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107話

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あれから更に三日。
食事が取れるようになり、漸く花街から経つ事が出来そうだった。
フェイが介助以外の人間を部屋には入れないため、会話をするのはほぼフェイだけだった。
「ルーカス様、出立致しましょうか」
フェイに抱き上げられ、来た時とは違う大きめの馬車に乗る。
馬車の中は寝台のように作られていた。
「ルーカス、二人は?」
「先に戻らせました」
「そう……チェリは俺の顔を見るのは嫌かもしれないし、ルーカスは俺の話し相手になってくれるの?」
王都まで数日。
一人で寝ているのは流石に辛い。
「馬車と御者は借りましたので、ルーカス様が望むならそれもできますが」
「そうして」
「かしこまりました」
そのやり取りから直ぐ、馬車は出発する。
最後に少しだけ楼主様と挨拶をして、迷惑を掛けたことを謝った。
楼主様は、シルフェ様に合わせる顔が無いと頭を下げたが、それは俺の判断だったからと頭を振った。
「シルフェが、勝利を収めたと早馬が行ったぞ?」
「良かった……騎士団の方達が泊まると思いますからよろしくお願いします」
恐くはこの街道を通り王都へ凱旋する事だろう。
騎士達を労う為に宿として使う事は考えられる。
「あぁ」
すまなかったなともう一度楼主は謝ると馬車から離れ、俺はそっと扉を閉めてもらった。
休憩を挟みながらも馬車は宿には泊まることがなく走り続ける。
俺は眠っていることも多かったからか、宿には泊まったかもしれないが、記憶に無かったのだ。
王都の門を潜り、シルフェ様の屋敷に到着するとダーウェル達が出迎えてくれたのだが、俺は情けなくも自力で馬車から降りることができず、フェイに抱いて降ろしてもらう。
ダーウェル達もあったことを知っているのだろうか、何も言わなかった。
「お帰りなさいませ、こちらは何事も無く」
「そっか、良かった……シルフェ様達も間もなく帰って来ると……」
「はい、手紙が届いておりましたので。ルーカス様は湯浴みでもされますか?」
「うん……ありがとう」
「では、ご用意をしておきます」
ダーウェルと会話をしながらも、フェイは俺を抱きながら部屋へと向かう。
湯殿の支度をしに離れていったダーウェルを見送りながら俺はフェイを見上げた。
「フェイ、必要なものを纏めておいて……シルフェ様が戻ってきたら……」
「ルーカス様」
「フェイは、この御屋敷の従者だからそれ以上は大丈夫だからね?」
アーデルハイド家からずっと一緒にきてくれていたフェイ。だけど、この後にある悪役令息のバッドエンドに付き合わせてはいけない。
だけど、支度は俺一人ではできないから、助けてもらうしかないのだ。
「それと、シルフェ様がお戻りになったら教えて……お願いをしなければ」
離婚。
俺にはそれ以外が考えられなかった。
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