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111話

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「お父様」
「ルーカス、久し振りだな」
俺はソファーから立ち上がると、父を迎え入れた。
開戦前に会ったのが最後だったから父とも随分と会っていなかった。
「はい、いらしていただきありがとうございます」
俺は父に優しく抱きしめられ、父は俺のチョーカーを見ると眉間に皺を寄せた。
それから、シルフェ様とお父様が挨拶をするとダーウェルがお茶を入れ直してくれ、三人でテーブルにつく。
そして、俺は紅茶に口をつけてから息を吸いシルフェ様を見て言葉を紡いだ。
「シルフェ様、お話をさせていただいても構いませんか?」
「えぇ」
「シルフェ様、どうか俺と離婚をしてください」
言ってしまったと、俺は俯いた。
「ルーカス……理由を聞いても?」
シルフェ様は、静かに言葉を紡いだ。
問われても、俺は上手く言葉が出て来ない。
「私から、説明しても良いだろうか?ルーカスから聞いたことしかわからないが」
助け舟を出してくれたのは父だった。
父が説明をしてくれたのは、俺の身にあったことほぼほぼ全てだった。
恐らくフェイからも聞いたりしたのだろう。
父様の言葉はチクリチクリと俺の心臓に刺さるようで、ポロリと涙が一粒落ちた。
「それが、どうかしましたか?」
シルフェ様の口から驚く言葉が出てきた。
それがどうしたのかと……シルフェ様は何があったのか理解しているのだろうか。
俯いていた俺は顔を上げた。
「ルーカスはもう私を愛してはいませんか?」
シルフェ様の問いかけに俺は頭を横に振る。俺が好きなのはシルフェ様だけだ。
「いえ」
「なら、問題は無いと思いますが……?」
小首を傾げるシルフェ様、でも問題だらけな気がするのだけれど。
「でも、俺は……もうシルフェ様と番になる事は出来ないのです……シルフェ様の子を成す事も……それに、シルフェ様の夜のお相手すら……いえ、俺がどんなに泣き叫んでも構わなければ……シルフェ様に何をして頂いても構わないのですが」
性行為の拒否反応を我慢してもらえれば、シルフェ様に身体を差し出すことは出来るだろう。
ただ、俺の見苦しい姿を見せなければならないし、シルフェ様がそこまでして俺を抱くメリットは無い。
「それに、周囲に知られればシルフェ様の評判が落ちるでしょう……」
「ルーカスを守る事が出来なかった事か……それは甘んじて受けなければならないな。だか、それだけだ」
「違います、貶められたΩをそのまま伴侶にしておくなど!」
「ルーカス、落ち着きなさい」
立ち上がりかけた俺を制したのはお父様だった。
「シルフェ様、いくつか聞かせていただいても構わないでしょうか」
お父様は、紅茶を一口飲んでから口を開く。
「他に妻を持つつもりは?それがなければ血族が絶える事になりますが?」
「それは気にはなりません。ルーカスとの子は欲しいですが出来なくてもルーカスが傍に居てくれさえすれば、子は居なくてもそれだけルーカスとの時間がとれますから」
「では、騎士団を辞する気は?」
「構いません、今回の後始末を半月の間に終わらせ引き継ぎをする時間はいただきたいと思いますが、夜は必ず帰宅するように致します」
待って、どうしてそこでシルフェ様が騎士団を辞める事になるの。
俺は父様を見た。
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