばれたのは、シルフェ様だった。
「そちの采配にて敵国を退けた。ついては……」
つかつかと、王座の前まで歩き礼を取ったシルフェ様は右手を小さく上げると陛下の言葉を遮った。
「陛下、お言葉を遮る事をお許しください。私は褒賞は辞退をしたく。合わせて二つお願いがありまして」
その言葉に俺は驚いた。
どうして?あれだけシルフェ様は頑張ったのに……?
「ん?言ってみよ」
陛下はどうしたとばかりに肩を竦めて手元にあった品書きだろうか、ぱたりと閉じた。
「恐れ入ります。ひとつは領内にいる敵国兵士の討伐権限及び処罰方法の権利をいただければ」
シルフェ様の言葉を聞いてその意味が分からずに首を傾げた。
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