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100話

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「申し訳、ありません」
大きく息を吸い込んでから楼主様に話始める。
「あぁ、その話始は聞いた。一人のために花達を集めろと。そんな事をしたら、他の客に迷惑がかかると言ったが、やらなければ後悔するのだと言ったが聞き入れられなくてな……」
大きな溜息を吐いた楼主様は、俺を見る。
「お前は花じゃないから来るなよ?」
「でも……」
「でもじゃない、何かあったらシルフェに顔向けできなくなる」
あいつが怒るとかなり怖いんだ……と、楼主様は苦笑する。
確かに淡々と怒るシルフェ様は怖いけれど。
「ですが、先程俺にぶつかった男が」
「何かあれば責任をとるから、静かに部屋で待機してくれ……場合によっては皆が集まっている時に四人で楼閣を出て王都に帰るかシルフェの所に行け。だが、敵兵がこんな所で花を買うのなら戦地の勝敗は決したのか?」
後半は囁くように聞こえた。
「そんな。でもそれなら尚更話が聞けるかもしれません……お酒の席だけでも参加をさせてください」
俺はそう食い下がる。
それに、シルフェ様なら大丈夫。俺の渡した手紙がそれ通りにならないかもしれないけれど、情報が無いよりは良いと思いたい。
少しでもシルフェ様に有利な情報をもたらすことができるのだろう。
「仕方ないな、リュカ傍に付けるようにするか……あいつなら上手くあしらうだろ。お前は目立たない格好をして控えていろよ?」
「わかりました、ありがとうございます」
俺は頭を下げてから、先程の男に見つからないように静かに廊下の隅を歩く。
すれ違う姉様達には通達が行っているのだろう、表立って声を掛けてくる者は居なかったが目が合うと笑みを返してくれ、そっと触れたり飴など小さな物をくれたりもした。頭を下げながらそれを受け取り俺は部屋に戻る。
背後を確認してノックをするとそっと扉を開けたのだった。
「フェイ、ただいま。このあと宴があるみたいで俺は情報収集に行ってくるから後は頼む。大丈夫静かに端でそっとしておくから」
「いけません!情報収集なら私が行きます、ルーカス様は絶対にこの部屋から出ないでください」
「そんな訳にはいかないだろう?何だか敵国の地位のある人が来るようだからさ……宴だから確実に姉様たちたおやかな人達が……まぁ、性癖があるだろうから何とも言えないかもしれないけど」
βであるフェイのような容姿を好むαもいるかもしれない。
「なので、私が行きます。二人は残ってルーカス様の護衛をしなさい」
「はい」
フェイの言葉に二人は頷く。
「ルーカス様、これはルーカス様の命令であっても私は背きます。この後にクビになってもこれは譲れません」
先にフェイに言われてしまった。
フェイな言葉を撤回する気は無いだろう。
困った……。
俺はフェイを見上げてから小さく溜息を吐いた。
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